正体不明の裏アカ女子に狙われている!

あゆう

第1話 目隠しをされた俺

 深夜。

 俺はスマホを持って布団の中に入ると、SNSアプリの【モエッター】を開く。その名の通り、毎日何かしら炎上している。それはどうでもいい。

 俺の目的は可愛いイラストや、コスプレ投稿を見ること。そして他には、ちょっと露出の高い写真なんかをあげている、いわゆる裏アカ系の人の投稿を見ることだ。たまにリプもする。


 その中でも、初投稿を見てからずっと追いかけてる推しの人がいる。名前は【桃姫ももひめ

 今日は新しいのあげてないかな? と思ってその人のページに行くと……あった。

 今日のは谷間が見える胸元に穴の空いたピチピチのニットセーターか。タイトルは【好きな人に全然気付いてもらえなぁ~い……。しょぼぼん】だ。

 うむ。相変わらずのたわわな桃の果実のけしからんボディ。素晴らしい。

 その好きな人は俺と場所変われ。


 そこで気がつく。写真の奥に写る見覚えのある制服。すかさずズームアップ。胸元に付いてるバッチもウチの高校のモノと同じだ。

 まじか。同じ高校にいるのか!? そう思って『その制服俺と同じとこかも?』ってリプしてから一度画面を閉じて考える。

 誰だ? 俺の知ってる人か? この人顔は写してないからなんとも言えないな……。

 他に何か写ってないかもう一度見ようとすると、画像は消されていた。そして新しい画像に変わっていて、それにはベッドと桃姫しか写っていない。そして俺は、悶々としたまま眠りに落ちていった。


 ◇◇◇


「起きなさい」

「いでぇ!」


 そんな声と共に無慈悲に頬を叩かれる。


「痛いのが嫌なら自分で起きなさい」

「目覚ましかけてるから自分で起きれるっての! なんなの!? まだ六時だぞ? お前一体何時に起きてんだよ。にわとりか! コケコッコーって鳴いてみ──」


 そこでさらにデコピンをくらう。


「とても痛いっ!」

「朝からうるさい」

「理不尽がすぎるっ!!」


 起こしにきたのは【高城たかぎ 優乃ゆうの】俺とほとんど変わらない身長に黒いストレートヘアー。少しキツめの目。スタイルはいい。つーか胸がデカい。足も長い。俺よりも。

 そして俺、【高城 宗次郎そうじろう】の妹。妹とは言っても、去年ウチの母親が再婚して出来た義妹。誕生日は二ヶ月しか変わらない為、クラスも同じという。しかも委員長だ。俺にだけ超うるさい。

 最初は『ラブコメテンプレ展開キター!』っと喜んでいたけど、現実はそんなに甘くない。

 風呂場にうっかりチラリズムや、着替え中に入ってキャーもうエッチー! みたいなラッキースケベなんてものは一切無く、俺への態度は辛辣。常に辛辣。時に痛烈。すれ違う時に肩をぶつけてきたり、食事中に足を踏んできたりする。どこのヤンキーだ。

 故に俺の〖美人義妹とイチャイチャする〗という夢は破れた。


「片付けが遅れるから早く降りてきて」


 そして優乃はそれだけ言うとため息をつきながら俺の部屋を出ていった。

 そんなに嫌なら起こしにくるなっての。

 ほんと毎朝毎朝……。

 昨日は腹の上に座られて、一昨日は口の中に指を突っ込まれた。

 たまに俺の方が早く起きると舌打ちしながら部屋を出ていく。俺になんの恨みがあるんだ?

