第十七話〜オレの女〜
—リサ—
物体解析プログラム
主に魔術石解析に用いられる初期版
魔術が世に普及してくからは殆ど使われなくなった
レイジ「…これは—暗号文字じゃない……ただの古い文字だ」
——リサの解析が終える
ハミル「これは…」
リサ『解析結果〈闇・支配・世・放・死・主〉——解析完了』
レイジ「……五十嵐の体内から出た蠢くモノ
数値が急降下し、この文字が示された——まるでリンクが切れたように」
ハミル「なんだか嫌な予感がするね」
血液から溢れ出した蠢くモノは、
五十嵐の遺体が、目視で確認できない程広がっていた
レイジ「……既に
15分前に数値が急に下がったのは——奴が他のと契約したから……?」
∬中央医学魔術病院∬
—入り口前—
📲「ハミルだよ、状況は変わりないかな?」
RS📱「はい、現段階では何も問題はありません」
📲「そうか—いいかい?今から言うことは確定事項じゃないよ
——先程捕らえた、五十嵐より溢れでた蠢くモノは
冥府契約のリンクが切られている可能性がある
意図的に切れたかは現段階では判断できない、けど—
胸騒ぎがする——十分に警戒するんだ、いいね?」
RS📱「勿論です」
📲「あれでも奴は、政府の粛正者の一人……遺体は確認してるけど—
正直、これで全てが解決したとは思えないんだ」
—手術室—
執刀医「この傷口…何か違和感があるな」
診療放射線技師「何だ…これは…まるで脳が重なっているような—」
執刀医「…—違う、これは傷なんかじゃない…これは—」
助手「—へ?」
執刀医の首が不意に、床へ転がり落ちた
——時が止まったかのように、辺りが凍りつく
助手「せん、せ—?」
副会長の患部から伸びた黒い鋭利な物体が、刹那の動作を行った——
ルーク「心配するな、動かなければ今は崩壊しないだろうよ」
傷口かと思われた箇所から、声の主が現界した
——そして、そこにいた全員が、何らかの動作をとろうとした瞬間
肉体が均等な大きさの肉片となり、粉々に床へ散らばった
ルーク「全く、喋っても動くだろうがよ…まぁ既に、
お前らは生きた死体だったんだけどな」
レツィア「—ん」
気配を感じたのか、眠り姫が目を醒ましたようだ
ルーク「おはよう」
——そのまま口づけをした
レツィア「っ⁉︎」
反射的に繰り出された神速の平手打ちは、手首を持たれることで止められた
ルーク「…ッ」
男は咄嗟に離れ、自身の口を手の甲で覆った
レツィア「—ペッ」
女が口から血を吐き捨てた、しかしこれは女の血ではない
ルーク「この女…」
男の唇と舌から血が滴り落ちていた——そして、男の目を
軽蔑の眼差しを向けながらもう一度、血混じりの唾を床に吐いた
ルーク「おいおい…そりゃひでぇぞお前…」
——しかし女は一切喋ろうとはしない
ルーク「そんなにキスが嫌だったのか?」
女は、はだけていた下着を隠し
生徒会の黒い特殊上着を無言で羽織った——しかし正面のボタンは止めずに—
ルーク「誘ってんのか—全く、ジェネラル相手に
これ程肝が据わった奴はそうはいねぇ—流石はオレのモノとなる女だ」
軽蔑の睨みのまま、男の眼を逸らす気配がない
ルーク「安心しろ、Kから殺せと頼まれていたが—…」
——ふと何気なく自身の頬を触ると、手が赤に染まっていた
ルーク(…さっきの噛まれた時のか…?いや—だがそんな…)
視線を手から戻した瞬間、女の変化に気付く——
ルーク「——何だよそれ」
綺麗な黒髪のロングヘアに青い眼の色だった筈が、今の女は
髪の毛と眼の色が、ルビーのように紅く変化していた
レツィア「——手加減、できそうにないよ」
ルーク「は?何をほざいて—」
見ると地に足が付いていなかった
どうやら桁外れの速度で宙を飛んでるらしい
そして、壁に激突するまでの刹那の間に女を見たが
全くその場から動いた様子がなかった
ルーク「ふがぁァッッッ⁉︎」
壁を突き破り、風紀委員長がいる第二手術室の奥の壁までぶっ飛んだ
クロサキ「え⁉︎なに⁉︎」
爆音を聞きつけたのか、RS達が一斉に手術室へ強行突破してきた
RS「サブマスター⁉︎…そんなまさかッ、奴は既にこの中にいたのかッ」
わたしの周囲を囲うように、親衛将校たちが集結する
RS「これは私共の失態です、想定外を見落とすとは—」
レツィア「手を出すな——わたしがやる」
RS「なりません、これは私共の責務です」
レツィア「副会長命令よ、わたしがヤる」
RS「私共は、マスターである生徒会長の指示で動いております—従えません」
しかし彼女は、彼等の囲いを抜けようとする
RS「副会長ッ—!」
男に近づこうとする彼女を、止めようとした手が誰かに掴まれた
レイジ「やらせてやれ——俺達に止める権利はない
それに、こうなった彼女は歯止めが効かない」
——手術室に感じたことのない殺気が充満する
RS「副…会長…?」
レイジ「ちょうどいい機会だ、お前らもその眼で直接見ておくといい
——“真のランクS”の力を」
彼女はゆっくりと粛正者のいる部屋へと歩む
—第二手術室—
ルーク「…ったく、やってくれたな——
大人しくオレの女になっていれば良かったものを……」
男が認識不可色の剣を握る
ルーク「ジェネラルには、絶対的な掟が存在する—それは
目撃者は、一人残らず、全抹消だッ‼︎」
黒い陽炎となり、瞬間的に女の間合いへ入り込んだ
クロサキ「副会長ッ‼︎」
死角から放たれた暴虐な一撃が、女に当たる手前で停止していた
ルーク「——なに?」
RS「受け…止めた」
認識不可色の剣先を握っているその手は、全くの無傷だった
レツィア「なにを驚いているの——五十嵐くん」
ルーク「なぜ…止められている…?魔術は効かない筈—」
オレの心底をが見透かされている感覚——
レツィア「だって魔術じゃないし—ねぇ、上級戦術って知らないの?
素手で簡単に命を奪えちゃうんだよ」
ルーク「ぬぐッ⁉︎」
——瞬間、剣が垂直落下し、剣先が床へ叩きつけられた
そして気づいた時には、女の拳がオレの目と鼻の先だった
レツィア「“無双臥破”」
∬無双臥破∬
速度の概念を超えた速さで片膝を上げ、臨界空気球を生成し
もう片方の脚で踏み込み、両手で空気球を撃ち出す武術
動作を目視してからの回避、及び防御は不可能
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