第23話 金猫探し

 そして私たちはトウマの後を付いて行き、ひとまず校庭に移動した。

 そこで、まずはどういう猫を探すのか特徴を再確認した。


「依頼者は街内の人からで、名前がチャロちゃんと言う。特徴は、金色の毛並みをしているので金猫と近所でも有名だったそうだ。そのチャロちゃんが、少し前から行方不明で最近この学院へ入る所を見たので、調査してほしいらしい」

「猫探しか。俺、動物探すとかやったことないんだよな」

「あっ、私もないです」

「2人共そうなのか? 僕はやったことあるけど、ちなみにトウマは?」

「俺も数回やったことがある」


 4人中2人は動物探しの経験があるので、そこまで難しい感じではないと私は感じていた。

 ひとまず経験者のトウマとレオンの言う通り、草むらなどを探すのと、生徒に猫の絵を見せて見かけた生徒がいないかを手分けして探した。

 分担は、トウマとレオンが草むら担当で、私とモランが聞き込み担当で、30分後に共有スペースで待ち合わせをした。


 30分後、待ち合わせ場所で合流し情報交換を行った。

 トウマとレオンの方は、魔力技量でネズミを作り2人で周囲に散らばらせて探索したが、見つからなかった。

 一方、私たちの方は、金色の猫っぽい動物を見たという情報を得たので、4人でその場所へと向かった。

 その場所は男子寮のカモメ寮こと、エメル寮周辺であった。


「まさか、こんな所で見かけているとはな…」

「私、男子寮の方に来てしまって、良かったんでしょうか?」

「確か規則だと、そんな罰則とかはなかったはずだけど…」

「ひとまず、周辺を探そう」


 私は、先程トウマたちがやったと言う方法で探すことにした。

 そこでモランの相談事の内容も出来るのではと考え、モランに話すと頷いてやってみると言ってくれた。

 そして私とレオンで、土の塊から魔力技量を使い、ネズミを作り上げた。

 そこへトウマが魔力を通す前に、モランの事を話をして、モランに作ったネズミ全てに魔力を通す様に指示した。


 モランの相談事は、魔力制御で扱える数が中々増えないという事と、魔力制御と類似している魔力質量を、もう少し学んでみたいという事だった。

 なので私は、ある程度知識のあるモランに知識など話すことより、実践を通して学んだ方が良いと判断したのだ。

 モランが魔力質量を行うも、中々ネズミに魔力が貯まらずにいた。

 そこにレオンが、イメージしやすい様な教え方をして、更に私の覚え方なども参考にさせながら試行錯誤すると、遂に1体に魔力が貯まりネズミが動き出す。

 魔力質量が出来たことに、モランは喜び私とレオンに感謝していた。


 残り数体は、モランの練習用として残し、他のネズミには3人で魔力質量を行いネズミを広範囲に動かし金猫を捜索した。

 数分後、数体のネズミが破壊されことが伝わりその方向へ4人で向かうと、そこには探していた金猫がネズミを威勢よく叩き潰していた。


「いた!」

「任せろ!」


 そう言ってトウマが、事前に準備していた、金猫の大好物であるゼリーを餌におびき寄せた。

 金猫もそれに気付き近寄って来て、トウマの出したゼリーを舐め始めたので、トウマがそのまま抱き上げた。


「よし、捕獲完了だ」

「トウマ、それは何?」

「ん? これは、依頼主さんにチャロちゃんの大好物を先に聞いて、もしもの時役立つかもって思って買っておいたんだよ」


 するとそこに、カモメ寮のスバンが上機嫌でやって来た。


「金猫ちゃ~ん。今日もご飯持ってきたよ~……えっ?」

「え?」


 見た事ない上機嫌なスバンと私たちが、目が合って両者も動きが完全に止まった。

 その後、事情を説明し、金猫の掲示板依頼書を受注している事を伝えるとスバンは納得していた。

 するとすぐにスバンから、今日見た事は他言無用と強く口止めされた。

 スバンは持ってきたご飯をトウマに渡すと、そのまま去って行った。

 掲示板依頼書達成報告をしに行く帰りに、先程上機嫌だったスバンの事をトウマに聞くと、あっさりと答えてくれた。


「あいつは動物好きなんだよ、特に猫とかな。多分だが、寮近くでコイツを見つけて可愛くて餌付けでもしてたんだろうな

「ふ~ん」


 スバンの意外な一面を知って、少し可愛い所もあるんだと思った。

 そのまま共有スペースまで戻ってくると、後はトウマがやると言ってその場で別れた。

 ちなみにポイントは、全員で分割となり5ポイントを後でトウマから貰った。


「とりあえず、今日は色々あったけど、モランの相談事も少し手伝えてよかったよ」

「それはクリス君に、レオン君、そしてトウマ君がいたから解決出来たんだよ」


 何なのこの子、トウマは突然来て予定を突っ込んで来ただけなのに、トウマも解決できた一員と言うなんて、凄い子よあんたは。

 私がモランに感動すら覚えていると、モランは相談に乗ってくれ、解決してくれた事を感謝して一礼すると、寮の方へと帰って行った。

 その後レオンとも別れ、寮へと戻った。


 自室へと戻り、大図書館から借りた本を読んでいると、トウマが帰って来て報告完了と親指を立てて報告してくれた。

 それと余談だが、スバンはそれ以降金猫を気に入ったのか、トウマにどこにいるのかを聞き、よく会いに行っているらしい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る