第18話『七連詠唱ですよ、クロノさん』

「あやつ、こんなところで超極大魔法じゃとっ!!??」

「アイツも、相当イカれてっからな」


 空中に巨大な魔法陣が。しかも複数。

 アイツがなぜ、大魔法を使えるのかはあと回しだ。


 今はこの魔方陣をうち消すことだけを考えろ。

 発動を許したらシャレにならない。


 王都に暮らす多くの人間が、死ぬ。


「七連詠唱です。発動までにすこし時間がありますよ。雑談でもしてみましょうか。それにしてもやっかいですね。クロノさんと一緒の方は神話級の魔族とおみうけしました。吸血鬼の王。女性ですのでさしずめ吸血姫。といったところでしょうか。教会の人間としては見過せませんよ。すこしばかり本気をだしてみましょうか。ヘブンリーヘル、ホーリーテンペスト、セイクリッドカース、ドリーミーディストピア、ジェノサイドファンタズマ、ペインフルリザレクション、マーシレスエンド、ソウルコンタミネーション。失礼しました。詠唱に夢中になりすぎて魔力制御に失敗しました。このままだと王都のみなさんと心中になってしまいますね。クロノさん地獄で一人ぼっちにならなくてすみそうです。よかったですね。さあクロノさんどうしますか。このままだと王都は地獄絵図になりますよ。一瞬で。しかたのないことです。あきらめましょう。さて七連詠唱と言いましたが実は8つ陣を展開していました。お気づきになられましたでしょうか。末広がりで縁起がいいですからね。八連詠唱です」


 どうする。魔法陣は全て離れた位置に展開されている。

 本体を叩きのめしても、術式は消えない。

 時間経過で術者が死んでも自動的に発動するからだ。


 優先すべきはアイツをブチのめすことではない。

 展開された全ての魔方陣の術式を破壊することだ。


 展開されているのはすべて大魔法。

 一つたりとも残してはいけない。

 

 雷術〈魔力操作〉で術式を触れれば破壊することはできる。

 だが、魔力操作による術式破壊には数秒かかる。

 すべての陣を破壊することができるか?


 魔法陣の数は8つ。不確定要素が多すぎる。

 賭けていいのは自分の命までだ。だが。

 

「あるじ様、魔法には反魔法! エンチャント・アンチマジックなのじゃ!」


 ルルが俺に手をかざす。

 反魔法の力が体に流れこむ。


 触れさえすれば術式を破壊する力。

 これならば、いける!


「サンキュー、ルル。たすかった!」


 黒のローブに隠したナイフを取り出し、投げる。

 ただの投げナイフじゃない。仕掛け武器だ。


「糸を伝い、すべての術式を砕け! 雷術〈魔力伝播〉!」


 すべてのナイフの柄には糸を括っている。

 ただの糸じゃない。鉄粉をあみこんだ特殊糸。

 この糸は鋭利で、頑丈で、よく電気を通す。


 アンチマジックが糸を伝い魔法陣に流れ込む。

 魔法陣はガラスのように砕け散った。

 

「物騒な魔法陣はすべて破壊させてもらった」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る