私たちが出会うまで
愛涙
第1話
顔の左全体に暖かい何かを感じ、目が覚める
目は覚めたものの
視界は真っ暗で何も見えない
あたりは静かで、布の掠れる音や
秒針の音、自分の息音しか聞こえてこなかった。
私が少し体を揺らすと
布を掠れる音の主張が一段と強くなる
何かに覆われている体は心地の良い温もりだ
数秒間私がそうしていると
次第に頭が冴えてきて、自分が目を閉じたまま布団の中で温まっていたことに気づく
今日は部活あったかな…
と、呑気なことを考えていた突如
ピピピピピピピ
自分があまり好まない音が耳に入り込んできた
大きくて煩い音に私は目を見開く
ああ、もう少しマシな目覚め方はないのか
そうイラつきながら上半身をゆっくりと起こす。
時計のスイッチをカチと消した後
目を何回か瞬きさせて大きく伸びをする
寝ている間に縮こまっていた分
ものすごく開放感があった
そこから視線だけを上にあげ時計を見るとかなりやばい時間だということに気づき、
顔を青ざめ着替えを始めた
自身のもこもことしたパジャマを乱雑に脱ぎ捨てて学校の制服に着替える
私の通っている学校は偏差値もそこそこ高く
校則も基本ゆるい自由な校風だ
私は膝上15㎝は短くしたプリーツスカートを
揺らしながら洗面所へと歩く
家の中での少しの移動でさえも着こなした制服をよく見せたい。
階段を二段飛ばしながら軽やかに平面となった地面へ到着する
リビングのドアを開けると台所でお母さんが弁当を作っているのが見えた
お母さん自体、
私が起きて来たことに気づいていないようだったので無視して洗面所へと向かう
顔を洗い、歯磨きや化粧を終える
自分が愛用しているコテで前髪と髪全体をストレートに固定する
日々使用しているオイルやケープを使って、少し雑だが朝の準備を終えた
洗面所から出ようとした瞬間、唇に色を載せ忘れていたことを思い出し
どこかのブランドで買った口紅を右から左に流すように唇へのせる
鏡の中で私と目を合わせる少女は微笑んでいた
______
それから玄関まで直球して真っ白な少し大きめのスニーカーを履く
玄関のドアを開けようとすると後ろからバタバタという音が聞こえてくる
後ろを振り返ると淡い色の包みを持ったお母さんが慌てたように立っていた。
「忘れてたわよ」
お母さんは優しい声で私に包みを差し出す
中身は弁当だ
「ありがとう」
少しそっけない返事をして家を出た
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