最終話 贖罪の旅
昔話は終わり、2人は現代に戻ってくる。
「……それで、クロノの施術を受けて今年でもう10年になるのね」
「もしかして彼女から私の名前を聞いているのか?」
「ええまぁ。あなたってば結構活躍しているそうね。聞いた話では3つの孤児院に多額の寄付をしているんですって? 立派じゃない」
「どうだか。私が犯した罪に対してはあまりにも小さいですよ。それと、この本は返します。もう十分頭の中に入っていますし、大変役に立ちましたよ」
そう言って彼は元妻に旅立ちの際渡された彼女が書いた文庫本を返す。何年も読み込まれていたのかずいぶんとボロボロになっていた。
「あら、返してくれるのね。……ずいぶんと読んだわね。たった10年でここまでなるには相当読み込んだはず」
「最後の頃はお守り代わりになってたんですが、せっかくの機会ですから世話になったと思ってね」
「なるほど、そういう事ね。分かったわ、預かっておくわ。ここまで読み込まれれば本も本望でしょうね。あ、そうそう。特に予定が無ければうちに泊まってもいいけど、どうする?」
「そうか。じゃあご厚意に甘えさせてもらうよ」
「うん、そう言うと思った。じゃあ夕食作るから待っててちょうだい」
そう言うとエルフィーナは立ち上がり夕食を作り出した。
しばらくして……
「待たせたわね。できたわ」
エクムントにはピーマンの肉詰め、自分用には野菜炒めを出した。その香りからして美味そうであるのは明らか、口にしても予想通りの味だ。
「味は合うかしら? 私はエルフだから肉は口にしないから味付けがあってるかどうかは分からないのよね。味見も出来ないし」
「大丈夫です。おいしいですよ」
「そう。良かったわ」
エクムントのそのセリフに彼女はホッとする。
その後も久しぶりに時を刻み始めた元夫婦の時間、会わなかった間何が起こったかをおしゃべりをしているとあっという間に就寝時刻。エクムントは客間に通されそこのベッドで眠った。
翌朝……
「本当に世話になったな。助かったよ」
「いいのよ。いつでも帰ってきて良いから。待ってるわ」
そう言って元妻はエクムントを微笑みながら送り出していった。
もしもあの世で両親や兄に会うことがあったのなら、その時は謝ろう。謝ったところでどうにもならないが自分に出来ることはそれしかない。
テッド=ヴラド改め、エクムント=バルミング。彼の
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