まるで、童謡の世界?
ある日、森の中‥
日本でのおはなし。0
「あああ〜〜っ!?」
何度目覚ましを確認したところで変わらない。 長針は予定時間を一時間三十分もオーバーしていて、それを追い越し、追い駆け、今も眼の前で秒針が忙しなく回り続けている。 あ、三十一分になった。
「嘘でしょ?! 何でこんな日に寄りによって!!」
叫んでみたところで現実は覆らない。 ――えええ、お姉ちゃん今日は夜勤明けだっけ。 バイクで送ってもらうのは無理かぁ〜。 お父さんは出張中だし、今ここでお母さんが生きてたらって言うのは高望みだよねぇ、何せただの寝坊だし。
取り留めもなく考えつつ超速で本日最後となる学生服に着替えていく。 部屋の中があちこちグチャグチャになっていくが、片付けは全部帰ってからだ。 朝食は諦めて歯を磨き、顔を洗って申し訳程度に髪を梳かして、あとは……
チーン
「お母さん、行ってきます」
仏壇に手を合わせた私は勢い良く家から飛び出した。 一応、三年間を陸上部のレギュラー部員として過ごしてきたので、走るのは得意だという自負がある。 ――急げば一本遅れの十八分発の電車に間に合うよね。
人通りの少ない道なので全力疾走しながらスマホ片手に、乗り換え検索して到着時間を確かめる。 続けて、途中で待ち合わせしていた友人たちにメッセージを飛ばす。
『ねぼうした さきいって』
最早変換すら惜しい。 これでよしっと顔を上げた。 近道だけど、普段は何となく避けている石積みの、狭くて長い下り階段がそろそろ目前に
「えっ?」
何か貼り紙された真っ赤なパイロンが視界に入る。 止まれない。 階段の入口を塞ぐように置かれたそれを、咄嗟に避けようと身体が無意識の内にハードルの要領でそれを跳び越し、一歩、そして勢いのまま反射で出したもう一歩の行く先の段が崩れ落ちている。
――そういえば少し前に大きな地震があったっけ、と呑気な事を頭の片隅に考え、あ、死ぬな。 ‥と直感した。
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