第一章 保育部発足

第1話 部活勧誘


 それは、三加北高校に入学してすぐのことだった。


 学校説明のパンフレットに書かれてある文言通り、この学校にはどこにでもあるような部活から、一見何をしているのかわからない部活まである。

 そして部活として維持するには三名以上の部員が必要であり、特にマイナーな部活は新入部員の勧誘に力を注いでいた。


 入学直後は当然それが最も激しくなる時期であり、学校中のいたるところで勧誘が行われていた。サッカー部。科学部。ウエディングドレス部。風林火山部。カミソリシューティング部。ふむ……やっぱり意味が分からないものだらけだ。


 そんな中、僕は部活動紹介とかかれたやたら分厚い冊子を片手に持ち、自分に合う部活がないかと学内を歩き回っていた。


「そこの君!うちの部活に興味はないかい!?」


 さっそく声がかかる。

 なになに……熟女研究部!?


「すみません。僕はノーマルなので……」

「ちっ!紛らわしい顔しやがって!」


 どういうこと!?


「あの!私たちの部活はどうかな?」


 今度は……男装部!?


「いや、僕はもともと男なんですけど……」

「はぁ?だったらもっと男らしい顔しなさいよ」


 制服を見ればわかるだろ!

 というかなんで顔ばかりディスられているんだ!?


「あの、うちの……」

「いえ!結構です!」


 こんなところにいたら頭がおかしくなってしまう!

 僕は、逃げるようにその場を走り去った。


「はぁ……はぁ……ここまでくれば大丈夫かな」


 誰かに追いかけられているというわけでもないのに無駄に全力疾走した僕は、校舎裏の庭になっているところまでやって来ていた。


 三加北の部活勧誘、おそるべし。


 改めてどんな部活があるか冊子で確認しようと、ベンチに腰を掛けた。


「まあこれだけあれば、一つや二つくらいまともな部活も───痛っ!?」


 ベンチに体重を預けた瞬間。僕のおしりに、何かが突き刺さる感覚がした。

 慌てて何かを確認すると、そこには何やら小さな魔法少女のフィギュアが置いてあった。


「……なんで学校にこんなものが?」


 まさか、これも変な部活関係のものだろうか?

 なんだろう?魔法少女研究部とか?


「……ないなぁ」


 何かそれっぽい部活があれば届け出ようかと思ったが、冊子にはそれらしき部活は載っていない。

 仕方がないので落とし物として届け出すことにした僕は、そのフィギュアを鞄にしまって事務室に向かったのだった。

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