第三章 予定外のイベント 6
田中はレストランに集められている人間を観察していた。
先程水尾にはアリバイがあると言ったが、どう考えても外部犯には思えない。
何かしらの殺害方法か、あるいはアリバイ工作があるかもしれないと考えていた。
水尾は行方の分からない不動峰子を怪しんでいるようだが、感覚的にみて今回の犯人とイメージが合わないような気がした。
何気に久我山信明の姿に目がいった。
レストランの端に位置しているバーカウンターに腰掛けて、隣に座っている女性に真剣な表情で話し掛けている。時折目頭を押さえる仕草をするなど、かなり疲弊しているように見える。
その他の人間もさすがに拘束時間が長くなっているので、口数も少なく騒いでいる者もいない。
櫻子達の姿は見えなかったが、恐らく別室で警察の人間がガードにているのだろう。
そんな中で一人だけ割と大きめの声で話している男がいた。及川守だ。いつまでこうしているのだとか、文句を独り言のように話している。話し相手と思われる男性は困惑顔だ。
そんな時、胸ポケットに入れていた仕事用の携帯電話のバイブ音がした。周りに気を遣いながら通話ボタンを押した。
「おう、仕事熱心だな。休日まで殺人事件とは豪勢なことで」田中の上司である警視庁捜査一課の篠原の声だった。
「篠原さんどうしてそれを?」
「
さすがに水尾は仕事が早いと、田中は感心していた。
「篠原さん。何か分かったら僕にも教えて下さい。水尾に聞いても教えてくれないだろうから」
「お前、水尾の邪魔するなよ。只でさえ嫌われてんだから。水尾に任せておけば大丈夫なのはお前が一番分かっているだろう」
「分かってますよ。でも現場にいて何もしないっていうのも気持ち悪いっすから」
篠原は答えもせず電話を切った。
「まあ、確かに水尾に任せておけば大丈夫だとは思うけどな……」田中は一人呟いたが、何かモヤモヤとした気分だった。
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