第5話 密告者降臨!
5-1 ピースとカオスは紙一重
季節は梅雨に差し掛かり、雨の日が多くなりジメジメと湿気の多い日が続く。
相変わらず、クロエは自室にこもり海外ドラマを観まくる
屋敷どころか自室を出る事もあまりしない。
食事や風呂など必要最低限の範囲で部屋を出る事はあるが、クロエの生活は楓花と下校をする前の生活に完全に戻っていた。
以前と変わらず学校終わりの楓花がクロエの部屋を訪れる。
これまでと変わった事といえば。
まず、ひとつ。
楓花と一緒にエマとリュカもクロエの部屋を訪れる事だ。
楓花が勉強をしている間、エマが楓花の家庭教師的な役割を担っている。
リュカは物静かに読書に励んでいる。
クロエはというと、自室を訪れてくる3人を無視して海外ドラマを観続ける。
クロエに与えられた部屋は楓花の部屋並みに広い。訪れてくる人数が2人くらい増えたくらいでは、まったく窮屈さを感じない。
クロエはチラッと勉強をしている楓花の方を見る。
勉強を必死にしている楓花。
分からない箇所を教えるエマ。
……家庭教師にしては異常な程、2人の距離が近い。
まるで幼い子供に母親が絵本を読んであげている距離だ。
エマは楓花が勉強に集中しているのをいいことに、クンクンと満たされた顔で楓花の匂いを嗅いでいる。
今度はリュカの方を見てみる。
一見、読書に集中しているように見えるが、チラチラとエマの方を見てはニヤニヤといやらしい表情を浮かべている。
きっと楓花に興奮しているエマを見て興奮しているのだ。
この
クロエはもう慣れたものだ。
魔族の集落で生活していると思えばいい。
ふたつ目。
楓花は勉強を終えると、クロエにその日あった出来事を楽しそうに話す。
クロエは海外ドラマに集中しながら心ここにあらずな返事をする。
楓花が以前のように寂しそうな顔をしなくなったのはエマの存在が大きい。
楓花はクロエに話かけているのにも関わらず、まるで自分に話かけられているようエマが楓花の話に反応する。
そっけないクロエとは対照的なエマ。
楓花はエマの
自分の話を聞いてくれるのが、例え話かけている本人でなくても違う人間が極端な反応を示してくれるので、何とかメンタルを保っていられる。
リュカは……。言うまでもない。
食事に関しては、クロエと楓花の2人だけでとる。
エマとリュカは楓花とかなり近しい距離にいる屋敷の者だが、あくまでも
クロエは食事を終えると、楓花よりも先に風呂に入る。
楓花もその後、風呂に入るのだがクロエとは一緒に風呂に入りたがっていた楓花ではあったが、何故か同性であるはずのエマは誘わない。
楓花はエマが自身に向けているモノの正体を知らないが、本能的に身の危険を感じているのだろう。
クロエは風呂上りに自室で海外ドラマの続きを観るのだが、楓花も風呂上り性懲りもなくまたクロエの部屋を訪れる。
夜も更ける頃、3人は各々の部屋に帰って行く。
最後に。
これは
なぜ、クロエが元の堕落した生活に戻ったのか。
なぜ、楓花の下校相手の座を勝ち取ったクロエが屋敷の外に一歩も出ていないのか。
実はこの2週間、楓花の下校相手はエマがしている。
基本思考は自分の利益のみを最優先し、他者の利益になる事は軽視、または蹴落とす事。
完全利己主義者なクロエの事だ。
自分で
話は楓花争奪戦、クロエとエマの決闘の次の日に
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