9-9 殺害リスト入り

———楓花の部屋、夜中



 楓花の部屋にかぐやが訪れる。


「楓花よ。どうも楓花の家の食事は余の口に合わぬ。料理人に和の食事のみを余に用意するように伝えて欲しいのじゃ」


「あ、うん。かぐやさん、そういう風に速水はやみさんに伝えておくよ」



 カタッ



 急な物音に刀の鍔に指をかけるかぐや。独特な強力な殺気を感じとり、物音の主が声を上げる。


「あわわ。かぐや様、私です。リリアーヌです!」


「なんじゃ。リリアーヌ、其方いつからここにおるのじゃ?」


(相変わらず、気配ひとつしなんだ。リリアーヌ、やはり末恐ろしい娘よの……)


「今日、今日の夕方からです。私の家がされたので……」


「ほう。ならば、ここにはもう5人の将軍が揃ったと。まあ、良い。”堕天使”ごとき余の力だけでも十分じゃがの。楓花、先程の件は頼んだぞよ」


 それだけ言い残し楓花の部屋を去るかぐや。ふーっと、大きなため息をつくリリアーヌ。楓花の部屋で本当に置物のように静かにしているリリアーヌではあるが、これでも将軍。何かあれば神と崇める楓花の事を、身をていして守るはするだろう。


 楓花の部屋に日替わりで泊まりに来ていたクロエもソフィアも、リリアーヌが楓花の部屋にいるためクロエの部屋で元の生活を送っている。



 またオタ話を再開する2人。2人とも背丈、声質ともに本当にそっくりだ。





———とある屋敷



「”悪魔”が全滅したって、どーいう事よ? ムルムルくーん」


 赤髪のミディアムヘアの少年が乱暴にソファからテーブルに足を投げ出し、土下座している青年にそう尋ねる。


「も、申し訳ございません。”夜叉姫”の出現が予想外で……」


「”夜叉姫”。ああ、あの女。あれは、お前のの”悪魔”たちでは、まったく手には負えないねー」


「最後まで残ったメドゥーサに関しましては、俺の方から力をかなり分け与えたのですが……。どうやら、”神王の娘”まで出現しまして」


 赤髪の少年は乱暴にテーブルを蹴り飛ばす。蹴り飛ばされたテーブルは少年の足が当たると同時に螺旋状に粉々に壊れる。


「ふーん。あっちはあっちで、俺たちの動きに気付いている訳ねー。流石に、俺たちと同等の力を神たちをには誤魔化せないねー」


「はっ。ですが、我々と違って将軍たちをこちらの世界に転移させている辺り、神本体はこちらの世界には来れないものかと……」


 赤髪の少年は次にムルムルと言われる青年を殴りつけた。赤髪の少年の拳から放たれた消える事の無い黒炎にまみれ、その場でのたうち回るムルムルと言われる青年。


「分かっている事を、いちいち説明させるのってムカつくんだわー。お前、俺が直々に殺してもいいんだぞ?」


「も、申し訳ございません! 鳳来様! この火を、この火をどうか消してください!」


 赤髪の少年が指パッチンをすると、青年を纏っていた黒炎は消える。

 トパーズのような輝きを邪悪に放つ黄色の瞳を持つ少年は、ムルムルと呼ばれる青年の髪を掴みながら無理難題を突き付ける。


「”堕天使”のお前なら、将軍の1人や2人……。いや3人くらいまでなら殺せるよな? すぐに消してこい。これ、の命令ねー」


「はぁはぁ。はい、お任せ下さい」


 そう言うと青年は姿を消した。

 少年が姿を消すと共に、1人の少年が姿を現す。

 以前、屋上で鳳来に話かけていた少年だ。


「鳳来様。アレにそのような事が可能なのでしょうか?」


「はははっ。無理に決まっているでしょ? 目的を果たしてくるような奴だとも? 目的完遂のため、いまは天女の世代が邪魔な訳。だからさ、天女の世代を殺すのが最優先で。うーん、アイツに殺せても……そうだな。1人くらい? でもさー……」



 赤髪の少年の瞳の輝きが増す。


「あの”豊穣の女神”と”夜叉姫”だけは、俺が直々に殺しに行くよ」



———







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る