第6話 赤狼の獣人アビゲイル
「...んみゅ?」
目を覚ますと青い空が広がっていた。
本日2度目の青い空。
夢でも見ていたのかと思ったが、周りの腐臭により夢ではない事が分かった。
僕は青い空を眺めながらも現実の悪夢を振り返った。
(なんで僕がこんな目に
胸を刺され、女体化し、ゴブリンに追いかけられて、
オークの死体の近くで今、倒れている。
今でも胸を貫いた剣の痛みを覚えている。
風穴が開いていたこの胸は傷一つ無くて、今やささやかな双丘の弾力ある防具をデフォルトで身に着けている。
この呪われた装備は死ぬまで外せないと思う。
(どんなゲームだよ!?ステータス低い子供主人公に呪いとか糞ゲーじゃんか。
ゲームなんかじゃないことは分かっているんだけど、さぁ...)
僕がいるこの世界は現実。
頭では否定的だけど心では分かっている。夢じゃない。
何故?を答えてくれる人は多分いないと思う。
そもそも答えを教えてもらっても僕にはどうする事もできないし。
(それにしてもこの枕ちょっと高いなぁ。
あれ?なんで外に枕なんてあるんだ?)
僕はなんとなくだけど上を見た。
そこには赤い髪の女性が優しい瞳で僕を見ていた。
「目が覚めたか?白いお嬢さん?」
「ふぇッ!?」
僕は知らないうちにこのお姉さんにひざまくらしてもらっていたみたい。
元男子としては非常に嬉しい状況だと言える。
なにしろこのお姉さん、非常に美人なんだ。モデル級ってやつ?
それに頭の上に
凄く気になる。
しかしいつまでもこうしていたら失礼だ。
「あの、えと、ごめんなさい?」
僕は照れながらもまだ気だるい身体を起こして謝った。
心の中ではアリガトウ、です。
「えーと、お姉さん身体はもう大丈夫なの?」
「あぁ、問題はなさそうだが?」
まだ力が入らないけど、フラフラと振り返りながら僕は立ち上がり、正座のままのお姉さんを頭から順に下へと観察してみる。
艶やかで柔らかそうな赤髪は肩くらいの長さでワイルドな髪形だけど、意外に似合ってる。
スラっとした体に似合わない胸の
(...違うか。そうじゃないよね?)
お姉さんの身体は傷一つないように見える。
それどころか破れていた服さえも修復している。
「大丈夫そうで良かったです。ところで服は着替えたんですか?」
僕は笑顔で安心した事を伝えた。
けど、周りに道具袋どころかお姉さんの剣以外何もない。
(破れた服はどうしたんだろう?)
「えっ?あ、身体は大丈夫だ。それより...」
何故か頬を赤くしながらも困惑した表情でお姉さんは無事なことを教えてくれた。
(どうやら僕は魔法をちゃんと使えたみたい。
全然実感ないんだけど?)
そんな僕にお姉さんは不思議な事を聞いてきた。
「君は私に
何故服が
(何をした?服が戻ってるって...ん?どういうこと?
ルナに言われるがままに思ったより簡単だった
「ん???僕はお姉さんを助ける為に魔法を使っただけだよ?
力が抜けて倒れちゃったみたいだけどね、ハハハ」
嘘はついていない。
理解はできないけど。
本当に魔法を使えたみたいで僕だって正直ビックリしているんだ。
「魔法?全てを癒して、
(あれ?イメージして叫ぶだけの簡単な魔法に何を驚いているの?
たったあれだけで回復できる魔法なんて病院いらずな世界になったもんだよね。)
そもそも地球に魔法なんてないはずなんだけどね?
「そんな魔法など聞いたことがない...」
「え?」
(あんなに
もしかして僕にしか使えないの?)
そんな事を考えていたらルナから警戒を促される。
〈...左の森からオオカミが5匹...その人に任せてみて...〉
(あ、いたんだルナ。
すっかり忘れていた。
けど病み上がりの人に任せていいのかな?
でも、お姉さんしか頼れそうにないんだよね)
「お姉さん、左の森からオオカミが5匹来てるみたいだけど、大丈夫?」
もしここにあるオークの死体が全てこのお姉さんに倒されたのだとしたら多分すごく強い人なんだと思う。
でも、大丈夫だとは思うんだけど、
病み上がりじゃ思い通りに体が動かないかもしれない。
病み上がりだという点では僕は、
全然思い通りに体が動かせないし。
そもそもオオカミの強さを知らない僕には判断出来ない。
「ッ!?確かに近付いてくるオオカミの匂いを感じる。何故
ゆっくりと立ち上がり剣をとるお姉さん。
言い終える前にオオカミがちょうど5匹左の森から出てくる。
ルナは本当に出来る子なのかもしれない。
「任せてくれ。私は
アビゲイルと名乗ったお姉さんはオオカミへと駆けだす。
その姿に男心がくすぐられ、ついつい口に出てしまう。
「うわぁ、かっけぇー」
〈...あの人の...真似しないでね...〉
(いや、無理でしょ?)
だって、あの人の動き全然見えないし。
それにしても獣人か、やっぱそうだよねー。
気になってたんだ頭についてた
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