第230話 ゴロの悩み 🐶
ゴロは、いわゆる保護犬です。
前の飼い主がとつぜん亡くなったときから、ただ1匹で山中を放浪していました。
屋外で暮らす癖がついているので、保健所に収容され、動物保護団体に保護され、そこから小林家に引き取られたとき、なにがいやって、清潔なリビングのふわふわの毛布にきちんと座っていなければならない、その状態が堪えがたいほど苦痛でした。
なので、小林家の奥さんが「あんた、なんか元気がないわねえ。外へ出てみる?」と言ってくれたとき、人間なら、ウンウンウンウンと、何度でも頷くところですが、精いっぱいの同意のつもりで「クフ~ン」と鼻声を出してみたのです。(´ω`*)
*
赤い屋根の犬小屋に住めるようになったゴロは、どんなに幸福だったでしょう。
青い空や白い雲や、色のない風を飽かずに眺めて、満足して暮らしていました。
けれども、あるとき、なんとなく調子が出なくて、しょんぼりうなだれていると、奥さんが心配して動物病院に連れて行ってくれ、診察の結果、病気が判明しました。
数日後、手術をしてもらい、小林家に帰って来たゴロは、エリザベスとかいう妙な名前のプラスチックの覆いを首に被せられていたので、鬱陶しいったらありません。
それに、奥さんが「こんな状態でお外なんてとんでもない」と言って、またしてもリビングに入れてくれたので、ゴロは畏まって、借りて来た猫状態になりました。🐈
*
でも、大丈夫ですよ。
病気が完治したいまは、ふたたび外の赤い屋根の犬小屋の住人にもどっています。
みなさま、お時間がおありでしたら、どうぞ道路から覗いてやってくださいませ。
かすかに、ではありますが、けっこう愛想よく尻尾を振ってくれるはずですから。
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