第11話 ディナーは、クイズの後で

俺は食卓に向かい、瑛子と夕食を食べ始めた。


「いただきます」


今日のメニューは、鮭のムニエルと、ご飯・味噌汁・ツナサラダのようだ。


味噌汁を少し飲んだ……次の瞬間。


視界は再び異空間に変わりゆく。今日最後のクイズに挑むことになった。


「やれやれ……」


ため息をついた後、エルラが語る。


「やあやあ!お食事中ごめんね♪今日最後の問題を出しに来たよ♪」


「……そうだろうと思ったよ。さあ早くクイズを始めてくれ」


俺は早く瑛子とご飯を食べるのを楽しみたい。そういう一心だった。少し前までの恐怖心は一体どこへ言ってしまったのだろうか?今まで怯えていたのが嘘みたいだ。


……いや!まだ安心するのは早い。今日最後の問題だけ難しいというパターンも考えられる。最後の問題だけ難しくして、明日まで突然死に怯える俺をほくそ笑もうという考えかもしれない。そうじゃなければ、さっきまでの2問が簡単すぎる理由がわからない!


「じゃあ問題を出すよ♪今日最後の問題!」


「みかんは英語でなんと言うでしょう?」


「オレンジ」


「正解!じゃあ今日はこれで終わりだね♪また明日会おうね!」


……ふざけやがって、俺の楽しみの1つである、夕食時間に不愉快なゲームをやらせてくるとか、マジで許せない。これが姿の見えるやつだったら、はっきり言ってやる所だ。

”人の楽しんでいる時間に邪魔をするな!!”っとな。

しかし相手は姿が見えず、機械音声であり人間の声ではない。一体あのエルラを操作しているのは誰なんだ……?


「そういえばさ、お兄ちゃん」


「……お兄ちゃん?」


「あっ!ああ……」


俺はまたつい考え込んでしまった。今は瑛子との会話を楽しむべきだよな。


「どうした?」


「なんか最近さ、お兄ちゃん元気ないよね。何かあったの?」


「……!」


しまった!瑛子にバレってしまったというのか!

俺はまだ、瑛子に俺の悩みを知られるわけにはいかない!知られたらどれだけ笑われ、そしてバカにしてくるか分かったもんじゃない!いくら家族とはいえ、こんなありえない話を素直に信じるだろうか?


「ん?特に何もないよ?」


俺はとっさに瑛子の質問に対し、嘘をついた。

まだ俺の悩みを知られたくはないからな。


「ふーん……私は絶対なにかあると思うんだけどなぁ」


「ハハハ……」


その後特に俺の悩みに関する話は無く、俺はお風呂を済ませ、自室に戻った。


「危なかった……」


思わずそうつぶやいた。何とかバレることはなく、1日を終えることに成功した。

とりあえず、今日出された問題は、全て正解することができた。よって突然死が迫ってくるようなこともなく、安心して今日を終えることができそうだ。


俺は電気を消し、布団に入ると、すぐに眠くなり、寝てしまった。

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