第二十九話〜学園襲撃〜

∬副会長の部屋∬


錫城アンリ「生徒会と風紀委員会の合併—か」


あれから会計のハミルさんが、あそこにいた皆を含め

上位メンバーに合併の件を説明していた

書記は不在だったけど、庶務とRS達は全員が納得してくれた


アンリ「——考えた事もなかったな…レイジ会長かぁ」


ツヴァイ「惚れたッスか?」


アンリ「ッ⁉︎い、い、いつから…?」


見ると、男は机に腰を掛けていた


ツヴァイ「ちょうど今かな?」


アンリ「私に聞かれても…あの、庶務がこんな所に何の用事でしょうか?」


ツヴァイ「—男が女の部屋へ来るのに、用事なんて必要ッスか?」


アンリ「からかわないで下さい」


ツヴァイ「—ふむ、あれだ—最近生徒会で、色々と変化あったらしいじゃん?

執行部解体に人事異動——新しい顔ぶれを書類じゃなくて

実際に見てみよう!と思っただけッス」


アンリ「執行部…そういえば、KやGは今頃—」


——瞬間、男の顔が目と鼻の先にあった


アンリ「ひッ⁉︎」


咄嗟に離れようとしたが、胸元にあるネクタイを引っ張られ

強引に引き寄せられた


ツヴァイ「—よく見ればお前、可愛いな」


アンリ「…は、はい?」


この男は一体、いきなり何をおっしゃっているのでしょうか?


ツヴァイ「本当はユズリハ狙いだったんだけどさ—

首席総長になって、俺より立場が上になっちゃったんスよねぇ」


アンリ「……」


ツヴァイ「彼女、いつも異性を寄せ付けない鉄壁オーラ?

みたいなの出しちゃっててさ——ど〜も男に興味がないっぽいんだよなぁ」


アンリ「何が言いたいのか分かりかねます」


——唇と唇が触れる距離までお互いが接近する


ツヴァイ「錫城攻略宣言—しちゃおっかな」


更に、私を引き寄せる男の手に力が込められる


アンリ「……だめ」


これ以上近づくと、もう唇が——


ツヴァイ「堕ち—」


アンリ「嫌ッ‼︎」


気が付けば私は、庶務を突き飛ばしていた


ツヴァイ「おっと—」


あ…やってしまった…就任初日に、生徒会最上位メンバーへの暴力…

副会長の席が…


ツヴァイ「キミ、最高ッス」


アンリ「…へ?」


ツヴァイ「ここで堕ちるようじゃ、俺の見込み違い

全くもって攻略のしがいがないッスからね」


アンリ「あの…(変態…さん?)」


ツヴァイ「これからも拒否権行使し続けてね〜

——その上で、キミを堕とすから」


…去って行ってしまわれた


アンリ「——はぁっ」


男の子に、あんな近くで話されたの初めてだ


アンリ(庶務……残念な子だったなぁ)



—教官ルーム—


教官「五十嵐君?さぁ…今新入生担当の者が欠席中でね——ところで君

見かけない服装だけど—本当にうちの学生だよね?」


ネージュ「政府直轄の暗殺組織集団:粛正者ジェネラル

JJ6が一人、ナイト・ブラッディ・ネージュ」


教官の首から上が無くなった

——辺りが静まり返る


女教官「……え?——ぎゃあああああッッ‼︎」


悲鳴が響き渡り、他の教官達にも連鎖していく


——その瞬間、女が眼を見開く


教官達「ぁ…、ぁ—」


同じ空間内にいた全員が、女が放つ威圧だけで動けなくなった


ネージュ「五十嵐という名の生徒を調べろ」


配下「御心のままに、ネージュ様」


異変を察知したのか、風紀委員GMが部屋に入ってきた


GM「——そこにいる四人!その服装は学園内での着用基準を

大幅に逸脱している!どこのクラスだ!」


配下「やはり—学園と同じ制服に偽装しておくべきでしたね」


GM「—ここの学園じゃない…?説明を求める!今すぐに!」


ネージュ「—断る、と言ったら?」


GM「拘束し、強制連行する!」


ネージュ「それは、誰に向かってほざいているのかしら—虫ケラども」



—学園内通路—


シズルギ「生徒会との合併を本格的に進める為に、遊撃のGM達に招集指示を—」


《警告・緊急事態発生、1階教官ルームにて暴動が発生しました。

Bクラス以下の生徒は風紀委員の指示に従い、隔離障壁まで退避して下さい。

風紀委員に通達、直ちに現場へ急行し暴動を鎮圧せよ》


シズルギ「暴動⁉︎」


すぐさま耳元に手を当て、風紀委員の司令部からのコンタクトを受ける


シズルギ📱「状況は?」


📲「副委員長!モニターで確認する限り、暴動は起こっていません!ただ…

突然GM達の首が見えなくなる映像が—これは一体…」


シズルギ📱「侵入の形跡は?」


📲「現時点で、学園内への部外者の立ち入りは確認されていません!

教官ルームにも映し出されているのは、教官とGMだけ—」


——音信が途絶えた


シズルギ「どうした?…応答せよ!司令部ッ」


GM「副委員長!学生からの通報なのですが…学園付近で

首が突然消えたのを目撃したと言っている生徒がいます…」


シズルギ「くッ…嫌な予感がする…TS戦術チームと連携して現場へ向かい、

部外者がいた場合は即時拘束、抵抗すれば武力行使も許可する」


GM「了解ッ‼︎」


シズルギ「—まさか、学園トップの不在を狙った犯行…?

首が自然に消えるって一体…」


状況把握のために司令部へ向かった



∬生徒会副会長室∬


SV「錫城副会長」


アンリ「わかっています、5人を1チームとし3チームを派遣

GM達と連携して場を収拾しなさい」


SV「…はい?」


合併の件は現時点では、全ての風紀委員メンバーには通知されていない

知らないメンバー達にしてみれば、それは有り得ない指示である

この二大組織は対立はあっても、協力することなど

学園創立以来初めてであり、前代未聞のことだった


アンリ「彼等は仲間よ——今は私の言葉を信じて欲しい

繰り返します、GM達と共に暴動を鎮圧しなさい」


SV「——了解ッ!」


∬司令部∬


シズルギ「なぜ音信が—」


そこは一言で例えるなら、灰の山だった


シズルギ(通信の故障は、この灰が機材に積もったからか…?

だがそもそもなぜこんな事に…?)


灰に触ろうと腰を屈めた刹那——頭上に風を切る僅かな音と振動が伝わる


シズルギ「ッ⁉︎」


反射的に護身杭で投擲とうてきを放つ


杭の軌道が、とある空間地点で変えられた—


シズルギ「そこッ‼︎“射刺しの天平針ハクビスライン”」


§ハクビスライン§

ランクC +++【擬似投擲系列】

魔術の力で術主が指定する物体を高速投擲する

会得すれば速度上昇と、同時に投擲できる数が増える


——魔術を付与した複数の強化杭もまた霧散した


シズルギ(何か…いる)


配下「—闇討ちの初撃を躱せたのは、ここに来て貴様が一人目だ」


背景が視界屈折したその空間から、黒衣に身を包んだ何者かが姿を現した


咄嗟に司令部内を監視するモニターに目がいく——


そこには、私一人しか映し出されていなかった


シズルギ(肉眼では見えている…だがモニターでは見えないって…何なのよ…)

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