09話.[せめて最後まで]
「未依さん……」
結構な重さを感じて目を開けたら彼女が乗っていた。
「重い」
「ひ、酷いよっ」
「いや、人が寝てるときに邪魔するのはやめた方がいいよ」
そうか、今日は母も休みだから入れたのか。
合鍵を渡しているわけではないからそれしか考えられない。
「それで? こんな早くからどうしたの?」
家事をやらなくてもいいという楽さ。
普段はやらなければやらないほど、後の自分が困ることになるので頑張るしかなかった。
ひとり暮らしをしている人はすごいよ、私はずっとこの家にいたいよ。
「早くからって言うけどさ、もう10時だよ?」
「あ、ほんとだ、あはは、起こしてくれてありがと」
「未依さん、もう1回……」
「せめて歯を磨いてからじゃないと、臭いとか言われても嫌だし」
一応気をつけているけど朝は菌がいっぱいとか言うから乙女としてできるわけがない。
歯を磨いて部屋に戻ろうとしたらそこで彼女の方から奪ってきた。
「ふぅ、奏海は肉食系だね」
「だって、好きなんだもん……」
「責めてるわけじゃないよ」
そのタイミングで母もやって来てさすがにふたりで慌てたよね。
で、さすが母というか、ご自由にどうぞと言って出ていくという意地悪なことをしてくれた。
付き合っていることは言ってあるからわかっているんだろうなあ。
「澄子さんも許可をくれたことだし、もう1回……」
「いいよ、おい――」
せめて最後まで言わせてほしかったが我慢。
まあ、学校では真面目に勉強をやっているから大丈夫だろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます