第52話 次のランクアップへ。
その日は、俺は工房に来ていた。
そこには、ドワーフトリオの他に、フェルナンドさんとカレンさんまで、入り浸っていた。
「フェルナンドさん達、よくここにいますね?」
「ああ、俺もカレンも、細工や加工は好きなほうだからな」
「そうなんですね」
「heiアラタ、見てくれ!」
フェルナンドさんが手にしたのは、一つの弾丸だった。
「何か‥変わってます?」
「うむ。それは、フェルナンドが儂に材料を教えた、カヤクと言ったかの?それを、錬金術で加工して弾丸に埋め込んだ物じゃよ」
「錬金術?」
「ハッハッハ、アラタ言ってただろ?この世界には魔法があるから、不可能が可能になると。」
フェルナンドさんが、火薬を作成し、それを錬金術で弾丸に埋め込み、当たると時間差で爆発する仕組みの弾丸になっているそうだ。
それとは別に、イグ達はドワーフのスキルを使って、硬質化していた。
「ねえ、イグ達ってそのドワーフのスキルって言うのは何なの?」
「ふむ、儂らドワーフはな、土王の力と言うスキルが生まれ持っておるのよ、それで、金属などを高品質へ変化させたり、普通の工具では加工出来ないような鉱石や金属を加工できるようにする事も出来るのじゃよ」
「へぇ‥それで、その錬金術も?」
「それは、術と言われてはおるが、魔法じゃよ、ある程度知識があって魔法で加工する事が出来ればそれが錬金術と言う事じゃよ」
「え?それじゃあさ」
俺は、マジックボックスからダイヤモンドを取り出した。
イグにそれを渡して、粉末状にしてもうように言った。
イグは、土王のスキルで瞬時にダイヤを粉末状にして見せた。
「oh!すげーな」
「ですね‥」
「で、これを、アラタ殿はどうしたいんじゃ?」
俺はダイヤの粉と、自分が持っていた鉄の剣を魔法で錬金する、と言っても、魔法で鉄の剣に塗していくようイメージした、それは成功し、いつものように魔導筆でバイブレーションを付与する。
「ハッハ~ン、分かったぞアラタ、それはダイヤモンドコーティングを施した剣に錬金で作り変えたって事だな?」
「それだけじゃないですよ、ハイエルフの秘術で超微振動も付与してますので」
「ワオ‥なるほど‥」
「なるほどのぅ‥ついでに、儂がそれを高品質に改良を施せば、ダンジョン産の武器にも負けないような鉄の剣の出来上がりってことじゃな?」
「うん」
「しかし‥それでは、折角のダイヤのコーティングも不完全じゃ、今度アラタ殿に鉱物とは何かを教えてやろうぞ」
後に、イグに鉱物と錬金術についていろいろと教えて貰うことになるのだが、流石の魔法でもドワーフの土王の力と言う、スキルには敵わない事を知った。
錬金術とは、物の性質、成分などを見極めることで、いろんな物に作り変えることの出来る魔法だった、そう考えると地球人は有利だ、なんたって科学でいろんな物質は解明されている。
それがわかれば、俺達だって、普通に魔法で物質の加工がある程度出来るようになるのだから。今度、鉱石や物質の本を買って勉強しようと思った。
「アラタ、この弾とその剣の威力試しに行こうぜ!ハッハッハ」
「試しにですか?」
「ああ、それもちょっと強い魔物で試してみたいから、どうせならBランク昇級試験受けないか?」
なるほど、それもありだ‥あんまりランク上げに興味がなかったから、放置していたけど、クランの株を上げるのにも、冒険者ランクは関わってくるし、俺は承諾した。
「そうこなくっちゃな!」
◇
冒険者ギルドへメインチームで向かった。
メインチーム。つまり、俺、瑞希、フェルナンド、カレン、クラウス、マイティ、レベッカ、それからクインだ。
流石は王都の冒険者ギルド、建物が大きかった。
ここには、フェリオール冒険者ギルド会長のベンザさんもいるはずだ。
扉を開けると、各、ランクごとの依頼ボードなどが並んでおり、沢山の冒険者がそこにはいた。
テーブルに依頼を並べて、受けるか受けないか悩んでいるパーティや、報酬を貰って喜んでいるパーティなど様々だった。
「流石は王都、ホルンのギルドの比じゃないね」
「だな」
俺がそう言うと、フェルナンドも頷いた。
俺は、いくつかある受付の中で空いていた場所へ行って、ベンザさんに会いたいと言った。
すぐに受付嬢は、ベンザに連絡を取ってくれて、ベンザは顔を出した。
「お?お前達か。どうした?」
「ベンザさん、Bランクの昇級試験を受けたいんですけど」
「お、そうかそうか、じゃあ、これなんてどうだ」
ベンザが新に渡した、その紙に書いてあったのは。
「キマイラ‥ですか?」
「そうじゃ、最近、魔素溜まりが濃い所が多くなっておってな、その場所の森の奥にキマイラが目撃されたんじゃよ」
キマイラ。
体は雄獅子、首から山羊とワイバーンの頭が生えている、頭が3つある混合変異種の魔獣。大きな体で素早く、翼はあるものの、そう長くは飛べないことも確認されている。ワイバーンの頭からは火を吐き、山羊の頭からは氷魔法を繰り出し、獅子の牙と爪は鋼鉄の盾をも切り裂くと言う。
「と、説明はこんなもんかのぅ、どうじゃ?」
「強そうだな、やってやるぜ!なあ、アラタ」
「ああ‥うん」
フェルナンドはやる気満々で、俺の肩を叩いた。
「決まりじゃな、あ、もし持って帰って来れるのなら、キマイラの素材も持って来てくれ」
新達はベンザに頷いて、冒険者ギルドを出た。
◇
新達はその場所へ着いた。
「この森の奥か‥」
「ふむ、大きな気配があるな、ふー」
クインはそう言って鼻を吹いた。
俺、瑞希、カレンはミニガンを装備し、クラウス、マイティ、レベッカはアサルトライフルとショットガンだ。
フェルナンドは、スナイパーライフルを構えて、ジリジリとクインが察知しているその場所へ静かに近づいていく。
森の切れ目に差し掛かると、その姿は見えた。
森が終わっているその先の岩肌のある所で、何か大きな魔物を捕食していた。
「で‥でかいね」
瑞希はそう呟いた。
RPGゲームでよく出てくる魔物だが、こうやって実物を見るとなんて禍々しくて大きいのだろうと新は思った。
もうすでにミニガンなどの射程には入っている。
俺達は、フェルナンドの合図を待っていた。
その時、動きが止まり、山羊の頭がこっちを向いて目があった。
山羊が咆哮しようとした時。
ズドン!!
