僕の世界は君だった
@irodori12
第1話
キャンパスライフなんて嘘だ!
と声をはっていいたい。看護学生になってはや3年になる私、吉沢 知華は今日も今日とて、一限から四限まで授業である。憧れていた全休もなければ、お昼からの登校すら週に1度である。そんな中でバイトをしようとした結果、サークルにも参加でない。おまけに看護なんていえば、ご存知の通り9割が女の子で青春なんて夢のまた夢。
「あーおかしい。絶対におかしい。」
「またゆってるの?しかたないよ、そーゆーとこでしょ、ここは。それに思い当たる節はあるでしょ。」
なんて余裕に言ってのける彼女は私の大学生活において大きな存在である結衣だ。彼女は可愛くて、なんなら他校にしっかりと彼氏をつくっている。だからわからないんだ!なんて、心の中で野次を飛ばしながらポリポリとポッキーをたべる。
思い当たる節はというのは、別に遊びに行く男の子がいないわけではない。
たとえば、先週だってバイト先の社員さんとして働く先輩に誘われて、デートしたところだ。でも、不思議なことに、バイト中はかっこよくて好きかもしれないとおもっていたのに、相手からの好意を受け取ると急速に心が冷めていった。他にも、看護学生というところになんの夢を見られたのか、体の関係にすぐ持ち込まれそうになり、逃げてみたり、もっと運命的な出会いがいいと夢を見てみたり、そんなこんなことを繰り返した結果、「彼氏が欲しい!こんな青春は間違ってる!おかしい!」が口癖になっていった。こんな生活を送っているので、これ以上は反論できそうにない。
「でもさ、たしかにこれはキャンパスライフではないよね、、」
「そう、ないんだよ!!ない!!」
珍しく話に乗ってくれる結衣にまた、いつも通り昨日のデートについての話をはじめた。
でも、こんなに看護以外何もない私の生活に最近小さな変化が起きた。それは毎日の電車にいる彼である。さらさらの長い前髪から少し細めの目がのぞいていて、鼻筋は通っているように見えるがほとんどマスクでかくれている。服装は隣の駅にある高校の制服で、少し着崩されており絶妙な着こなしにまた心を惹かれた。極め付けは、1人の時は冷めた表情である。友人であろう男の子3人がいつも同じ駅から乗り合わせる。顔を合わせると、綻ぶ顔をみせるが、戯れている中でも、急に冷めた表情をみせる。その表情になぜか心を惹かれていた。もちろん話したことはない。高校生に話しかけるなんて、変なおばさんだと思われてしまうであろう。3年前まで高校生だったくせに急に年老いた気分になる今日この頃。月日が経つのはとてつもなく早い。とうぜんのことだけど、声もかけれず冷めた表情に触れることもできない。ただ、毎朝の小さな楽しい習慣だ、と勝手なモチベーション維持に彼を使っている。
そんな彼だったが近頃朝に会う回数がすくなくなった。そして気づけば部活動用であろう大きなカバンを持っている姿も見ることはなくなった。まだ夏になるには少し涼しくてでももう涼しくは戻れない5月の中旬。もう朝練もなくなって登校時間もはやくなって、私とはあえなくなってしまうのだろうと、容易に想像ができた。
その事実に寂しさを感じつつ、何故かわたしまで成長を感じていた。
生活のリズムの変化というのは、彼にもあるように私にもある。看護大学というのは、1年生は一般教養、2年生は医療・看護学、3年生は実習、4年生は卒論と国試対策というながれでカリキュラムが組まれている。もちろん全ての大学にあてはまるわけではないが、大体はどこもこの感じだ。
なので、わたしももう少しすれば実習が始まる。彼と出会える電車にはもうしばらく乗れなくなってしまう。これがもう2度と会えないかもしれない一目惚れというものなのだ。
一目惚れをした相手にもう一度会える可能性はほぼゼロだと何かで読んだことがあった。
私と彼は何度も会っているが、同じ時間、同じ場所、状況は全て同じ時に出逢え、どちらかのリズムが変われば会えなくなるそんな関係なのだ。だから、私はこれを一目惚れと捉えることにしている。そうすることで、運命的な出会い!という言葉を使いたいという乙女心というものである。
実習が始まるとやっぱり会うことは無くなって、過酷すぎる実習にへとへとになっていた。こうゆう時こそ、会いたくなるし、彼氏が欲しくなる。
そんな思いを心の片隅におきながらひたすら毎日の実習にとりくみ、無事4年生を迎えた。
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