5-5 古参は最恐
———クロエが乗り込んでくる数分前
楓花とエマの周りには50人程のガラの悪い男達。
楓花とエマは鉄柱に、頑丈な縄でガチガチに縛り付けられている。
楓花は涙を流しながら、体を小刻みに震わせ怯え切っている。
エマは……。
「おい、そこの男」
ガラの悪い男がガンを飛ばしながら、エマの方を振り返る。
「もう少しこの子とエマを近付けて縛ってくれ」
「あ? そうやって逃げる計画でも立てようたって無駄だぜ!」
エマはガラの悪い男を睨みつける。ガラの悪い男もエマを睨み返す。
(ちっ。使えねー。楓花様にエマの体を密着させられるチャンスなのに)
「おい」
どうやらこのグループのボスだろう。
エマに睨みを利かせている男は、すぐにその男の方を振り返った。
「そのガキは、あの百合園家の娘だろ? さっさと身代金でも用意させろ」
「はい。分かりました」
「大事なひとり娘の裸がネットに晒されたくなければ、さっさとそれ相応の額を用意するように言えよ」
エマは楓花の裸という言葉に反応した。
「バ、バカ者!! そんなことしたらお前達の命はないぞ!!」
(え? ヤバい。楓花様の裸、見てみたいエマがいる)
グループのボスはエマに近付き、エマの髪を強引に掴む。
「お前からでもいいんだぞ? お前では百合園家から金は取れそうにないが、お前自身はかなりの上玉。売れる場所には、いい額で売れるんだけど?」
エマも流石に
楓花が一番大事だが、男の放つ威圧感から自身の身の危険も感じた。
(ひっ。コイツら、有名な半グレみたいだし冗談ではなく本当にエマを売り飛ばすつもりだわ)
急に怯えた表情を浮かべ出すエマ。
エマの怯えた様子を見たグループのボスが、イヤらしい顔つきになる。
「そうだ。売り飛ばす前にコイツの裸の写真撮っとけ。そっちの方が業者から多く金取れるだろ」
「分かりました。おい、ナイフよこせ」
1人の男がエマにナイフを持って近付き、エマの服に切れ目を入れる。
涙目になっていくエマ。恐怖心で声が出ない。
「や、やめて下さい!! お願いします!! お金……払いますから!!」
エマの様子を見た楓花が精一杯の声を出した。
男達は依然としてイヤらしい顔をしたままだ。
「わりぃな。俺達は極悪なんでね。ちゃんと両方から金を頂くよ」
男のナイフがエマの服を裂いていき、どんどんエマの肌が露出していく。
エマは心の中で生まれて初めて他人に助けを求める。
(お願い……。誰でもいいから、楓花様とエマを助けて……っ)
エマが心の中で、そう願った瞬間……。
倉庫の頑丈な鉄製の扉が何者かに蹴破られる。
土煙の中から、ロングヘアを2つ結びにしてサングラスをかけた背の高い少女が現れる。
「誰だ?! てめぇ!!」
一斉にその少女に対して、各々武器を構える”サイバー・パンク”の連中。
土煙が収まり、少女の姿が鮮明に映る。
楓花、エマ、2人が同時に声を上げる。
「クロエちゃん!!」
「クロエ!!」
クロエは2人に対して、もう大丈夫だといった感じで頷くと、50人くらいいる”サイバー・パンク”の連中に向かって大声で叫んだ。
「てめぇら!! いい加減にしやがれ!! このクロエ・ベアトリクスが相手になってやる!!」
そう叫び終えると、クロエはヘアゴムとサングラスをとった。
その一言を聞いた全員の頭の中(楓花、エマ含む)に、共通の何かが宿る。
(うわーっ……)とサイバー・パンクの連中は思い。
(それ……海外ドラマじゃないよ)と楓花とエマは思った。
クロエにサイバー・パンクのボスが近付き威嚇する。
「てめぇ……何者だよ?! 俺は”サイバー・パンク”の
ゲラゲラと腹を押え、
「は? 知らん」
そう言い終えると誰の目にも止まらぬ速さで腕を動かすクロエ。
クロエの張り手で数十メートルも吹き飛ぶ”サイバー・パンク”の頭、碧。
速攻で頭を獲られえた事にいきり立つ”サイバー・パンク”。
「お、おい!! こっちは圧倒的に人数が多いんだ!! 全員でかかれ!!」
警察でも簡単に手が出せない程、極悪な半グレ集団”サイバー・パンク”であってもクロエの敵ではない。ここにいる誰よりも日常的に訓練を重ねている
一瞬にして半数近くの”サイバー・パンク”がクロエに
「ひぃ……。バケモノだ。逃げろ!!」
数名がクロエの脇を通り抜けて倉庫の外に出ようとする。
ズドドドドドドドドドンッ!!
