第40話 青緑の光



「ねぇ、アビー?なんだか青緑色の光がなってきたんだけど?」


「ん?そうか。ソレはなんだろうな?少し急いでみるか」


 僕のスキル【月の瞳】を使ってたまたま見つけた光なんだけど、なんだか消えてしまいそう。

 なんなんだろうあの光?


(もう少しで見えてきそうだけど。

 あそこかな...?)


「ユウ!急ぐぞ!女の子が倒れているッ!」


「えぇッ!?分かりましたッ‼」


 青緑色の光の近くで女の子?が倒れているみたい。

(ケガしてたら大変だ。急がないと!)



 駆け寄って周辺を警戒したけど魔物はいないみたい。

 周りの安全を確認した僕は急いで女の子の状態を確認した。

 どうやら鳥?の獣人みたいで、鳥足の緑髪の女の子が意識なく倒れていた。

 それより胸の中心、体内にあるモノを見た。


「ア、アビー!この女の子のッ‼」


  僕はこの女の子の中に青緑の光を見つけた。


「なっ!?と言う事はユウの見える光はもしや命の光なのか!?もう消えそうなのかッ!?」


 たしかにこの女の子は結構ケガをしてる。全身アザだらけ。

 アレ?でもアザ以外のケガはないみたい?

 ケガの原因は魔物じゃないのかな?なら何でこんな森に1人で?

 いや、それより早く魔法で治さなきゃ!

 今にも光が弱くなってきてる。

 えーと、この傷だったらたしか、『中くらい』?かな



 ウゥゥゥゥゥゥ...



「えっ?魔物ッ!?」


(魔法を使う時に目を閉じないといけないから今襲われたら...)


「どうしようッ!?この女の子の光がどんどん消えてくッ‼」

 

「ユウ!私に全てを任せてその子に魔法をッ‼必ず守ってやるから私を信じてくれッ‼」


 アビゲイルさんは剣を片手に僕の背後に立ってそう言ってくれた。


 でも、そう言われても怖いものは怖いんだよ?

 いつどこから魔物が襲ってくるかも分からないのに目なんか閉じれないよ


 ...でも今この女の子を助けれるのは僕しかいないんだよね。

 助けれる命を見捨てるなんておかしいよね。

 出来るのにしないのはいけないよね。


 アビゲイルさんを信じればいいだけなんだ。

 アビゲイルさんならきっと大丈夫なんだから。

 強いんだから。僕のお姉ちゃんなんだから。


「アビー頑張って!僕も頑張るッ‼」


 僕は震える両手を女の子へと向けて目を閉じた。


「ユウ、ありがとう。私は絶対に裏切らない!守ってやるからなッ‼」


 アビゲイルさんの言葉がとても心強く感じた。

 アビゲイルさんなら大丈夫って安心感を感じたんだ。

 だから僕は集中する事にした。



 『治れッ』



 目を閉じていたけど青緑の光はハッキリと見えた。

 魔法のおかげなのか、弱い光はどんどんと強くなっていく。

 途中で生暖かいモノが掛かった感じがしたけど、アビゲイルさんを信じて僕は魔法に集中した。

 

 青緑の光は一定の強い光を維持したまま消えて行った。

 多分、終わったんだと思う。

 ゆっくりと目を開けたら女の子は幸せそうに寝息をたてていた。


(はぁ、よかったぁ~)


 「ギャウッ!」


 振り返ったらちょうどアビゲイルさんが最後の魔物を倒したところみたいだった。

 もう周りで魔物の声は聞こえないみたいだし。


「アビーのおかげで助けれたみたい。ありがとうアビー」


「ユウッ‼」


 アビゲイルさんが泣きそうな顔をして僕に抱き着いてきた。

(え?どうしたの?)


「あ、アビー?」


「私を信じてくれてありがとう!ユウに怖い思いをさせたのに信じてくれてありがとうッ‼」


「大げさだよっ、僕とアビーは義姉弟でしょ?信じてるって」


「うぅ~。そうだが、そうなんだが、私を信じてくれて嬉しかったんだ」


「あはは、大丈夫だって。ヨシヨシ」


 なんかお姉ちゃんなんだけど、希みたい。

 いつもツンツンなのに僕の前では本音で話してくれるトコが。


 それにしても...

 身体が赤い。

 多分魔物の血、だよね。

 気分的に緑よりは良かったかも。

 気持ち悪い事には変わりないんだけど。



 ガサガサッ



「えッ!?また魔物ッ!?」


「いや、アレはだ」


 害虫?それってカインさんの事?

 アビゲイルさんは最近カインさんの事を害虫としか言わないし。

 ってか何も見えないのによく分かるね?

 さすが獣人、なのかな?


「あぁーいたいた。お前らこんなとこまで離れて何してんだよ?」


 あ、本当にカインさんだ。

 僕には全然分からなかったけど、やっぱり鼻が利くのかな?


