No.47:はい黒確定。


 回顧終了。


「さて、ここからは時間との勝負だ」


 俺はPC上で、七瀬のスマホ画面を動かし始めた。


 時刻は月曜日の27時。

 すなわち火曜日の午前3時だ。


 そもそもなんでこんな遅い時間に作業をするのか。

 それは七瀬が寝ている時間じゃないと、都合が悪いからだ。

 もし七瀬がスマホの画面を見ていたら、何も触れていないのに勝手にスマホが動くというイリュージョンを見せることになる。


 おそらく1週間のなかで、この時間が一番寝ている確率が高いだろう。

 月曜日からクラブに行くことは、そうそうないだろうしな。

 だからこの時間に、なんとか間に合わせたかった。

 さらに言えば、スマホを下に向けて置いていてくれればベストなのだが。

 まあ完璧を望むのは難しい。


 俺は最初にLimeのアイコンをタップ。

 いや、マウスを使うからクリックなのか?


 トーク画面を眺める。

『アコ,マリア(3)』というグループがある。


「これだな」


 グループLimeのメッセージを開ける。


 ………………………………………………………………


 アコ:ねーねー、桜庭のあの顔みた?


 マリア:見たー、泣きそうになってんの。


 七瀬:いい気味よね。雪姫とか呼ばれて調子に乗っちゃって。色目使ってさー、それで告白させて振るってどういうことよ? 柳くんの敵とらないとね。


 マリア:それにしてもアコ、派手にやったねー。スカートちらっと見えたけど。


 アコ:まーねー。かなりザックリやっといたから。


 七瀬:誰にも見られてないよね?


 アコ:大丈夫、校舎内にカメラないし。


 マリア:私も見張ってたけど、誰もこなかったよー。


 アコ:でも七瀬、柳くんどうするの?


 七瀬:いちおうイケメンだしね。ああいう純粋系アスリートって1回やらせてあげると夢中になるから、段取り考えてる。


 マリア:うわー、相変わらずゲスい!


 アコ:タカユキ先輩はどうするの?


 七瀬:タカユキは別腹よ。あれはあれで、またいいの♡。


 マリア:マリアの知らない大人の世界だー。


 ………………………………………………………………


 はい黒確定。

 関連箇所を、すべてスクショで取っておく。


 さかのぼって見ると、指示役が七瀬、実行役はアコとマリアだ。

 手紙も上履きも同じ。

 まあアコとマリアはやらされているだけかもしれないが、情状酌量の余地はない。


 それにしても、水野隆行ともかなり不適切な感じだな。

 とりあえず、柳先輩には同情する。


 次に無人島のグループLime。


『あつまれ 聖クラークの森』


 グループを開いてスクショを取った後、七瀬が送った雪奈に関するメッセージを全て削除。

 そして新たなメッセージを作成する。


 七瀬:ごめーん、雪姫の噂なんだけど、あれやっぱり全部ガセでした! 男のほうが根も葉もない嘘を言ってただけみたい。雪姫は実際、すっごくいい子らしいよ。


「送信っと」


 とりあえずこれで最低限の作業は終了だ。

 あとはさっきのスクショをどう利用するかを考える。


 考えながら七瀬のスマホを見ていると、ある一つのアイコンが目にとまる。


「ん? なんでこんなものが……」


 それは『テレガラム(Telegaram)』というメッセージアプリだ。

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