突如、頭上から凄まじい弾幕。全弾、体からギリギリの所に数百発の実弾が射ち込まれている。
「ひぃぃ……」
倉庫の屋上からアサルトライフルを残党に向けるリュカ。その目には必殺の2文字しか宿っていなかった。
「貴様ら! 1ミリでも動いてみろ! 全身ピアス付け放題にしてやる!」
全員が倉庫前で動けない状態になり、恐怖心から腰が抜けた状態になった。
その中でも恐怖心に打ち勝ち隙を見て逃げようとする男。
パシュッ
「ぎゃあああああーっ!! 俺の耳がーっ!!」
「耳が悪いようだな。僕が直々に悪い耳をひとつ取ってあげた。次は聞き逃すなよ」
リュカの殺意しかない目つきと血も涙もない行動に、札付きの悪”サイバー・パンク”の一員でも失禁する者がいた。
「こっちです、碧さん。奴ら裏出口の存在には気付いていないようで……」
クロエもリュカも気付いていない場所から逃げようとする残党数名と瀕死状態の”サイバー・パンク”頭、碧。
「やりました。ようやく
ブオンッ!! ブオンッ!!
ブオンッ!! ブオンッ!!
パラリラー♪ パラリラー♪
パラリラー♪ パラリラー♪
”サイバー・パンク”の目の前にいたのは、おびただしい数のバイクに乗った暴走族。特攻服を身に纏った3人の男達がバイクを降り、おびただしい数のバイクの最前列に立っている。
すぐその3人のもとに向かい、助けを求める碧。
「お、おい! どこの族か知らねぇが、助けてくれ! 俺は”サイバー・パンク”の……?!」
3人の内の1人が碧の胸ぐらを掴み上げる。
「轟さん、どうします? コイツ?」
残党達も、もう1人の男に取り押さえられている。
「轟さん。コイツら最近、調子に乗ってる連中っすよ」
「あん? サバイバルなんだ?」
「サイバー・パンクの頭、
1人に胸ぐらを掴まれたまま、轟の右ストレートを問答無用で顔面に喰らう碧。
3人が口元を覆っていたバンダナをとる。
”サイバー・パンク”の碧を含め、残党全員が青ざめる。
「あ、あんたらは伝説の暴走族、”
「
「そして……
ブオンッ!! ブオンッ!!
ブオンッ!! ブオンッ!!
バイクの騒音が激しくなる。3人の後ろにいるおびただしい数の暴走族が怒号する。
「おい!! ”様”くれろや!? ああん!?」
「てめぇら、覚悟できてんだろうなぁ!!」
「轟さん、もうヤキ入れだけじゃあすまねぇよ!!」
轟が右手を静かに上げる。一斉にバイクの音が静かになる。
「おい。サバンナ何とかだっけ? 俺はチャラチャラした横文字とチャラチャラした男が大嫌いでよ。頭の名前が日本人のくせに
途中から暴走気味で暴れまくる轟を足利兄弟が止める。
一通り三十路の不満をぶちまけた轟は冷静さを取り戻し、他の”地盗轟”の連中がクロエ、リュカ両名にフルボッコにされた”サイバー・パンク”の連中全員を倉庫裏に運んできた。そして碧を先頭に”サイバー・パンク”の連中全員に正座をさせた。
碧が不安そうに轟に尋ねる。
「あ、あの……、俺達はこれから……」
「選べ……」
「選ぶ?」
「そうだな……、腰、腕、首、鼻、耳、どれでもいいぞ。おススメは鼻か耳。腰は意外とキツイ」
「え……?あ、あのー」
轟が碧の鼻ピアスに指をかける。碧は轟の言葉の意味を何となく察する。
「うん。君は鼻がいいよ! 是非、そうしよう! 鼻ぞり一丁!!」
「「「喜んでー!!」」」
碧が言葉を発する前に碧の鼻ピアスにワイヤーロープが
ワイヤーロープの先はバイクだ。
「はーい。じゃあ、走って。途中で止まると鼻の穴が1つになるからー」
ブオンッ!! ブオンッ!!
伝説の暴走族、”
義理人情には厚いが、鉄の掟を破った者に対する処罰は極悪非道だった。
特に今回の事件のような
轟達が一番嫌いな
伝説の暴走族、”地盗轟”による地獄の制裁。
それによって”サイバー・パンク”は壊滅した。
こうして一方的な大乱闘は終結した。
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