ハズレスキル≪ためる≫しか使えん奴などいらん! 初日で魔法学校を退学にされたけど……知らないの? 魔力をためて、ためて、ためれば、八倍の威力でドラゴンも一撃で倒せるんだけど。……あ、もう遅いからね?
向原 行人
第1話 ハズレスキルと言われる理不尽な追放
「何だと!? ライリー=デービス! 貴様、ハズレスキルである≪ためる≫しか使えない!? そんな奴はいらん! 今すぐ学校から出て行け!」
魔法学校の入学式が終わり、今日から立派な魔道士となる為に勉強するんだ!
そう意気込んでいたのに、クラスで最初のイベントである自己紹介を行った直後、担任のメイソン先生から出て行けと言われてしまった。
「あの、お言葉ですが、≪ためる≫が何故ハズレスキルなのですか?」
「何を言っているんだ!? そのスキルは、魔法の発動に使用する魔力を溜め、二回分の威力を一度で出すというスキルだろ!?」
「そうですけど?」
「つまり、魔力を溜めている間は隙だらけで、すぐに攻撃出来ない。相手に先制攻撃されて終わりではないか」
いや、別に敵が出てから溜める必要は無いし、俺は剣も使えるから隙だらけって訳ではないんだけど。
「そんなゴミスキルに比べたら、一回分の攻撃で倒す為の≪魔法攻撃上昇≫スキルや、複数回攻撃する為の≪魔力消費低減≫スキルの方が余程マシだ!」
「ですが……」
「うるさい、口答えするな! とにかく、貴様は退学処分だ! この魔法学校は、無能に用は無い! 今すぐ荷物を纏めて出て行け! ……まったく、入試担当者は何を考えているんだ!」
メイソン先生に教室から無理矢理追い出され、鍵まで掛けられてしまった。
マジかよ……とりあえず、他の先生に相談しようと思って教員室へ行くと、
「あ、君がライリー君だね? メイソン先生から聞いて居るよ。なんでも、ハズレスキルの≪ためる≫しか使えないんだってね」
入ってすぐの所で、見知らぬ先生が立ちふさがる。
「あの、≪ためる≫はハズレスキルなんかでは無くて……」
「残念だね。スキルを授かれるのは一生に一度だけ。今後、新たなスキルを授かる事は無いし、この学校で……というか、魔道士になるのは難しいと思うから、頑張って別の道を探してね」
「いや、だから……」
「今、寮の君の部屋から荷物を引き上げさせているから。校門の前で待っていてくれるかな。じゃあね」
メイソン先生と同じく、俺の話を一切聞かないで、教員室から押し出し、また鍵を掛けられた。
分かった! この学校の教員は話を聞かないバカばっかりなんだ!
こんな所で学ぶ事なんて、たかが知れているし俺の方から出て行ってやるよ!
俺が授かった≪ためる≫スキルは、魔力を溜める事で、次に使う魔法を二倍の効果にする強力なスキルで、連続して使えば四倍、八倍と増えていき、魔法防御の高いドラゴンでも一撃で倒せるのに。
とりあえず、荷物を受け取る為に校門へ行くと、
「お! 君が噂のライリー君だね? いやー、オジサン長年この学校に勤めているけど、入学初日に退学となった生徒は君が初めてだよ」
俺の鞄を持ったオジサンが現れた。
余計なお世話だよっ!
「君の担任がメイソン先生だというのは、運が悪かったね。あの人、声がデカい上に、学年主任だから反論出来る人が少なくてね……と、それより、これを」
「……何ですか、これ?」
「いやー、流石にいきなり退学だ! って言って、追い出すっていうの酷い話だからさ。オジサンの知り合いの知り合い……まぁ直接会った事は無いんだけど、個人で魔道士を育てている人が住んで居るっていう噂の場所の地図だよ」
「個人で……って、噂なんですか!? 実態は!?」
「そこまでは知らないけど、この学校の成績優秀者が学費を免除されるのと同じで、その人も才能がある子は無償で面倒を見てくれるらしいよ」
えぇ……胡散くさ過ぎるんだけど。
とりあえず、この学校にこれ以上居たくないので、荷物を受け取り、その場を去る事にした。
「今年は、入試で過去最高威力の攻撃魔法を放った生徒が居た当たり年だというのに、一方では残念な生徒も居るものだ……」
オジサン。その最高威力の攻撃魔法を放ったのって、たぶん俺の事だよ?
入試の時に居た人が、その場で学費免除って言っていたし。
背後から聞こえた呟きに、学内で情報共有くらいしろよと心の中でツッコミつつ、東へ行ってみる事にした。
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