洞穴から聞こえる歌は、ヘタクソ。
@koukinsoap
第1話 気付く
誰かと自分を初めて比べたのは、一体いつなんだろう。
そんな事を考えていた。
今は毎日同じ事の繰り返しの日々に追われていて、人と自分を昔のように頻繁に比べたりはしない。
いや、そもそも比べるのがこわい。
だから同窓会なんてものにはもう行かないと決めているのだ。どうせ、誰も私なんかには興味もないだろう。
それに、学生時代に嫌というほど味わった劣等感を今更掘り返しに行く会なんて、悲しくなるだけだ。
初めて自分が他の友達と違うと感じたのは小学校の低学年の頃。
頭の中で決まっている『言いたい言葉』が口から出てこない事があった。何回も。
いくら頑張っても出てこない。頑張れば頑張るほど出てこなかった。
授業中、休み時間、発表会。どれもこれも私にとっては地獄でしかなかった。
周りの友達はクスクス笑い、大事な役回りは私には先生も回してくることはなかった。
これが『吃り』だということを知ったのはもう少し後のことだったと思う。
そういえば、父もそうだったっけ。
口下手だと思っていたけど、私と同じ、口下手になるしかなかったんだ。
吃りというものは不思議なもので、私の場合は歌を歌うときは全く吃らなかった。
だけど、『言わなければいけないこと』は口から空気だけが漏れていくように、言葉にはならないのである。なんとも悲しい。
私の悲しい事はこれだけではない。
私は致命的に勉強が出来なかったのだ。
特に算数が本当に無理だった。恥ずかしながら、いまだに二桁の暗算は解くのに5分はかかるであろう。
まだまだある、私のコンプレックス。コンプリートしてるのではないか…と思うほどの量。
私の容姿もまたお世辞にも、頑張っても、可愛いとはいえないお顔。
女の子と認識してもらえないこともよくある事で、全く知らない同年代の男の子に
『ブスっ』
と、言われたことも多数。
こんな私にもお友達はいたので、感謝しかないのである。
そして、私には姉も1人いる。
名前は佳代。
きっと、親の良い所は全部佳代が吸収してしまったのだろう。
佳代は小さい頃から頭も良く、運動も出来た。もちろん、吃ってもいない。
小学生の頃は私もそんなに感じてはいなかったが、周りはもう気が付いていた。
佳代は出来が良い。
綾は出来が悪い。
私がそれに気が付いたのは中学生になってからだと思う。
気が付くのが遅いのも、きっと出来が悪かったからかもしれない。
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