8-11 圧倒的力の差
「オラー!!
奥義による神速の突きの連打をかぐやに浴びせまくるクロエ。
流石のかぐやも何らかのアクションはするはずだ。
クロエの顔に紫煙が当たる。
クロエはかぐやの様子を見て、唖然とする。
すべての剣による突きが、かぐやの持つ赤色の装飾がされた
「其方は余を舐めているのかえ?」
煙管で顔を殴られるクロエ。煙管で殴られたとは思えない威力で、クロエの体は吹き飛ばされる。
煙管で煙を吸い、翼を折りたたみ羽織りにしているかぐや。最早、クロエ相手にでも本気を出すつもりもないのだろう。
クロエが吹き飛ばされた先で目を開ける頃には、かぐやの羽織りの雛菊の紋章が目の前まで迫ってきている。
また頭蓋骨が割れるような振動がする。煙管で頭を強打されたのだろう。かぐやの刀で斬られたのなら、これくらいでは済まない。
『マズい。マズいマズい。コイツはマジで強すぎですわ。弱点も性格の悪さ以外には見当たらないし……』
一面、大穴と切断面だらけで最初の地形を保っていない北の大地。もう、この土地に住める者はいないくらいの悲惨さだった。
また、煙草の紫煙がクロエの全身に吹きかけられる。
「もう分かったじゃろう。覚悟しなんし。以前のクロエのトリガーは姉じゃった。いまのトリガーはなんじゃ? どちらにせよ、トリガーを自由に扱えん其方には、余に勝ち目はないがのぉ」
「そ、そんなものありませんわ……」
「じゃあ、終いじゃ。覚悟しなんし」
そう言い終わると、かぐやは煙管を着物に仕舞い刀を抜こうとする。
『コイツなら、私の本気でも死にませんわ』
「さらばじゃ。クロエ……」
「
クロエの青色のサファイアのような瞳が輝き始める。そして凄まじい速さの剣での連撃。
剣の速さと威力で言うと、クロエの覚醒時と変わらぬ速さと威力だがクロエ自身でも剣をコントロールする事が出来ず、相手が息を引き取った後も無惨にも攻撃を止めることが出来ないためクロエはこの技を嫌い封印していた。
流石のかぐやも、ようやく刀でその連撃に応戦する。
「ほう。クロエがその技を出すとは余程、死ねない理由でもあるのかえ?」
クロエ自身、意識はあるのでかぐやの言葉には反応するが、体のリミッターが外れたようにクロエの体はかぐやをミンチにするまで止まらない。
「そうですわ! 私は絶対にいまは死ねませんの! かぐやが本気で私を殺しに来ているのなら、代わりにかぐやが死にますの!」
かぐや自身も流石にクロエの連撃を刀でいなすのに忙しいのか、クロエにカウンターを仕掛けて来ない。だが、かぐやの表情にはまだまだ余裕がありそうだ。
「仕方ないの……。余も少しだけ力を出すかの」
かぐやはその場で両足に力を込めて、大地を踏み倒した。すると大地は地鳴りを始め、大きく陥没し始める。穴は巨大で深く、底には溶岩が見える。
かぐやは翼を広げて飛び立ち、穴に落ちかけたクロエは咄嗟に
「クロエ。其方はいつからモグラになったのじゃ?」
「う、うるさいですの! かぐやは飛べるからって、空に逃げるとは卑怯ですの!」
かぐやはクロエの”卑怯”という言葉にピクッと反応し、すぐに地上に降り立ち翼を折りたたみ羽織りにする。
「卑怯? 其方の口からその言葉は聞きたくないぞよ……」
かぐやはそれだけ言うと、居合切りで刀を鞘からクロエめがけて抜く。
一瞬の出来事で何があったのかクロエは分からなかったが、背後の山の中腹部分がボコンッという音を立てて、山が一刀両断される。
クロエも一刀両断とまではいかなかったが、胸元あたりに横に大きく斬撃の傷ができる。白銀のプレートアーマーが無惨にも胸元の部分で斬り落とされる。
「ほう。その鎧はエレーヌの手掛けたモノじゃな。強度は申し分ないようじゃ。余の斬撃を受けても生身の体が両断されんとは……。流石、国一番の鍛冶職人エレーヌじゃ」
クロエはその場に倒れ込む。かぐやの言う通りエレーヌの手掛けた白銀のプレートアーマーのおかげで、体の一刀両断は免れたが受けた傷は大きい。
うつぶせで先程の斬撃で肺をやられたのか、ヒューヒューと力なく呼吸をするクロエの首筋に冷たい感触がする。かぐやが刀の切っ先をクロエのうなじ辺りに当てている。かぐやの目はオッドアイで、ルビーのような赤色の右目の瞳とコハクのような黄色の左目の瞳、両方の輝きが増していく。
「クロエ。最後に言い残すことはあるかえ?」
「ヒューヒュー。この……クソ極悪女……が」
「……さらばじゃ。クロエ」
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