ブシャ!
少し後方にいたフェルナンドのスナイパーライフルの特殊弾が山羊の頭の付け根に命中した。
「よし!撃て!!GOGOGOGO!」
その合図と同時に、山羊の首が内部で爆発し、キマイラは一度怯んだ。
キュルルルルウウウウウ‥‥‥ズダダダーーーーーーダダーーー!!
ズダーーーーーダダーーーー!!
ズダダーーーダダーーーー!!
タタタタタタン!
タタタタン!
3丁のミニガンが火を噴いている。
それを、フェルナンド、クインは見ている。
クラウス、マイティも別の場所から、アサルトライフルで撃っている。
「ストップ!!」
フェルナンドが大きな声で叫ぶ。
俺達はその合図で撃ち方をやめた。
そこには、ハチの巣にされたキマイラが横たわり、岩肌には凄い量の弾痕が残っていた。
「こ‥これは‥」
「やりすぎたんじゃない‥」
俺と瑞希は、キマイラの死体を見てそう呟いた。
「完全にオーバーキルね。」
カレンが死体を確認してそう言った。
「ま‥まあ、あれだ、勝てば良しだ、ハッハッハ」
「ふむ。断末魔すら聞けなかったな、ふっふー」
フェルナンドは引きつって笑い、クインは鼻を吹いた。
◇
そして依頼を報告すべく、冒険者ギルドの倉庫へ向かった。
すると、丁度、ベンザさんもそこで、職員に何か指導をしていた。
「最近の若い奴は仕事が遅いのぅ‥ん?お前らもう戻って来たのか?」
「はい」
「まだ、依頼受けてから5時間も経っておらんぞ、まあ、お前達ならわからんでもないがな、じゃあ、ここに死体を出してくれ」
俺は、マジックボックスからキマイラの死体をぬっと出した。
「!?」
それを見た、ベンザは固まった。
「hei!ベンザこれで、俺達はBランクなんだろ?」
「おい‥お前ら‥素材が欲しいからって言わんかったか‥」
「へ?」
「なんじゃあ!この肉塊は!キマイラか、どうかも分からんではないか!!」
「「「ええええ‥」」」
俺達は、ベンザさんに怒られてしまった。
やはり、完全にオーバーキルだった。
穴だらけで、皮も使えない、肉も焼け爛れ、牙や爪、骨や角まで破損していて採れる部位はなかった。
強いて言うなら、それがキマイラだという証拠は、最初にフェルナンドが撃って内部で爆発した時の山羊の千切れた頭のみだった。
「これでは、混合変異魔獣の研究にすら使えん‥が、依頼は討伐じゃからな‥はぁ‥依頼達成のこの報告書をもってギルドへ行け!全く」
俺達は、渋々とその報告書を持ってその場を去った。
冒険者ギルドへ行くって、受付嬢へ報告書を出した。
「依頼達成ですね、おめでとうございます、少々お待ちください」
暫くすると、俺達の冒険者カードは、Bランクの物に変更されて戻って来た。
「楽しいな、この世界。アラタ、俺達もこの世界に居ついていもいいか?」
「え?でも、地球でお金稼ぎしたいんじゃないんですか?」
「いや。もう、どうでもよくなってきてな‥向こうはいろんな物に縛られる世界だからな、俺達には住みにくい世界さ」
「そうね。ここなら思いっきり自分の能力で金稼ぎも何でも出来るし、刺激があって楽しいわよね、うふふ」
そう、フェルナンドさんと、カレンさんは俺に言った。
「大丈夫!向こうの金の事なら、俺の信頼している日本人で福田と言う男がいる。そいつには俺に何かあった時は、カレンから連絡が行くように言ってある、俺は表立って歩けないが、カレンとなら大丈夫のはずだ」
「あっちの取引はミーに任せて」
二人は、そう言ってニコっと笑った。
とりあえず、向こうでの取引は大丈夫そうだ、でも、本当にこの二人、この世界に居つくつもりなのだろうか‥
「本当にこの世界に?」
「ああ、カレンと二人で決めた事だ」
「これからは、ダーとミーで、アラタのクランの手助けをするわ」
フェルナンドは、俺に手を差し伸べて、手を差し出すと力強く握手した。
「わかりました。これからも宜しくお願いします」
「あ~あ。私もこの世界に居ついちゃおうかな」
そう言ったのは、瑞希だった。
「え‥でも、お前お母さんもいるし‥」
「分かってるわよ!いまの所はまだ、アラタが戻る時に一緒に、たまに帰るだけで良いの。まあ、それも考えてみようかなって思っただけよ」
とりあえず、俺達の冒険者ランクはBに上がった。
クラウス、マイティ、レベッカもその事に喜んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます