猫の手

このすきま161

第1話 夕方のベランダ

それは、夕方のベランダに落ちていた。

モフモフとした毛並み

最初は命の灯火が消えたものなのかと思ったが

おそるおそる触ると微かに動いた。


紫と黒の縞模様の猫の手

手が落ちているだけで体や頭などはない。

撫でると指先をぐっと閉じたり開いたりして動く

生きてる

どうやってかは分からないが生きてる


私は部屋に持ち帰り切断面を確認してみた

毛が覆っていた。

モフモフの小さな命どうにかお世話したい

口がないしどうしたら給餌出来るものか

この手は形から見てきっと猫だろう

タオルを敷き詰めた木箱を用意して手を寝かせる

寝かせるといっても手だけなのだが

心地いいのかぐっと閉じて開いて繰り返して動く

よしよしと撫でて毛並みを堪能する

体や頭があればもっとお世話できるんだけどなぁ

そんなことを思う


夕ご飯を食べて木箱の中を見る

動きが止まっているが撫でると体温がある

良かった生きてる

そろそろ寝る支度をしようか

猫の手は心配だがお世話しようがない

今日はひとまず風呂に入り寝ることにした

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る