 なんかした覚えはないんだけどなぁ。

 まぁいい。さっさと着替えて下に行こう。またグチグチ言われるのも気が滅入るしな。


 下に降りるとテーブルには俺の分だけ飯が置いてあり、優乃は食後のコーヒーを飲んでいた。

 母さんは介護職の為、昨日からの夜勤でまだ帰ってきていない。優乃の父さんは漁師をやってるから一度漁に出ると三ヶ月は帰ってこない。

 つまり、今は二人きり。しかもコーヒーを飲みながらこっちをじっと見てくる。気まずいったらない。


「ごちそーさん」

「あっ……」


 だから俺は急いで朝食を食べ、自分の分の食器を洗い、顔を洗って歯を磨いたらすぐに家を出た。



 学校に着き、いつも通りに仲のいいクラスメイトと他愛のない会話をしながら授業が始まるまでの時間を潰す。その中で俺は昨日の事を思い出して、聞いてみることにした。


「そういえばお前らモエッターやってるか? 昨日ちょっと気になるの見付けたんだよ。顔は写ってないんだけどウチの制服が写っててさ。『同じとこかも?』ってリプしたらすぐに消されたんだよ。で、お前ら桃姫って知って──」


 ガシャン!


 俺が仲間に昨日の事を話そうとした時、何かが割れる音した。

 音がした方を振り返ると、教室の後ろの棚に置いてあった花瓶が落ちて割れている。周りには人が沢山いて誰が落としたのかもわからない状況になっていた。

 そしてそれを見ていると、いつの間にか俺の目の前には優乃が立っていた。手にはカバンを持っているから、まだ着いてからそんなに経っていないんだろう。


「邪魔。いつまでも喋ってないで座ったら?」

「へいへい」


 下手に言い返しても面倒くさくなるのは確定しているので、そそくさとその場を立ち去り、自分の席から後方を遠目に見る。

 すると優乃が掃除道具入れから雑巾やホウキ等を出して片付け始めた。さすがは委員長。

 掃除が終わってから誰が割ったのか、って話になったけど結局犯人は分からずじまい。まぁ、誰かが無意識にカバンがぶつかったとかだろうけど。


 そして俺が机の中から最初の授業の教科書を出そうとしたその時、ポケットに入れていたスマホが震える。

 なんだろうかと取り出して見てみると、それは俺の知らないアカウントからのダイレクトメール。

 そこには、【高城宗次郎くん。大事な話があります。放課後教室に残り、外を見て待っていてください。断ればこのアカウントを晒します】の文字。


「なっ……!」


 誰だ!? なんでこのアカウントの中身が俺だって知ってるんだ!?


 顔を上げて教室内を見渡すけど、特に俺の事を見てる奴もいない。

 無視するのは簡単だけど、もしホントに晒されたらマズイ。非常にマズイ。リアルとSNSじゃ別人格なんだ。くそっ、怖いけど行くしか無いのか……。


 てなわけで今は放課後。場所は教室。もちろん俺一人。そして少しカーテンを開いて窓枠に手をかけると、ちょっと黄昏てる風に外を眺める。緊張で心臓がバクンバクン鳴ってるけど、ビビってる姿を見せるわけにはいかないからな。

 そんな事を考えていると、突然目の前が暗くなった。何かを被せられたみたいに。


「おわっ!?」


 振り向いて顔に被せられた物を取ろうした次の瞬間、今度は腕を取られてロープみたいなもので縛られてしまい、椅子の様なものに座らされると、今度は椅子に縛られてしまった。


「ちょっ! 誰だお前! 外せよ!」


 どゆこと!? まじでなんなの!?


 俺が驚いて狼狽えていると俺の胸元に手が当てられ、そのままツーっとへその辺りまで下がってくるのと同時に声がした。聞いた事あるような無いような少しくぐもった声。

 そしてその声が発した言葉は──


「はじめましてこんにちは。高城宗次郎くん。私が桃姫よ。あ、大きい声出したらキミの私へのリプを学校中に晒しちゃうから♪」


 ……はぁぁぁぁぁあっ!? そんなことされたら死ぬっ!




★★★



面白いなーって思ってくれたらフォローと星をポイッとお願いしまーす!

伸びると続きを書く力になります!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る