その呪い、添い遂げるまで

桐生細目

祝言

 物心ついた時から自由なんてものはなかった。

意外と思うかもしれないが、それを不自由と思ったことはない。それが当たり前だと思っていたからだ。それに、悪くないこともある。


 同級生たちは進路のことで愚痴をこぼしている。親にあぁしろこれになれ、将来のためだ。大変だとは思う。オレの場合は親にこの道を行けと言われれば断る言葉を口にしない。あぁ、わかったよと。


 ただし突然親の意見が変わるのは少し困る。同情はする。親もなにも自分たちの意見でそうしているわけではないんだからね。


「進路を変更してちょうだい。都内の高校よ」


 そう言われたのは中2の冬だ。勘弁してほしい。そこは結構な難問高なんだが。

 

 死に物狂いで勉強させられてその高校へ通うことになった。


 顔見知りは一人としていない学校に通うことになった。


 いや、一人だけ顔見知りはいた。


「あら、双葉くんじゃない? えっ、すっごい奇遇。もしかして、双葉くんもこの学校だったの?」


 彼女はなにかと周りに人を集める。今日もそうだった。彼女の周りには複数人の同学年の生徒が集まっている。


 まるで火の周りを飛び交う羽虫のようだ。



 北条鈴鳴すずなと一緒にいることをオレは求められている。

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