変態就活生が、混浴に入る

龍鳥

変態就活生が、混浴に入る



 女だからて、男湯に入るのは間違っているのか?

 

 今アタシは、銭湯にいる。

 ここにいる目的は、小学生の頃に抱いたトラウマがあるからである。


 『ねえねえ、そこの男子」


 『なに?』


 『チ○コ見せてよ』



 以来、アタシは変態の称号を20代になるまで呼ばれている。

 でも、かえってその方が安心するのは、アタシはアタシのまま、ありのままの姿でいられるからよ。

 だって、男の股間て気にならないかしら?

 それぞれの大きさも違う、形も様々で例えイケメンやブサイクでも、大小関係なく男の象徴は違うのよ。これって神秘じゃない?


 顔面偏差値が差別される時代、男のチンポコは差別されない。だからアタシは言ってやる。


 「男を顔で決めるな!!中身で決めろ!!」



 そして20歳の誕生日を記念して、故郷から遠く離れた古風の銭湯から混浴できる場所を見つけて、今に至る。これで男のアソコを存分に見ることができる!!片道2時間かけて来た甲斐があったわぁ!!



 「さぁ行くぞ!!男の世界へ!!」






 「あれ?君は確か……うちの会社に面接に来た子だよね?」



 おいおい、へーい。なんで昨日、面接した会社の人が、ここにいるんだ?

 因みに、アタシは就活生であり内定戦争の最中である。まぁ、息抜きに銭湯するのも間違ってはいないが。


 その面接を受けた面接官が、なんで同じ銭湯にいるのよ!!



 「君も温泉が好きなのかい?」


 「あっ、えぇ、まぁ……」



 言えねえ。大人のチンポコを見たいために銭湯に来たなんて、最悪の場合は内定が取り消されるかもしれないわ。



 「あっ、内定を決める権限とかない役職だから安心してね」



 それ聞いて余計に不安ですよ!!でもその前に、貴方って良い体してるねぇ!!筋肉とか整ってるし!!そのチンポコを是非見せて欲しいなぁ。


 ……うん?査定に響かないなら、見せてもらえばいいのでは?


 同じ湯船に浸かる男女。何も起きないはずがない。というか、若い女が湯に入ってるのに、この人はなにも興奮しないのは何故なのか?



 「あっ、1つ聞いていいですか?」


 「なに?」


 「ゲイですか?」


 「いや、ゲイじゃないが」



 ああ、やっちまった!!確かにアタシは変態だけど、聞いて良いこと悪いことは区別はつけるわ!!なんで直球な質問を!!ほらほら、面接の人が変な顔してアタシを見てるじゃん。



 「なら、チン○見せてもらっていいですか?」



 また口が滑ったああ!!いや、本当は見たいだけど。それによく見たら、結構なイケメンな顔してるし……いやいや、股間と顔の比率は違うってのが、アタシの信条でしょ!!



 「うん、いいよ」


 「えっ?」



 えっ?いや口に出した言葉も同じだけどさ。待ちなさいよ。女だよアタシ。チンポコ愛好家でも、こんな変態なアタシでも受け入れてくれるの?もしかして、怒ってる?



 「いやいや、無理しなくていいですよ」


 「大丈夫、安心してよ」


 「その……内定とかは」


 「関係ないさ。混浴だから遠慮なく見てもいいよ」



 アタシの心は、不思議と温かくなった。湯船に浸かってるからではなく、人の心遣いはここまで広いことに感動しているのだ。


 いつだってそうだ。アタシは素直に生きてきて、いつも罰を受けてきた。

 初めて見たチンポコは、父と一緒にお風呂に入った時だった。あの時の、グロテスクな造形が忘れられず、男のチンポコは他にどんな形をしているか、気になった。


 そして小学生時代。恥ずかしさの度量が知らない餓鬼たちは、アタシが見せてくれてと頼んだら素直に見せてくれた。

 だが、父のような衝撃的な物はなく、アタシは現実にガッカリした。


 そして中学からのネットのやり方を覚えたら、正に革命だった。アダルトサイトを漁れば、色んな男のシンボルが見れて天国だった。あー、イケメンでも小さく、ブサイクでもデカイのを知れた快感は、今でも忘れない。


 この世に差別なんてない。人種など、男のチンポコの前では無いに等しい。アタシはその時、世界を広く感じた。


 そして現在、いま本物のチンポコを10年ぶりに見れる時が来るなんて!!



 「アタシがタオルを下ろしていいですか!?」


 「ああ、いいよ」



 彼が下半身に巻いているタオルをゆっくりと下ろす。ついに間近に見れる!!興奮が止まらず、手が震えている。ついに、チンポコが、ご対面!!





 ……あれ、ない?



 「はははっ!!びっくりした?」


 「えっ?えっ?だってガッチリした体してるから……」


 「私は女よ。趣味は筋トレて鍛えてるのよ。ごめんね、貴方が真剣に聞いてくるから、おかしくて騙しちゃった。ごめんね、はははっ!!」



 ……ははは。笑うのはこっちだよ。


 いやぁー、見た目に騙されるのは、というのはこの事なんだねえ。いやさ、そりゃそうだよ。だって普通、異性がチンポコ見せてくださいて聞かれたら、普通はドン引きするもんよね。でも……なんか寂しいな。



 「そんなに男のアレが見たかったの」



 アタシの落胆ぶりに、申し訳なさそうに面接官の人が聞いてくる。そりゃ、そんな筋肉モリモリの人を男だと間違えたアタシも失礼だけど。



「ごめんなさい、男性のつもりで聞いて無礼なことを」


 「いいよいいよ、いつも間違われるから」


 「いえ!!そんなことは!!男のアソコを見たいのは本当ですか!!男らしい女性も立派な魅力だと思いますよ!!お陰でアタシも勉強になりました」


 「……初めてだな、そんなこと言われたの」



 あれ、なんか良い雰囲気になってきたぞ。アタシは彼女の話を黙って聞くことにした。



 「私さ、女なのに身長も高いのを、昔から馬鹿にされたのよね。それが悔しくて毎日と筋トレとして誰にも負けないよな体を鍛えてきた。男に負けない女になりたかったのよ。でも、貴方のおかげで女性らしさていうことを忘れてたよ」



 アタシと同じだ。変態だと呼ばれて友達もいらず、女の癖にチンポコの研究に夢中になっていた。女だから男のチンポコに興味を持つな、そんな法律はない。そして彼女が、男っぽい女だからといってバカにされる理由もない。



 「そんなことありません。アタシも、チンポコの形が好きだから昔から馬鹿にされましたけど、それを悪い事だとは思っていません。だから貴方も、これまでやってきたムキムキの体も、女性らしさとか関係なく、貴方の良さだと思います。男とか女とか関係ありません!!はい!!」


 「……なんだか励まされてるのか微妙だけど、ありがとう!!おかげで私も自信持てたよ!!」


 「ちょちょ、痛いたい!!抱きつく力が強いですよ!!」



 この人もアタシも、性的な問題に悩んでいた。きっと同じように悩んでいる人は、彼方此方といるかもしれない。でも、こうして話し合ってみれば、それは素敵なコミニュティになるし、大事な友達にもなれるかもしれない。



 この縁がきっかけで、アタシは筋肉質の彼女がいる会社に見事と、内定を勝ち取った。以来、アタシは最高の先輩を手に入れることができた。

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