第4話 魔王様の部下シルビアは言われた事はきっちっとやります

3日後 ベイルッカ中央公園

シルビアは牛乳瓶が入っていた空の木箱を4個裏返しその上に板を載せて自分の集めた小遣いの入った牛の絵がついた木箱をその台の上に置いた。そしてその横にシルビアはたって待っていた。時間になると冒険者が一人また一人と公園に集まってきた。その数は木箱の上からでは見えない数になってきた。

えぇぇぇぇ。

あのガラの悪い冒険者達だけくると想像していたシルビアは想像と違い焦り始めた。

荒くれ者から真っ当に冒険者をしている者からこんなに種類がいたのかと冒険者自身も驚くぐらいの種類だった。

その中のひとりスキンヘッドに背中に×印の様に2本の大剣を収めた日に焼けた筋肉隆々の男がシルビアに話かけてきた。

「おい」

「はい!」

シルビアは急に話かけられて肩を上げて固まった。

「おいおい。そんなに緊張しなくても取って食ったりはしないからさ」

頭と白い歯が太陽に反射してきらりんと光った。

「俺の名はサム。双剣使いだ。俊敏な動きはできないが腕力はあるぜ」

背中にあった双剣を抜き、剣を振り回してポーズをとった。

その姿を見た冒険者達はまた一人と一人とシルビアに冒険者としての能力をアピールしはじめた。

能力アピールもせずにいかにもガラの悪そうな冒険者の一人がシルビアに金はあるんだろうなっと迫ってきた。金貨1168枚となるとひと財産となり働かなくても5年くらいなら遊んで暮らせる金額だ。魔王討伐をうたわれていた時代なら冒険者達は軽く稼げたが今のご時世その金額を一度に稼ぐ事などほぼできない。

その言葉後に冒険者達はごくりと喉をならしシルビアを見つめた。公園はしばらばらく沈黙した。

「・・・ごめんなさい。この広告に書いてある事は魔王討伐は本当は嘘なんです」

シルビアは深々と頭を下げる。


『なんだとー』


冒険者達は怒りでその場が興奮状態になっていた。

今さらシルビアが小さな声でお金ならありますっといっても冒険者達にシルビアの声は聞こえなかった。

冒険者達のむき出しの敵意にシルビアの魔族の本能が反応し始める。


コノセカイニイラナイモノ

ハイジョ


シルビアの目の奥が赤く光る。

冒険者達が一斉にシルビアに襲いかかってきた。


いけない!


ダリウスが木の影から現れる。

過保護すぎるかなと自分自身でも思っていてもシルビアの事が心配になりダリウスは

こっそりと後をつけて木の影から見守っていたのだ。

ダリウスの手から風が巻き起こる。その風ははじける様に周囲に広がった。

風にシルビアの横の箱の蓋が開き中に入っていた銅貨が風に乗ってキラキラと散らばった。銅貨だが毎日一枚一枚シルビアがきれいに拭いていた為とてもピカピカで太陽の光を浴びると金貨にみえた。

その銅貨を我さきにと冒険者達は拾い始めた。


意識が遠のいたシルビアにダリウスが呼びかける。


「シルビア!」


遠のいた意識の先でシルビアはダリウスと出会った頃を思い出していた。


朝露を歌おう。雨ならみんなで歌おう。大雨なら大合唱だ。

シルビアは川のそばでのんびりと歌いながら仲間たちと過ごしていた。

突然その日は起こった。

最初は何がおこったのかわからなかった。仲間たちが赤く光りはじめた。自分もそれに呼応して自分も赤くなった。


コノセカイニガイニナルモノ

そう頭の中に響いた。


そして武器を掲げた4人の人間が現れた。

弱い水のモンスターなど次々に倒されていった。

人間とってはどうってない事で新しい武器のためし切りだった。

そして人間達は倒されたモンスターの事などどうてもよくてすぐに去っていった。


切られた自分の水しぶきで小さな虹ができていた。

その虹をみてシルビアはキレイダナ・・・なんて思ってまった。


地面に水となって地面に吸収される所にダリウスがひょっこり現れた。

「僕も虹が綺麗だと思ったんだ」

どこかの空で雨が降っていたのか空には大きな虹ができていた。

はじめて見る笑顔なのにとっても懐かしく感じだ。

「君の名前は?」

「・・・シルビア」

小さく呟いた。

「シルビア、いい名前だね。」


この世界の魔力の覇者ダリウス

我が魔力もって眷属とする

名をシルビア

シルビアに温かい手がふれる。

シルビアが光りはじめたその光が収縮するとシルビアは雨粒の形から人型になっていた。


どこか遠くで声が聞こえる。

シルビア!

大好きなダリウス様の声が聞こえる。シルビアの意識が戻ってきた。

「はーい」

笑顔いっぱいでシルビアはダリウスに抱き着く。

「よかった」

ぽんと頭にダリウスは手をのせる。

「行こう。ティータイムの時間だよ」


公園では冒険者達が必死になって銅貨を拾っていた。


ダリウスは冷たく言い放つ。

「金貨じゃなくて銅貨だからお金に関しては嘘をついていないよ」


魔法陣をだしダリウスとシルビアはその場から去った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る