第3話『奈落の主を、ケチらす』
あれからどれくらいの時間が経っただろうか。
暗闇の中で聴覚だけで戦うことにも慣れた。
「心配なのは食料だ。マジックバックの食料もあと数日しかもたない」
帰還した冒険者の存在しない奈落。
その正体はひたすら巨大なダンジョン。
生きて帰ってきた冒険者が存在しないというのも納得だ。
「これは行き止まりではなく巨大な門か?」
とてつもなく巨大な石造りの門が立ちふさがる。
高さ数十メートルほどある巨大な石門。
とりあえず押してみるか。
「せーの!」
雷術で強化した腕で力任せに押す。
地割れのような音とともに門が開く。
「やったぜ。やればなんとかなるものだな」
部屋に入ると灯りが。
「光……随分とひさしぶりに見た気がするぜ」
帰らずの大穴は光を吸収する構造になっていた。
そのせいで火を付けて明かりを確保することすらできなかった。
「円卓を囲んでいるあの十二体のスケルトンがこのダンジョンのボス。つまり、コイツらを倒せば地上に戻るための転移門が解放されるっつーわけだな。おもしれぇ!」
槍使いのスケルトンが刺突を繰り出す、これを回避。
回避した場所に矢の雨が降るも、これも回避。
天井から落下する巨大な火球を、雷術で強化した手のひらでかき消す。
敵の数が多い分長期戦は不利だ。
守るよりも、攻めろだ!
「うおおおおおおおおおっ! ライトニングパンチ!」
雷をまとった拳で槍兵の頭がい骨を破壊。
まずは、1体。
「ライトニングキック!」
近づいてきた騎士風のスケルトン4体を同時に撃破。
「ライトニングダッシュ!」
後方に控えていた魔術師、弓兵のスケルトンをまとめてなぎ倒す。
6体まとめて爆散。
「おまえが最後の一匹か。骨のくせに王冠なんて被って偉そうだな」
円卓の中で一番大きな椅子に座っていたスケルトン。
「おまえがこのフロアのボスだろ、来いよ」
魔獣に言葉が通じるとは思えないが挑発を試みる。
スケルトンは杖を片手にゆらりと距離をつめる。
「ライトニング白刃取り!」
スケルトンの杖から刀身が。
避けられる速度ではない。
「仕込み杖からの高速抜刀か。やるじゃん、だが俺には視えていたぜ」
雷術〈視覚強化〉で動体視力が強化されている。
いまの俺にはアクビがでるほどに、遅い。
俺はスケルトンの胸元に掌底を繰り出す。
王冠を被ったスケルトンが爆散した。
「これで最後か。技の名前を言い忘れていたな。今のはライトニングインパクトだ、冥土のみやげにもっていけ」
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