MeteoLight

The KingO

家宅侵入罪男の供述

これは俺がまだ世の中の善悪の区別もつかないガキで、サンタは隣の家の親父だって信じてた頃の話だ。

 昨日の話なんだけどな。日本は大昔のフィリピンみたいに、都心とスラム街との間には埋めることのできないぐらいの大きな貧富の差があったんだ。俺はその中間、豪邸もあればその日暮らしの鼠もいる変わった地域さ。近所ではもっぱら都心に落ちてきた隕石の話で持ちきりだった。東京ドームが10個分はあって(1個分がどんな大きさかは分からないけど)なのに被害はその岩の下に住んでたやつらだけだったらしい。あまりにデタラメなその岩は、まるで生きてるかのように熱くて不思議な力を放ってたんだ。好き者の間で、岩が高値で取引されるようになったのは言うまでもないだろう?当然スラム街に住む大人たちは稼ぎ時だと言わんばかりに上京していった。もちろん俺の親父も行ったさ。隣の親父は知らない、クリスマスの夜に金持ちの家にプレゼントを届けに行ったのを見てから姿を見てないんだ。悪い、話を戻そう。

 スラム街の鼠達が辿り着いた時には政府が既に調査を始めていた、当然だわな。それでもあんな大きな岩だ。全部を回収しきれるわけもなく、親父はこぼれたカスを持ち帰ってきた。まぁカスと言っても5歳児のポケットに入りきるのかと聞かれたら、答えはNoだ。早速金持ちの奴らに見せに行ったわけだけど、あいつらが想像してたのとは違ってたらしい。ほら、通販でよくあるだろ?あんな感じだよ。こうしてダイヤモンドから炭に変わってしまったその石っころは俺の遊び相手になったんだ。

 でだ。ここからが本題だ。ある日俺はその石を飲み込んじまった。味はしなかったね。なに、弾みだよ弾み。実際その時は何も無かったし、小石ぐらい平気だろと気にしなかった、遊び相手がいなくなったのは悲しかったけどな。でも異変が起きたのはその夜、親父が酔って帰ってきていつもみたいに俺のことを殴るんだよ、躾だって言ってな。いつもいつも殴られる時間が苦痛でさ、早く過ぎ去ってくれって思ったんだ。するとどうだ?いつのまにか時間が経ってた。ついに慣れちまったのかって嬉しいと同時に悲しくなったよ。だけど様子がおかしいんだ。ボロボロの畳でできたはずの地面はツルツルだし、親父はいなくなってたし、何より見たことない部品や写真が置いてあったんだ。よく見たらここどこだ?周りを見渡して手がかりを探したね。でも変なんだよ。テレビもなければ冷蔵庫もない。あるのは気味の悪い置物と知らない奴が写ってる写真だけ。思わず叫んだよ、ここはどこだ?これは夢か?ってそしたらどこからか誰かが言うんだ。ここはナカジマ家です、夢ではありませんってな。誰もいないと思ってた場所から声が聞こえる経験あるか?刺される以外で死ぬとしたらあれだね。しばらくしてやっとお前は誰だと聞いたよ。あいつはどうやら俺がいた場所で奴隷のような生活を送っていた。しかも好き好んでだ。ついでに今が何日なのかってのも聞いたよ。俺はでくの棒の自覚なんてなかったんだが、知らない間に20年も経ってたなんてな。本当に時の流れってのは早いもんだ。

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