マイルドな味付け

春嵐

第1話

 彼女の指が、キッチンを走る。白く、細く、そしてしっかりした動き。


「んむ」


 見とれていたら、きゅうりが飛んでくる。口でキャッチ。


「味付け、どう?」


「マイルドです」


「ならいいです」


 彼女。キュウリをいったん胸に挟んで、別なものを切りはじめる。


「あの。胸」


「きたなくないよ?」


「いや、そうじゃなくて」


「ん?」


「いや、なんでもないです」


 胸をポケット代わりに使っている。大きさを武器にしているのか。なんか、小さめのタオルみたいなものを巻いているらしい。きゅうりは、その間に見事にマウントされてる。


「もう少しで、できるからね。待っててね」


「うん」


 眠くなってきた。

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