14

 いつか素敵な王子様に会える、なんて幼い頃の夢はとうに諦めたけど。でもやっぱりいつみても、テレビの中のプリンセスは幸せそうで。


 実際、出会いなんてないし。このご時世、外ふらつくのも気が引ける。スマホを開けば、婚活だの結婚だの。同期の結婚報告の投稿は、まさに花のようだった。きっと私はこうなれない。別に1人でも生きていける。


 大あくびして、いつものコンビニに入ると、真っ先に食品コーナーへ向かった。安定の残業に彼氏いない歴=年齢の私は、きっとこの売れ残った弁当達と同じ立場なんでしょうね。


 適当に弁当を取り、お酒を取り。今夜も1人で晩酌とか慣れたもんだって。ため息をつきながらレジへ向かう。あれ、いつものあの子いないんだ。背が高くて、前髪が少し目にかかってる声の小さいあの子。


 お会計を済ませ、外に出る。


「あの、」


 聞き覚えのある声に思わず振り返る。背の高さ、前髪、いつもより少し大きな声。


「もし、良かったら、その、俺と飲みませんか。」


 片手に持ったビニール袋には2缶のお酒が入っている。王子様は、缶ビールなんて飲まないはずなんだけどな。頬を赤らめている彼が、可愛くてそんな理想は吹っ飛んだ。


 プリンセスにはなれないけどさ。売れ残りでも、運命くらい信じてみてもいいかな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る