青髪とか

 漫画、アニメ、ゲームなどで見られる青い髪や緑の髪。

 言うまでもなく、ヒトの色素としては実在しません。

 それでも創作物では当たり前のように用いられている配色であり、実際に我々も違和感なく受け入れています。

 古くはギリシャ神話の神々を描いた絵画や仏像の髪でさえ青く塗られていたと言いますから、存外根深い歴史がありそうです。

(仏像の場合、仏様の身体は人間離れしている点がいくつも存在し、そのうちの一つとして青髪があります)

 反面、現実で髪を青く染めている人は稀に居り、それを目にしてぎょっとなったり二度見した経験は誰しもあると思います。

 青髪とは、やはり神や仏と言った超越存在を表現するにあたり、目を引く表現として生まれたのでは無いかと思います。

 また、設定上は黒髪だが、絵にした時の配色は青 色に描かれているパターンも古くから多くあります。

 これはテレビやコミックなど、人目を引く必要があるメディアにおける戦略から来ているのでしょう。

 他のメディアは目で見せるのに対し、小説は読む人のイメージに依存すると言う差違があります。

 あり得ない事だからこそ、創作物では見栄えが良く、現実でやると違和感を覚える。この図式は、小説を書く上での典型的な罠になり得ると思います。

 

 アニメやゲームを意識したライトノベル系の作品でも、人物の描写を実写ベースとするか、アニメベースとするかには違いがあると思います。

 例え狙ってアニメ調の描写をするとしても、アニメ要素をそのまま切り貼りする事が最適解とは思えません。

 アニメ絵を描くにしても、実写のそれを熟知しておいて損は無いとも思います。その上で、先の仏像の例にあるような「アニメ絵ならではの表現」に寄せる。

 勿論、青髪や緑髪に必ずしもそこまでの背景は要らないかも知れませんが、髪の色一つとっても、その表現に自覚があるのか無いかでは描写の質に差が出るものです。

 非常に個人的な感性に過ぎない事を先に断っておきますが、青髪・赤髪の中でも水色やオレンジ色のような明るい色を説明もなく使われていると、特にアニメ絵への憧れが先行しているのでは? と考えてしまいます。

 ストロベリーブロンドやプラチナブロンドなど、現実にある言葉を当てはめてあると、リアルに寄せようとしている意図が感じられる気がします。

 

 似たような事が瞳の色にも言えます。

 瞳の色……つまりヒトの虹彩の色も、実際の種類は限られてきます。

 ブラウン、青色、琥珀色、ヘーゼル、グレー、緑色。

 更にブラウンの中でもアジア系やアフリカ系の人には暗いブラウンが多いと言います。これは“黒”と表現してしまって差し支え無いでしょう。

 更に特定の条件下において赤色や赤紫(バイオレット)も存在します。

 これらは瞳の色素と言うよりは、重度のアルビノ等によって「色素が極端に乏しい=血の色が見えている」状態です。

 その為、厳密に赤一色の瞳にはならず、元々ある僅かな色素と混ざりあった感じになるようです。

 これも、照明やフラッシュ撮影と言った光源があって起こるそうです。

 また、何気に注目すべきは緑色が意外と自然に存在すると言う事です。北欧やアイスランド等の寒いイメージがある地域で特に多いらしいので、大手を振って「何となく」使える色なのかも知れません。それも変な話ですが。

 

 また私の過去作での話になりますが、これらヒトの虹彩についての事実を踏まえて、紫色の瞳をした人物をわざと作った事があります。

 先に述べた、色素の薄さや光源と言う条件が揃った結果の色ではなく「元々の色素が紫と言う医学的にあり得ない色」と明記しました。

 これもご多分に漏れず主役級の人物に付与した特性なのですが、正体不明の彼女を何となく「常人と違う場所、環境下からやって来た人」と暗示しています。

 そんなわけで、髪にしろ瞳にしろ、現実に無い色を付けると言う事には記号的な表現が発生するのです。

 

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