第30話『あるじ様とデートなのじゃ!』

「これは、ヤバっ! 天にものぼるうまさなのじゃぁ~!」

「どれどれ。なるほど……、こりゃうまい!」


 ここは王都の中央公園だ。今日はデートだ。

 ルルはフリフリのメルヘンチックな服を着ている。


 ちなみにメルヘンなスカートの下は大人ブラック。

 いつもとは真逆の組み合わせだな。


 ……。いったいなんの話だろうか? パンツの話だ。


「あるじ様のその執事っぽい服も素敵なのじゃなぁ」

「ルルはお嬢様っぽいな。さす姫だ。いい感じだ」


 ゴシックじゃない服のルルはなんか新鮮だな。

 吸血姫っぽさはないが、似合ってる。うん。


「あるじ様とゆっくりするのは、ひさしぶりなのじゃな」

「だな。ここ最近は俺たち忙しかったからな」


 ギルマスからの依頼が増えたのだ。

 エルフの里の危機を救ったのが評価された。


 人の役に立てて報酬もたくさんもらう。

 やりがいはあるのだが、なかなかに大変だ。


 たまにはこうやって羽をのばさないとだ。


「あるじ様よ、ところで、このスイーツは何なのじゃ?」

「クレープだ。さいきん王都で流行りのスイーツらしいぞ」


 最近は出店が増えている。


「このクリーム、めっちゃうまなのじゃなぁ!」

「だな。甘さで疲れがぶっとぶぜ」


 おっと、口もとにクリーム。

 ルルの口もとのクリームを親指でぬぐった。


「あるじ様、そのっ、ありがとなのじゃっ!」

「いえいえ。どういたしまして、お嬢様」


 おっ、テレてる。

 たまに大人っぽい感じでドキッとさせられるが。


 こういうところは年相応だ。

 ん。年相応? そういやルルは1014歳だったわ。


「あるじ様よ、アレはダークラウンズ装備じゃないかの?」

「だな。全身ダークラウンズ装備でかためてるな」


 おおっ。ダークラウンズ装備じゃん?

 まさか着ている人を見られるとは。


 ダークラウンズはルルを封印してた奈落のボス。

 ドロップアイテムは高値で売れた。


 どうやら目の前の男が買い手のようだ。

 

「なんか。すごい、挙動不審なのじゃなぁ」

「うむ。キョロキョロ感がハンパない」


 ダークラウンズ装備一式か。

 相当高かったはずだ、奮発したんだろう。


 ギルドでみたことない奴だ。

 どこかのご子息か?

 親から買ってもらったのかもな。


「目のまえを行ったりきたりせわしないのじゃな」

「うーん。アピール感がハンパないな」


 目の前で10往復してる。

 中央公園はもっとも人の往来が多い場所だ。

 自慢の装備をみてもらいたいのだろう。


 気持ちは分からないでもない。


 頑張って手に入れた装備はお披露目したくなるものだ。

 アイテムをゲットしたかいがあったというものだ。

 

 そんなことを考えていると見なれた顔だ。

 ギルド嬢のリリアだ。


「うわぁ、クロノ先輩じゃないッスかぁ!」


 ギルド嬢のリリアだ。

 今日も元気が良い。


「おう。今日はオフか?」

「実はパトロール中で、いまちょっとした休憩時間ッス」


「おつかれさん」

「いや、クロノ先輩みたら疲れなんて秒で吹っ飛んだっすよぉ~!」


 相変わらず元気な子だな。

 それにしてもリリアが動かなきゃいけない事件とな?


 ギルマス直属のリリアはめったなことじゃ動かない。

 あの勇者騒動のとき以来か?


「なにがあったんだ?」

「聞いてくれるっすか? ここ最近、こんなことがありまして」

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