第20話『うわあ、まるで戦争だ【勇者】』

「うわああぁあっ。こっ、こんなの、まるで戦争だ!」


 セーラの槍がボクに飛んできた。

 3本も。胸に刺さりそうだった。

 ありえない。デタラメだ。


 セーラの槍はながれ弾だ。

 説教をするつもりはない。

 だけどあまりに危険だ。子供じみてる。


 こんなのおろかだ。まるでギルドだ。

 セーラのパパ上に、チクらなきゃ。

 でも、ボケてるんだよな。


「どうしよ、弁償は司教っちのツケにしなきゃ」


 あたりはしっちゃかめっちゃかだ。

 石だたみが砕けてるし、穴だらけ。

 

 少しおちついてくれ。セーラ。

 リーダーのボクがギルドに怒られる。

 どうしよう?


「ぜんぶクロノのせいにしよう」


 死人に口なしだ。ぜんぶクロノがわるい。

 ギルドは信じる。オバケも信じるくらいだから。


「それにしても、とんだりはねたり。まるで、クロノだ」


 どうしちゃったんだ、セーラ。

 介護疲れかな?

 もしかして、生理なのか?

 

 ボクが相手できなかったのも反省だ。

 悪気はなかった。キミは仲間だ。

 Sランクの大聖女だ。


「セーラはめちゃくちゃだ。戦いがへたくそだ」


 セーラがこうなった理由を考えよう。


 花嫁修業しかしていなかったから。

 パパ上が箱入り娘にしていたから。

 胸がデカすぎて動きづらいから。

 フレイが非処女のアバズレだから。 

 ボクがセーラを甘やかしたから。


「うむ。ボクに責任はないね」

 

 やっぱり、ボクの責任はない。

 幼稚なクロノの影響だ。

 クロノのマネをしてるのだろう。


「クロノも、せーラもあまりに子供だ。とほほ」


 ストレスがたまってたのかな?

 ボケ老人の介護がつらかったのかな。


「そう思うと、あまりにあわれだ」


 クロノを成敗したら、

 デートでもしてあげようか。


 でも、キミは胸がデカすぎる。

 司教っちも、ごめん。


「デートかぁ。クロノの妹と、リリアに誤解されちゃうな」


 悩みどころだ。


 って、うわああ! また、槍がこっちに飛んできた。

 おいっ、セーラ? あぶないぞ。

 まるでノーコンだ。


「やれやれ、セーラ。まるでギルドだ」


 そうそう、ギルドと言えば、リリアだ。

 リリアはSランク昇格パーティーにこなかった。

 あのときは、とても落ちこんだ。

 

 その理由をボクはずっと考えている。なぜだ?


「そうか、リリア。キミは遠慮してたんだな」


 汚れた血だから勇者にはふさわしくないと。

 私のような子は、シン様の隣には立てないと。

 

「ささいなことだ。気にするな、リリア」


 ボクはまったくそんな事は気にしない。

 そんなことを気にするのは、まるでクロノだ。


 ボクはクロノ妹も、汚れた血の子も差別しない。

 なぜなら小さくてかわいくて処女だからだ。


「身分差別なんてばかげてる。許されない」


 女ごころは難しい。男と女はちがうんだ。

 わかるか? クロノ。わからないだろうな。

 なぜならキミは、平民だから。


「手伝いが必要かな?」


 うーん。


「セーラを信じよ」


 ボクが聖剣カリバーンを出したら終わりだ。

 一瞬でかたがついてしまう。


 セーラはコネで無能で巨乳だ。

 はずかしいことに魔獣を完全に停止させることができない。

 ありとあらゆる魔獣を完全に停止できないなんて、恥だ。


 あまりに恥ずかしくて外にだせない。

 そんなセーラでもボクの助手だ。

 すこしは花を持たせてあげよう。


「がんばれー」


 ボクは仲間を応援した。

 ふむ。さてさて、だ。

 

「そんなことより、クロノの妹だよね」 


 クロノの妹だけを見つめることにした。

 肌がすべすべだ。白くてキメが細かい。

 パタパタと飛んでたし、まるで天使だ。


 ほっぺたもぷにぷにしている。たまご肌だ。

 ためしに指でツンツンしてみたい。


「あわてた顔も、とってもキュートだ」


 クロノの妹と、リリア。すばらしい。

 ボクはとてもたのしい気分になった。


「なんだ? 急に天気わるくなってきた。雨かな?」


 うーん。雨。

 服がぬれて透けるかもしれない。

 

「わるくない。とってもわるくないぞ、雨」

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