アルバイトでいいから付き合って、そう彼女がいったから

華川とうふ

第1話 「アルバイト、探してるんですよね? もしよかったら、アルバイトで私の恋人になってください」

「すみません。さっき、バイトの募集締め切ったばかりで……」

「はあ、そうですか」


 俺は落胆して、電話を切った。

 正直、ここまでアルバイトが見つからないものだとは思わなかった。

 だって、普通に今まで読んできたマンガや小説の登場人物は高校生になったらお小遣いのためにアルバイトをしていた。

 それに街をみてみろ、いたるところに『アルバイト募集』の張り紙がされている。


 なのに、どうして俺には仕事がないのだろう。


 ため息をつきながら、俺はだらんと体の力をぬいて公園のベンチに体を預ける。

 姿勢を崩したせいで、手すりに肘をぶつけて、俺は思わず「んぎゃっ」と悲鳴をあげた。


 子どものころとちがって、最近のこういう公園のベンチも一人分ずつ区切ってあって寝っ転がるどころか、姿勢を崩しすぎることもできない。


 子どものころはこう言うベンチはただの横に長い板で、家族で仲良く詰めて座ったり、小学生の頃なら大人なら三人座るところに子どもだからぎゅうぎゅうと体を詰め込んでみんなで一緒にゲームをしたというのに。

 一人分のスペースはちゃんと確保されている今の方が、なんだかすっごく窮屈だ。


 どうして、こうもついていないのだろうか。


 俺はぶつけた肘かばいながら、今度はきちんと正しく座って、首だけをうなだれる。


(あー、あ。どこかに良いアルバイトないかなあ)


 俺がそうため息をついたとき、


「あのー、アルバイトをお探しですか?」

「えっ?」


 急に話しかけられて驚いて顔を上げると、そこにはさらなる驚きがあった。

 ものすごく綺麗な女の子がいたから。

 亜麻色の髪にミルクみたいに白い肌。大きな瞳は榛色はしばみいろというのだろうか、顔だけみてもものすごく可愛かった。


 でも、もっと彼女を現実ばなれさせて見せるのは服装というのだろうか。真っ白なワンピースを来ていた。真っ白なワンピースってイラストや映画ではよくある服装だと思うけれど、現実では観たことはほとんどない。

 以前、美術の時間に白は膨張色だときいたから、女性が実際に服をきるときに全身白一色というのは太って見えてしまうせいかもしれない……。


 だけれど、目の前にいる女の子にはとてもよく似合っていた。

 子どものころに読んだ外国お嬢様というイメージがぴったりと似合う美少女が俺の前にたって微笑んでいた。


 そして再びこういったのだった。


「アルバイト、探してるんですよね? もしよかったら、で私の恋人になってください」


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