【ファミチキ!】ファミレスでWeb小説を執筆していたら女子大生に声をかけられたが、俺はチキンなのでスルーした。

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第一章 ファミレスでWeb小説を執筆していたら女子大生に声をかけられたが、俺はチキンなのでスルーした。

第1話 ファミレスでWeb小説を執筆していたら、清楚系ギャルに声をかけられた。

 俺の名前は名城彼方(なしろ・かなた)。


 30代の小説家志望、いわゆるワナビだ。

 年齢からお察しの通り、学生時代から書き始めていつの間にやら勤続10年――どころか20年近くになってしまったガチ系のワナビだった。


 1月15日金曜日。

 この日も俺は時給1150円(基本給980円+資格給100円+評価給70円)のスーパーのフルタイムバイトを終えて、近所のファミレスで執筆活動に勤しんでいた。


 「カクヨム」という天下のKADOKAWAが運営しているWeb投稿小説サイトが俺の主戦場だ。


 しかし家の中にこもってずっと執筆をしていると、どうにも気分転換したくなる時がある。

 そういった時、俺はノートパソコンを持ってよくこの家近のファミレスに来店していた。


「このシーンは悩ましいな……合理的な判断で話を展開するよりも、主人公の若さと情熱で少々強引に押し切ったほうが見栄えしそうだよな。その方が盛り上がるし……」


 俺の小さなつぶやきはしかし、すぐにファミレスの喧騒にかき消されていく。


「あーでもなぁ。最近の読者って合理性がないと納得いかなくて、結構あれこれ感想で指摘してくるんだよな。今回のは今までで一番ヒットしてるし、せっかく読んでくれてる読者を逃がしたくないよなぁ……よし、無難にいこう」


 俺は安全運転することに決めると、すぐに外付けキーボードを叩き始めた。

 ほとんど音がしない静電容量無接点式キーボードなので、周囲への騒音はほぼゼロだ。


 しばらく黙々と執筆活動を行っていると、突然ノートパソコンのモニターに影が差した。

 遅れてさらりと降ってきた髪の毛が俺の視界を遮ってくる。


「ねぇねぇそれって小説だよね? お兄さんって小説家なの?」


 状況から察するに、どうやら俺は声をかけられているらしかった。

 パソコンの画面から顔を上げた先にいたのは、見ず知らずの若い女の子。

 10代の――高校3年生くらいかな?


 つややかなストレートの長い黒髪が、女の子の動きに合わせてふわりと舞うように動いた。


「……いや違う、ただの趣味」


 俺は突然話しかけてきた女の子の顔から視線を逸らすと、小さな声でボソッと呟いた。

 バイトの接客以外で若い女の子と話すのはあまり得意じゃないので、正直かなり緊張している。


 な、なんだよこいつ。

 知らない相手にいきなり馴れ馴れしく話しかけられたら、ビックリするだろ。


 あれか、美人局とか最近流行りのパパ活JKってやつか?


 俺は陰キャ――とまではいかないものの、女の子と話す経験が極端に少ない系の人生を歩んできたから、知らない女の子と話すだけでちょっとだけ気後れしてしまうんだ。

 だからそういうのは別の陽キャでパリピな男に向かってやってくれ。


 女の子の服はオシャレ(ファッションに疎いのでうまく説明できない)でかなり可愛いく、さらさらの髪にとても似合っていた。

 つまりどう見ても俺には縁のないおしゃれ可愛い女の子だった。


 こういう手合いは相手にしないのが一番だ。

 君子危うきに近寄らず、俺はそう結論付けた。


 折りしも今は、カクヨム作家にとって年に一度のビッグイベント「カクヨムWeb小説コンテスト」、通称カクヨムコンの真っ最中であり。

 締切は今月末であと半月を切っている。


 それまでに既定の10万字クリアしないといけないし、余力があれば冒頭から読み直してできる限りの手直しもしたかった。


 そもそも今日の更新分がまだできてないんだよ。


 膨大なファン数を抱える一部の有名上級トップランカーは別として。

 それ以下の無名一般Web小説家にとって毎日更新は必須義務だ。


 毎日更新することでギリギリどうにか読み続けてもらえる俺たちにとって、「更新が滞る」と「読まれなくなる」は限りなく同義なのだった。


 現在21時過ぎ。

 今日という日が終わるまで既にあと3時間を切っている。

 それまでに俺は今日の更新分を書きあげなければならなかった。


 つまり今の俺に、女の子とお話している暇なんてものはありはしない。


 俺はノートパソコンに視線を戻すと執筆を再開した。

 話しかけんなオーラを全開にしてキーボードを叩いていく。


 しかし。


「ふーん、でもお兄さんは小説家志望なんだよね?」


 えっ、まだ俺に用なの?

 話しかけんなオーラを見せてるのが分からないのかな?


「なんで見ず知らずの相手にそんなこと答えないといけないんだよ。今すごく忙しいからパパ活ならよそを当ってくれ」


「ちょ、失礼ね! わたしパパ活なんてしないし! ねぇねぇ相席してもいい?」


「よくない。他の席がいくらでも空いてるだろ、よそ行ってくれ。さっきも言ったけど俺今忙しいんだよ」


「小説の執筆で?」


「……」


 下手に話に付き合ってると終わらない気がプンプンしたので、俺は女の子をサクッとスルーすることにした。



――――――――


【作者からのお願い】


お読みいただきありがとうございます(*'ω'*)b


スタートダッシュがとても肝心です!

書き溜めがあるのでしばらくは毎日複数更新します!


気に入ってもらえたら、

ぜひフォロー&☆☆☆をお願いいたします(ぺこり


本日は4話まで更新する予定です。


執筆の励みになりますので、何卒~!(>_<)

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