こそ何しに来た?テントはどうしたんだ?留守番もロクに出来ないのか?はぁ、に任せた私が間違えていたようだ。いや、ユウの近くにはは置けんからな、仕方ない。

 ...そろそろテントに帰らんと魔物に荒らされたら敵わんな。ん?誰だ貴様?いつからそこにいた?こんな森を1人でウロつくなど鹿のすることだぞ?さぁ、ユウもう暗くなる。その子は私が担ぐからテントに戻ろうか?ソコの鹿も自分の場所へ帰れ。さっさと消えろ。失せろ」


 言いながら女の子を担いで本当にカインさんを置いていこうとするアビゲイルさん。

 僕と話す時と全然違うんだけど?

 ツンツン?いや、シッシッ!だと思う。

 僕も嫌われたらここまで言われるのかな?

 僕だったら立ち直れないなぁ。


「お前容赦ないよなッ?優しさをどこに置いてきたんだ?」


「はぁ。お前は私のユウを戦地に向かわせようとしているんだぞ?そのものではないか。に優しくしてどうする?そもそもは嫌いだ。気持ち悪い。が近くにいるだけで無性に吐き気がする。お前なんなんだ?気持ち悪いな。人間じゃないのか?なんか臭いし。ん?お前臭いな。近付くな。臭い。凄いなお前。本当に人間か?」


「おまッ‼...いや、お前の言う通りだ。俺は嬢ちゃんを危険に遭わせようとしているのかもしれない。お前に嫌われるのも当然だよな。悪ぃ。

 ...だが臭いってなんだよッ‼俺も嬢ちゃんと同じ人間だっつーのッ‼ちゃんと風呂くらい入っとるわッ‼だれがだッ‼」


「いや、ユウは天使なんだ。と一緒にするな。気持ち悪い」


 あ、始まった。

 だいぶ暗くなってきたよ?もう帰ろうよ?


「つーか、なんで嬢ちゃんこんなに血まみれなんだよ?お前嬢ちゃんに怖い思いさせてんじゃねぇのか?ちゃんと守ってんのかよ?やっぱり俺が守ってやった方が良かったんじゃねぇの?あぁ?」


の分際でいい度胸だな?最近羽音が気になって妙にイラつくんだよな。そろそろ叩き落とさねば鬱陶うっとうしいな」


 アビゲイルさんは担いでいた女の子を優しく地面に置いて剣を抜いた。

 カインさんも同じく腰のナイフを抜き出した。


 え?2人ともなんで武器もってにらみ合ってるの?


「ちょ、ちょっと2人とも喧嘩はダメ-ッ‼この女の子もいるんだから早く帰ろうよッ‼」


 僕はあきれながら寝ている女の子を見た。

 幸せそうに寝てるこの子がなんかうらやましいな。

 小さいからなんかチコちゃんみたいだし。

 君は平和だね。なんか癒される寝顔だよ。

 

「フン。命拾いしたな、。ユウの微笑みがなければ剣のさびになったというのに」


「お前こそな。嬢ちゃんの微笑みがなければそこで無様に地面にキス出来たのにな」


 良かった。

 気付いたら2人とも剣を収めてくれてたみたい。

 この子もいるし早く帰ろう!



 いざ帰ろうかとしたらアビゲイルさんが女の子を担いで僕に近付いてきた。


「ユウ?ちょっといいか?」


(ん?どうしたんだろ?アビゲイルさん)



 コソコソ...

 (この子をテントに連れて行く前に水浴びしに行こうか。魔物の血は汚いからな。気分的にも楽になるぞ?が覗くかもしれないからこっそり抜けて行かないか?)

 (え?僕だけ綺麗になっていいんですか?アビーも汗かいたんじゃ?)

 (ん?私も一緒に入るぞ?大丈夫だ。この子は私が守るから)



「えぇーッ!?」


「なんだよ2人で耳打ちしやがって。なんかの悪だくみか?」


「い、いや、違うん、ですけど」


 また、アビゲイルさんと?2人で?裸に?僕が?一緒に?

 思い出したらなんか顔が熱くなってきた。


には全く関係ない。さっさと前を歩け」


「へいへい。どーせ嫌われ者ですよ。フンッ」



コソコソ...

 (ユウ、慣れてないのは分かるが一緒に入ろう。これはお姉ちゃん命令だ)


 そ、そんな...たしかに汚れは落としたいけど...


 (ぼ、僕の魔法で....)

 (駄目だ。それにユウに抱き着いたら何かムラム...いや、ホラ今だ!行くぞ!)



 あ、錠されてしまった。

 女の子を担いでるのにどこにそんな力が?



 もう駄目だ行くしかない。

 ホントは嫌じゃないんだけど。

 



 アビゲイルさん僕の身体触るから。

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