No.34:なんで巨乳縛りなの?


「浩介、プリントここに置いとくよ」


 慎吾が机の上に学校からのプリント置いてくれた。


「ああ、サンキュ」


「でも昼休み、雪奈めっちゃ心配してたんよ。浩介君ごはんたべてるかなー、お母さんいないのに大丈夫かなーって」


「そうそう、もー愛されてるねー」


 竜泉寺とひなが、茶化してくる。


「そんなんじゃねーだろ。雪奈はみんなに優しいんだよ」

 俺は応戦する。


「わかってないなー。僕らはプリントを届けるだけだからって言ったんだけど、桜庭さんがどうしても何か作りたいからスーパー寄っていくって」


「そうだったんだ。何か悪いことしたな……」


「まあ、ここは甘えていいんじゃないかな? 体調も良くないことだしね」


 慎吾の言うとおりかもしれない……。

 ここは雪奈の善意に甘えることにしよう。


「ねえねえコースケ、エッチな本はどこに隠してるのかなー?」


 お約束だな。

 ひながニヤニヤしながら、からかってきた。


「そんなものは存在しない」


「うっそだーー、あ、わかった。パソコンの中だな!」


 ひなは机の上のモニターを指差して、


「どーしてモニターが3枚もあるの? あ、ひょっとしてエッチな動画とか3本同時に見てるんでしょー? 巨乳女教師と巨乳ナースと巨乳JKとか? やらしーー」


「天才か。そんな無駄な使い方、思いつきもせんかったわ」


 それになんで巨乳縛りなの?


「やっぱり貧乳は、ニーズあらへんの?」


「竜泉寺は話に入ってこないで! ややこしくなるから!」


 慎吾が「僕は小さいのも好きだよー」とか言ってなぐさめてる。


 ひなは本棚の方へ移動した。


「なんか難しそうな本がたくさんあるねー。ねえ、アルゴリズムってどんなリズム?」


「サンバに似た感じのやつだ」


「オープンソースって何? お料理に使うやつ?」


「そうだ、焼きソバにかけるとうまいぞ。ひな、ちょっと静かにしててくれ。熱があがりそうだ」


「えーつまんないなー。おっぱい触ったら元気出る?」


「もうそのネタいいから」


「じゃあ母乳飲む?」


「お前マジ帰れ!」


 ひなは「えー冗談なのにー」とか言ってるが……。

 ヘラヘラモードのひなは、かなり面倒くさい。

 こっちは病人って分かってる?


 しばらく3人はワイワイと部屋で騒いでいたが、慎吾がそろそろかな?と呟いた。


「じゃあ僕たちは先に失礼するよ。あとは桜庭さんに任せるから」


「は?」


 部屋にいた3人は「お大事にー」と手を振って出ていってしまった。

 部屋の外で「ドアはオートロックだから、そのまま出ていいからねー」「えー、みんな帰っちゃうの?」っていう慎吾と雪奈の声が聞こえた。


 マジかよ。

 この家に雪姫と二人きりだと?

 オヤジは帰りが遅い。

 よくないな……。


 コンコンとノックの音。

 どうぞ、というと雪奈が遠慮がちにドアを開けた。


「えーと……できたよ?」


 雪奈がトレイの上にいろいろ載せて、ドアの前に立っている。

「入るね」と、一言って俺の方まで歩いてきた。

 そしてベッド横の小さなテーブルの上にトレイを置いた。

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