第32話 風
「ところで、今回は豪勢なメンバーで出発する事になってますが、相手は強者なんですか?」
美輝さんの長々と続く話を幡羅さんが強制的に遮断し、今はまっすぐ自然豊かで風が心地よい道をひたすら進んでいた。
「そうだな。もしかしたら恨呪が現れる可能性があるということだ。だから、あねっさんにも声をかけた」
「美輝さんの恨力はなんですか?」
美輝さんに話しかけるも、返答はない。
ま、まさか無視出来るるわけじゃないよね? 違うよね。私どんだけ嫌われているんだろう……。
「あねっさんのは教えても問題ないと思うぞ。条件だってこいつには関係ないものだろ」
「そうだな。京夜が言うなら答えよう」
苦笑いを浮かべていると、幡羅さんが助け舟というように問いかけてくれた。ありがとうございます……。これからは幡羅さんが居ないと会話ができないということですね理解しました、はぁ。
「私の恨力は”風操作”だ」
「え、それって、風を操るという事ですか?」
「そうだ」
聞いた感じだと、そこまで強い恨力には感じないな。でも、やっぱりそれも使いようなのか。
「お前、今あねっさんを馬鹿にしたか?」
「へっ? そ、そそそそ、そんなことあるわけないじゃないですか!! 妖裁級の片を馬鹿になんて私が出来るわけがない!! ただ、どんな感じで使うのかなっと思って」
ばかにしたわけではないけど、やっぱり幡羅さんって人の心読めるでしょ。いつもそんな感じのタイミングだもん。
「使い方は様々だ。だが、実際はこれを使った方が容易い。恨力を使うのは京夜と共に任務する時くらいだ」
「え、そうなんですか? それはまた何で」
教えてくれそうだった美輝さんの口を刀で押さえた幡羅さん。あぁ、身長的に届かないから刀を使ったんか。というか、なんで抑えたの?
「今日の戦闘で使うかもしれねぇから、それを見ろ」
「え、今教えてくれないんですか?」
「見た方が早い」
「えぇ……」
美輝さんを見るけど、何も言わなくなってしまった。うぅ、なんで幡羅さんには素直なのに……。
って、そういえば、なんで美輝さんは幡羅さんにここまで素直なんだろう。逆だったらなんとなくわかるけど。
「えっと、幡羅さんや美輝さんは妖殺隊に入ってどのくらいのなんですか?」
「ほう、今それを聞くのは勇気があるな、一回刀を刺していいか?」
「何でですか!? ただ妖殺隊に入ってどのくらいなのかを聞いただけなのに!?」
幡羅さんからの微かな殺気、何でこうもこの人は怒りっぽいのか。もう少し心を広く持ちましょうよ、怖いですって……。
「…………」
ん? 幡羅さんが黙るのはさっきの流れでなんとなく納得なんだけど、なんで美輝さんまで黙ってしまったのか。
あ、もしかしてそれだけ長く居るということかな。美輝さんは結構古株っぽいよなぁ。逆に幡羅さんは入ったばかりなんじゃないかな。いや、入ったばかりではないか。でも、古株でもない気がする……。
「……私は三年ぐらいだったはずだ」
「もうそんなに経つのか。なら、俺はもう十年以上は妖裁級に所属していることになるなぁ」
……………………ん? 逆では?
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