第13話 ギャルと悪霊とかくしごと(2)
(レンレンが……ギャルと話している——!!)
自分がレンレンのファンであることは隠しているが、好きなものが同じ雪乃と蓮は、席も隣同士になったこともあり、自然とよく話をするようになった。
ただ一方的に見つめているだけだった関係から、かなり親しくなれたと思っていたが、突然再会したエリカの方がはるかに親しい関係に見える。
「全然気づかなかった! 蓮、あんた別人すぎじゃん……変わり過ぎだし」
「それはまぁ……最後にエリカと会ったのはだいぶ前だから————」
学校ではあまり目立つ存在ではない、眼鏡で大人しい蓮が普通にエリカのようなギャルと会話しているというギャップに加え、お互いを下の名前で呼び合っている。
今は昼休みとはいえ、他のクラスの女子が勝手に蓮の前の席に背もたれを前にして座っている光景は、二人がどういう関係か全くわからない雪乃からも、そして、他のクラスメイトから見ても異様な光景だった。
(何なの!? 誰なの!? ……いや、誰かは知ってるんだけども!! どうしてレンレンとエリカが知り合いなの!? 私だってまだ、下の名前で呼ばれたことないのよ!?)
「でさぁ、学校終わってからでいいから、エリの家来てくれない? マジでアレはヤバいからさぁ」
「わかったよ……」
(え!? 家まで!? 家まで行く仲なの!?)
その内、昼休み終了のチャイムがなり、慌ててエリカは自分の教室に戻っていった。
一向にわからない二人の関係に、動揺を隠せない雪乃は午後の授業が始まっても、じっと蓮の方を見てしまう。
(何なの!! どういうことなの!?)
しかし、その視線に蓮は気がつかない。
エリカの背後に悪霊がついてることなんてもうどうでもよくなって、雪乃は机の下でぎゅっと制服のスカートを強く掴み、嫉妬に狂いそうになる。
(私のレンレンと、一体どんな関係だっていうのよ!!?)
1年1組だけ、教室の温度が4度下がった。
* * *
放課後、雪乃は密かに蓮を尾行する。
入学して早々に教室で倒れたあの日、自分は迷惑なファンにはならないと言っていたくせに……
(なんで二人で並んで一緒に帰ってるの!? なんなの!? 私だって、一緒に下校したことないのよ!?)
いつの間に連絡を取り合ったのか、二人並んで歩く蓮とエリカ。
二人はその背後にたくさんの悪霊と、雪乃が後をつけていることに全く気がつかず、エリカの家に入って行った。
小学生の頃に何度か遊びに来たことがあるエリカの家は、最近リフォームしたのだろうか、外壁の色が以前とは違った。
昔はピンクだったが、今はオレンジになっている。
(色は変わってる気がするけど、相変わらず派手な家ね————)
電柱の陰から、怒り狂いそうになりつつ、どうやって中に入るか考える。
(久しぶりに遊びに来たよ! とか、自然に行く? いや、そんなの無理やりすぎる…………どうしよう……こうしてる間に、二人が中で何かしてたら…………何かって、何よ!!?)
危ない妄想が膨らんで、雪乃の脳内はおかしくなりそうだった。
(落ち着け、私!! 私のレンレンが、ギャルとあんな事やこんな事するわけないわ!! 一回落ち着こう————)
「——……あ……そうだ、私————雪女だった」
すっかり忘れていたが、雪女に変身してしまえば、蓮には見えない。
あの多くの悪霊が憑いてることに気づいていないエリカだって、見えないに違いない。
雪乃はまるで勝ち誇ったような笑みを浮かべて、雪女の姿に変身した。
水色の髪に白い着物。
人間の姿と妖怪の切り替え方は、あの連休中にしっかりマスターしているのだ。
ついでに、この姿だと壁も通り抜けることができる。
「フフフっ……これで完璧!! 今行くわ!! 待っててね、レンレン!!」
そのまま壁をすり抜ければ良いものを、ご丁寧に玄関フードのガラス戸から通り抜けて、ドアを開けるという行為をしないだけで、普通の人間と同じ行程で雪乃は中に入った。
そして、中に入った途端、そのありえない光景に雪乃は目を見開く。
「何よこれ……!! 悪霊だらけじゃない!!」
エリカの家の中には、玄関の時点からとんでもない数の悪霊がいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます