ホス×キャバ

環流 虹向

第1話

「お願いします!」


「んー…」


私は今どうしても働きたいと思っているキャバクラ面接に来ている。

何十店も受けたが全て落ちてあとここ街にはこの店しかなかった。


この店は男性、女性のキャストがどちらも健在している珍しいお店。

容姿端麗な人ばかり揃ってるのはわかってる。

だけどこの根暗な性格を無理にでも変えたいと思って動いてきた。


このお店がダメだったら私はまた元も生活に戻らないといけない。


「オーナー。ミサキちゃん辞めたらしいよ。ミイコが言ってた。」


イケメンの男性がオーナーに話しかける。


「えぇ…人員不足で困ってるんだけどな…。」


「その子入れちゃえばいいじゃん。」


「でも、微妙じゃない?話せるのかも怪しいし。」


「とりま、頭数だけ揃えれば?雑用させればいいじゃん。」


「あぁ、まあそうか。じゃあ合格で。来週からよろしく。このファイルに準備するもの書いてあるからちゃんと準備してきてね。」


「ありがとうございます!」


ひどい言われようではあったが無事合格出来た。

ミサキさんありがとう。



当日ドレスや髪の毛、メイクをセットしてもらって

フロアに入る。

面接でもここの部屋は見ていたがやはり本番の時間帯では煌びやかさが違う。


ブルーとバイオレットの照明がこの店の特徴。

薄暗い色味を使っているがそれを感じさせない。

それは壁が全て水槽になっているからかもしれない。


1人感動していると、お客さんがどんどん入ってくる。

男性も女性も年齢層も様々。不思議な光景だった。


「エミルちゃん!あそこの席行ってきて!」


とオーナーに言われ向かうが私の席はない。

私が挨拶してもみんな無視。


大丈夫。

私の好きな音楽のことにかすりさせすればなんでも話せる。


「失礼します。」


と言って端っこに1人椅子のないまましゃがむ。

その様子を見てもみんな無視だ。


まあ、私より美人な人がそっちにいるもんね。


なんとか話に混ぜてもらおうとするが

気持ちいいくらいスルーされる。

私がここにいて意味があるのか疑問に思ったが忘れることにした。


「そういえば…」


と言って隣に座ってるお客さんが大きめの封筒をカバンの中から出す。


その中身は楽譜だった。

曲名を見なくてもわかる。


「ジムノペディですか?」


「え?わかるの?」


やっとお客さんと目が合い会話ができた。

しばらくその楽譜のことについて話していると

その人のお連れの方に


「飲み物持ってきて。」


と言われてとりあえず席を立ち、BARカウンターに向かい

なんの飲み物にするか迷ったがとりあえず烏龍茶を入れることにした。


グラスを準備して氷を入れていると、

大声でこちらに向かって


「バーボン!」


とホストが叫ぶ。


私がBARカウンターにいたからあの人は注文しているのだろう。


私はとりあえずバーボンのロックを持っていこうとすると、

腕を掴まれ止められる。


面接の時のホストだ。


「それ、グラス違うから。」


と、取り上げられてBARカウンターに戻り

雑ではあったがその店での作り方を教えてくれた。


「ありがとうございます。」


と言ってできたバーボンを手に取ろうとすると、

そのホストが注文した人に持って行ってしまった。


私は自分が言われた飲み物を持っていこうと思い準備したグラスに烏龍茶を入れていると、

お客さんなのだうか?あるおじいさんが話しかけてきた。


「エメラルドブロッサムを作るんだろう?」


「?」


なんでそんなことを聞いてきたのか質問してみると、

私が注文を受けたお客さんはいつも3杯目でエメラルドブロッサムの注文するそう。

この店ではそれが知れ渡っているらしい。


おじいさんが作り方をメモしてくれて私に渡してくれた。


「ありがとうございます!」


「頑張れよ。」


と言ってどこかに行ってしまった。


私はそのメモに書いてある

エメラルドブロッサムに使う、

桜の奥義というお酒を探した。


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