遥華様は千翼君から離れたくない
松下タツヤ
第1話 遥華様は千翼君から離れたくない
「レスティア王国の王女【シルヴィア】が暗黒大帝軍の首領【ドリロコ】に
【シルヴィア】の父親にしてレスティア王国の君主である【アルブレヒト5世】はである王女【シルヴィア】を救い出す為にレスティア王国中から勇者となれる逸材を模索し続けた結果、1年という歳月の果てに遂に【アルブレヒト5世】は5人の選ばれし勇者を見つけ出した
そして選ばれた5人の勇者達は王女【シルヴィア】を救い出すために暗黒大帝軍首領【ドリロコ】が居城としているヒスティア共和国へ……」
「な、なな、なんで勝手にノート見てるの〜!!!【バッ】」
遥華の専属の従者である
最初から中盤にかけてはストーリーのキャラクターや王国の名前など中盤以降はプロローグ的なものが書かれていた
初めは主人のプライベートに触れてしまうだろうと千翼は一度ノートを閉じて清掃に戻ったのだがどうにも中身が気になってしまった結果、我慢が出来なくなってしまい再度ノートを開き主人がしたためたストーリーを立ち読みしていたがいつの間にか主人の遥華が戻ってきてしまい現在に至る
「私に気配を感じさせずにお部屋にお入りになられるとは…また腕をお上げになられましたね。遥華お嬢様。」
千翼はふぅと溜息を吐き遥華の成長に祝福の拍手を鳴らす
「私が気配を消したんじゃなくてち〜ちゃんが夢中になってそのノートを読んでいただけでしょ!?私にそんな暗殺術なんて出来るわけないじゃない!!」
「はいはい。分かってますからお腹をポコポコ叩かないで下さい」
遥華は顔中真っ赤にしながら胸にノートを抱きながら千翼のお腹をポコポコと叩いてクレームを入れる
本当なら千翼の頭を叩きたいのだが遥華と千翼の身長差は約20cm程あるため仕方なくお腹を殴ってる始末である
「…それで何で私のノートをち〜ちゃんが見てるの?ち〜ちゃんだったら私の私物を勝手に見ようとしないじゃない……」
「はい。遥華お嬢様の机を掃除していました所、数学のノートが置いてありましてどのようにノートを纏めているのかと試しに開きましたら何とも面白そうなファンタジーが書いてありましたものですから思わず黙読していました。」
「“黙読”じゃなくてはっきり“音読”していたよ!国語の授業で先生に当てられた生徒が丸の所まで読み上げるようにハキハキと声に出していたからね!!」
「まぁ、私は国語の音読の時は大きな声ではっきりと読んでいましたし…そうなってしまうのは必然と言いますか…」
「そういう事言いたいんじゃないの!!」
千翼の説明の矛盾に怒った遥華は頭から蒸気を吹き出しながら千翼に掴みかかるがやはり身長差がある為届かず結果、先程と同じ様にお腹を叩くことしか出来なかった
「はぁ、はぁ…まったくもう!」
しかしそれも長くは続かず1〜2分したら遥華は息を荒く切らして千翼から離れた
運動の苦手な遥華お嬢様にとって1〜2分の連続運動は体力がもたない
「……それにち〜ちゃん?二人っきりの時はお嬢様として扱わないでっていつも言ってるでしょ?」
「へいへい、分かってますよ。そういう遥華もその“ち〜ちゃん”ってのどうにか出来ない?こっ恥ずかしくて敵わんのよ……」
遥華の父親や崇道家の従者がいるところでは千翼は遥華の従者として身分相応の態度で接するが遥華の部屋など二人きりの時は遥華の要望により主人も従者もないごく普通の“幼馴染”として接している
「い、いいでしょ!?だって…ち〜ちゃんはち〜ちゃんなんだから…」
「…まぁ、別にいいんだけど他の使用人の先輩方がいる前くらいどうにか出来ない?特に執事長の長谷川さんにめっちゃ睨まれるんだよね」
執事長の長谷川は遥華の父親である浩介が幼い頃から既に崇道家に仕えており、崇道家への忠誠心は戦国時代の武将を彷彿させる程と他の従者達から尊敬の眼差しを向けられている
「あはは、長谷川さんは人にも自分にも厳しいからね〜。別にち〜ちゃんだけに厳しいわけないよ〜」
「本当か〜?長谷川さんと会話するといつも怒ってるぞ?」
「それはち〜ちゃんのこと期待してるんだよ〜」
「ん〜……そうだといいけどな〜」
長谷川は一人娘の遥華にも変わらない忠誠心を示しており遥華は気づいていないが遥華の専属従者に千翼が選ばれた頃から長谷川は千翼にかなり厳しく接し常に殺意の眼差しを向けている
「あっ、そろそろ夕食の時間か…それじゃあ俺は食堂に行って夕食の用意にして来るよ。用意出来たら呼びに来るから少し待って……」
時刻は既に18時を過ぎており千翼は急いで清掃を済ませると遥華の部屋から出ようとドアノブに手を掛けようとするがドアノブには触れられない
身体を前に出そうとしても自分の身体が石にでもなったように動けそうにない
それも当然である何故なら……
「【ギュム】…行かないで……私の側から離れないで……」
千翼の腰には遥華ががっちりと抱きついているからである
顔は背中に思いきり埋もれており背中には遥華の吐息が伝わってきており仄かに暖かかった
「あのな…俺は夕食の準備に向かうのであって別に崇道邸からいなくなる訳じゃないんだから……」
「【フルフル】それでも…やなの……」
千翼は遥かに離れるようやんわり宥めてみるが遥華はきっぱり断るとガッチリと腰に抱きついて離れようとしない
「…分かったよ。側にいてあげるから腰から離れな?」
「【こくり】」
崇道遥華は年収300億円を誇り傘下会社は万を超える大企業【崇道財閥】の一人娘で成績は小〜高校と学年でも常にトップを取り続けている他、幼い頃からピアノやバレエ、書道に花道などあらゆる部門で優秀な成績を誇る秀才であるが彼女は彼女専属の従者である飛鳥千翼が側にいないと何も出来ないのであった
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