09話.[せめて最後まで]

「未依さん……」


 結構な重さを感じて目を開けたら彼女が乗っていた。


「重い」

「ひ、酷いよっ」

「いや、人が寝てるときに邪魔するのはやめた方がいいよ」


 そうか、今日は母も休みだから入れたのか。

 合鍵を渡しているわけではないからそれしか考えられない。


「それで? こんな早くからどうしたの?」


 家事をやらなくてもいいという楽さ。

 普段はやらなければやらないほど、後の自分が困ることになるので頑張るしかなかった。

 ひとり暮らしをしている人はすごいよ、私はずっとこの家にいたいよ。


「早くからって言うけどさ、もう10時だよ?」

「あ、ほんとだ、あはは、起こしてくれてありがと」

「未依さん、もう1回……」

「せめて歯を磨いてからじゃないと、臭いとか言われても嫌だし」


 一応気をつけているけど朝は菌がいっぱいとか言うから乙女としてできるわけがない。

 歯を磨いて部屋に戻ろうとしたらそこで彼女の方から奪ってきた。


「ふぅ、奏海は肉食系だね」

「だって、好きなんだもん……」

「責めてるわけじゃないよ」


 そのタイミングで母もやって来てさすがにふたりで慌てたよね。

 で、さすが母というか、ご自由にどうぞと言って出ていくという意地悪なことをしてくれた。

 付き合っていることは言ってあるからわかっているんだろうなあ。


「澄子さんも許可をくれたことだし、もう1回……」

「いいよ、おい――」


 せめて最後まで言わせてほしかったが我慢。

 まあ、学校では真面目に勉強をやっているから大丈夫だろう。

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