第3話:発覚
「キャアアアアアアアア」
寮中に響き渡る悲鳴をガーバー公爵家令嬢ナーシスがあげた。
陰で極悪令嬢と呼ばれるナーシスにしては情けない事だった。
だがそれも仕方がないだろう。
目を醒ましたら生首を含むバラバラ惨殺死体が同じベットにあるのだ。
しかも視界は鮮血で真っ赤になっている。
悲鳴の前にもドアを破壊する轟音が鳴り響いていた。
だが直ぐには教師達も女兵士達もナーシスの部屋に駆けつけない。
教師達も女兵士達も今日何が起こるか知っていた。
テルソン辺境伯家のラーラ嬢が襲われることを知っていた。
だから悲鳴をあげたのはラーラ嬢だと思い込んでいた。
自殺するまでは見て見ぬふりする事を決めていた。
「何事が起ったの。
ナーシス様の声よ、ナーシス様の部屋から聞こえて来たわ」
だが寮にいる令嬢達は別だった。
遠く離れていれば寮の何処で悲鳴があがったかまでは分からない。
だが同じ寮にいる者なら大体の位置が分かる。
まして隣の部屋なら直ぐに分かる。
だから隣の部屋の令嬢が駆けつけた。
「「キャアアアアアアアア」」
当然の事だが、ガーバー公爵家令嬢ナーシスの部屋は最上階の角部屋だ。
だから隣の部屋は一つしかない。
普通なら最上階には高位貴族が部屋割りされる。
だがナーシスの虐めを恐れた高位貴族の令嬢は、病気療養を理由に領地に戻るか他の部屋に移動するかしていた。
何かにつけて呼びつけて無理難題を押し付けてくるナーシスだ。
同じ階に入れられるのは逆らえない下位貴族になる。
虐め殺そうとしている下位貴族令嬢か、お気に入りの下位貴族令嬢達だ。
絶対に虐めの標的にされたくない下位貴族令嬢は、常に気を張っている。
ナーシスの一挙手一投足に注目していた。
だからこそ直ぐに駆けつけたのだ。
そこで彼女達が見たのは地獄絵図だった。
茫然自失となった血塗れのナーシスがベットの上に座っている。
その周りには生首を含めたバラバラの惨殺死体が転がっている。
最初に駆けつけた下位貴族令嬢二人は、それを見てその場で卒倒した。
新たな悲鳴を聞きつけて、最上階にいる全ての下位貴族令嬢がナーシスの部屋にやって来たが、彼女達も次々とその場で卒倒する。
だが中には気丈な令嬢もいた。
「しっかりしなさい、直ぐに先生と女兵士を呼んでくるわ」
最初に轟音と悲鳴があがってから十五分くらい経っているだろう。
気丈な下位貴族令嬢が巡回しているはずの女兵士を探した。
だがわざと巡回をしなかった女兵士達に会えるはずがない。
気丈な下位貴族令嬢は仕方なく教師が宿直しているはずの部屋に行った。
だがいくら扉を激しく叩いても宿直教師は出てこなかった。
ラーラ嬢を見殺しにするために、寝たふりをしていたのだ。
後日何があっても言い訳ができるようにするための寝たふりだった。
急な腹痛に襲われ薬を服用したが、その中に睡眠作用があったと言い訳するために、特別に処方した薬まで用意していたのだ。
仕方なく気丈な下位貴族令嬢は女兵士の駐屯小屋に行った。
最初は無視しようとした女兵士達も、あまりにもしつこく呼び出されたので、無視できずに事情を聴くことになった。
そこで全てを知り急いでナーシスの部屋に駆けつけた。
だがその頃にはもう二時間近くの時間が過ぎていた。
事件を隠蔽する事が不可能になっていた。
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