第53話 第5部 エピローグ

 澤木ひかるが男だとわかり、かおりはようやく復活してきた。


 道場で、英一と組み練習を再開する。


「それじゃあ、ひかるさんって・・・学校で教わったけど”LGBT”ってことなの?」

「いや・・・そういうわけじゃないんだ」

「?」


 英一は、微妙な表情である。


「ひかるは、あんな格好をしているが中身は完全に男なんだ」

「え?じゃあ、あの姿って?」

「ただの趣味らしい」

「え・・・じゃあ、男の人が好きってわけじゃないの?」

「そうなんだ。あいつが今まで交際してきたのは女性ばかりなんだ・・・というか・・」


「というか?」


「いや・・・なんでもない」


 英一は、歯切れの悪い返事をした。


”まぁ、今回はかなり釘を刺しておいたから大丈夫と思うが・・・”









 安藤先輩は、残業を終えて家路についていた。

 もう深夜に近い時間である。


”夜ご飯どうしよう・・・”


 ため息をついてコンビニの灯りをみる。

 今日もコンビニご飯・・・・・

 いい加減飽きている。


 わびしい。


 そんな安藤の背後から鈴やかな声が呼び止めた。 


「こんばんわ!」


 振り向くと、そこにいたのは・・・


 澤木ひかるであった。


「確か、安藤先輩でしたよね?今お仕事終わったんですか?」

「そうよ・・・あなたはひかるさんでしたわね。何してるのかしら?」


 すると、ひかるは微笑みながら安藤の前に近づきながらにっこりと笑顔をみせる。


「映画に行ってきた帰りですわ。もしかして夜ご飯まだだったりします?」

「そうよ・・・だから何?」


 すると、胸の前で手を合わせて笑いながら・・・


「私もなんです。よかったら一緒に食べませんか?」

「え?」


 しかし・・・女性一人で外食は勇気がいるが同行する相手がいれば入りやすい。

 コンビニ弁当に飽き飽きしていたところだ。

 それに、英一の話も聞くことができるかもしれない。


「そうね・・・それもいいかもね」

「よかった~。近くにいいお店知っているんですよ。行きましょ」


 ひかるは安藤の腕に手を絡めて横に並んで歩きだした。

 

 そうして、繁華街の方へ二人で歩いていくのであった。



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