博士、目薬が差せません【オチまで30秒】

「博士、目薬が差せません。どうしても目を瞑ってしまうんです。代わりに差してくれませんか?」

 アンドロイドの少女ララは人間用の目薬を右手で握り、安楽椅子に座るレイ博士に声をかけた。


 彼は新聞に意識を集中させたまま返す。

「それはお前の体が正常に機能している証じゃよ。メインカメラを守る防御機構が働いているのじゃ。気にする必要はない」


「でも博士、私目薬を差したいんです。目薬を差してください」


「なんじゃ、カメラユニットの動きでも悪いのか? ならワシが油を差してやろう。こっちに来なさい」レイ博士はようやく背もたれから背中を離した。


「いえ、博士」とララは首を横に振る。「私はこの本を読んで、新しい戦闘機能を身につけようと思ったのです」


「戦闘機能? いったいどんな本を読んでおるんじゃ?」

 レイ博士はララの足元に置かれている本のタイトルを読んだ。

「『女の涙は最強の武器』か。どうやら、文脈認知能力はまだまだのようじゃな」

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