第22話 学院掲示板依頼書

 地獄イベントが終了してから数日、私は困ったことが1つある。

 それはトウマがうざい感じもあったり、少し変になっていることだ。


 原因はよくわからないが、地獄イベントが終わってから、動きとか行動がなんか変で困っている。

 噂では、女性に飢えすぎた結果、寮生に色目を使うようになっているらしい。

 特に私には、皆から物凄い心配の声が届いていた。


 私としては身の危険は一度たりともないのだが、トウマの行動や動きがやたらと目について困っているのだ。

 皆にそれを相談しても、あいつはもう行っちまったとか、俺たちとは違う次元に足を踏み入れたなどと、まともに取り合ってくれていない。


「はぁ~」


 私はポイントで最近はまっている、米を主食とした朝食を食べながらため息を漏らした。

 そこへトウマが食堂にやって来る。


「おはっす~、みんな早いな。俺も飯、飯~」


 トウマはいつものパンを主体とした朝食を持ち、さりげなく私の近くに座った。


「ん、おう、クリスじゃん。今日もその飯か? 最近ハマってるんだな~」

「まあな。てか、何で気付いてない振りなんてしてたんだよ、気付いてたろ」

「え、い、いや~何というか、そうの、ね~」

「はぁ~、まぁ何でもいいけどさ。御馳走さん、トウマ俺は先にいくからな」

「えっ、ちょっとクリス! 一緒に行こうぜ」

「今日は、大図書館で調べたいことがあるから、付いて来んな!」


 そのまま私は、食器を片付けトウマを置いて先に寮を出た。


「何だよ、てか少し当たりきつくないか…なぁ、お前らもそう思わないか?」


 トウマが席を少しずらし、皆に近付くと一歩皆も下がった。

 更にトウマが一歩近づくと、皆は更に一歩下がった。

 異変に気付いたトウマは、一歩下がると、皆は一歩近付いた。


「って、おい! なんだよ、その俺が近付くと離れて、離れると近付くシステムは!」

「いや、何と言うか、身の危険を感じての行動だよ」

「そうそう。これは自分の身を守るためなんだよ」


 ライラックとリーガが答えると、トウマは首を傾けていた。

 トウマ自身に最近の噂が耳に入っていないので、自分がどういう風に見られているか分かっていなかったのだ。

 あっそ、とトウマは答え朝食に戻りながら、最近のクリスへの行動を振り返っていた。

 そこで改めて、少し変に付きまとい過ぎかとふと思った。


「(少しクリスの事を知ろうとして、焦り過ぎた感があるな…落ち着け俺。落ち着くんだトウマ。恋は焦っちゃいけないと、昨日読んだ本にもあったろ! ここは少し冷静になって、一度以前の様な感じで接していこう。そうすれば、クリスも心を開いてくれるだろう)」


 トウマが何か考え終わると、朝食を食べつつ、今後どう接していくかを淡々と考えていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 その日授業が終わり、私は共有スペースにてモランを待っていた。

 朝、大図書館にてモランと出会いその流れで、授業後少し魔力のことで話がしたいと言われたので、待ち合わせをしていた。


「クリス君、ごめん。もしかして、待たせちゃった?」

「いいや、俺も今さっき着いた所だ」


 モランは急いでやって来たのか、少し息切れしていたので、ひとまず息を整えようと座られた。

 そこで少し今日の話について聞いた。

 なにやら、魔力の制御で考えている事があるらしく、私の意見も聞きたいという事だった。

 するとそこへ、レオンが突然目の前を通り、私に気付き声を掛けて来た。


 そこで軽くモランの紹介をし、レオンも丁寧に挨拶し終え、何をしていたかを訊ねられたので、相談事を教えてよいかをモランに確認してから教えた。

 モランもあれ以来、人見知りが良くなったのか、初対面のレオンとも普通に話せていた。

 相談内容を理解したレオンは、自分も協力出来るかもしれないと名乗り出てくれた。

 確かにレオンは、転入してから優秀だという噂も聞くし、一部では庶民のプリンスなどと呼ばれているらしい。


 これはシンリ情報だが、レオンは何でもスカウト入学で、この学院に入って来ているらしい。

 スカウト入学は、学院長自らがその才能を認め、更に才能を伸ばす為に学院で入学させる制度で、いわゆるお墨付きというものだ。

 私はそんな事も知っていたので、レオンが力になってくれるのは、モランにとってもプラスになると感じ、私からもお願いした。

 モランもレオンの噂は少しは知っていたらしく、自分からもお願いしていた。

 そして私たちは、校庭の訓練場へと向かい始めると、遠くからトウマが何かを持って走って来た。


「あっ! いたいた、クリス! 少しこれ手伝ってくれないか?」

「トウマ? 何だかすまいが、今日は先約があるから手伝えないぞ」

「えっ、マジか~せっかくいいポイントが貰える、掲示板依頼書見つけて来たんだが」

「掲示板依頼書? ってなんだ?」


 私の他に、レオンも首を傾げていた。

 するとトウマが、持ってきた紙を見せながら説明してくれた。


 掲示板依頼書とは、学院内で生徒や街内からの依頼を掲示している場所だ。

 内容は、悩みごと相談や探し物、お手伝いなど簡単に出来るものばかりだ。

 更に達成すると、この学院で使えるポイントが貰えるのだ。

 ちなみに生徒が依頼を出す際には、自分でポイントを決めて掲示し、学外の物に関しては学院の教員が決めて掲示しているのだ。


「ふ~ん、そんなものがあったのか」

「そうなんだよ、モランは受けた事があるんじゃないのか?」


 トウマの問いかけにモランは頷き、2度ほど学院からの依頼を受けた事があるそうだ。

 そこでレオンが、トウマが持ってきた依頼書を見て、学院内に迷い込んだ金猫探しとあり、これはトウマが受注したのかと確認した。

 トウマは即決して来たと自慢げに答えた。


 私とモランも依頼書をまじまじと見つめて、内容は猫探しであり、ポイントは20とあり多いのかよく分からなかったが、依頼書の内容にしては高額とモランが教えてくれた。

 トウマは良かったら、ここにいる4人でやってみないかと言い出すが、今日はモランの相談に乗っているので断ろうとしたが、モランが人数が多ければすぐに終わるし、いいんじゃないと言ってくれえた。


 なんていい子なんだモラン。

 普通なら断る所をわざわざ、自分の事を後回しにして引き受けるなんて。

 その出来事で私の心の中では、モランの好感度が急上昇していた。


「モランが良いと言うのなら、トウマの依頼書を手伝ってもいいんじゃないかな?」


 レオンも意外と乗り気になっていたので、皆が良いと言うのならという事で、トウマが持ってきた依頼書をやる事になった。

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