第7話 被害者。
新は、親父ツヨシの元クランメンバーで、今はフェリオール王国の冒険者ギルドの会長をしているベンザ・グリオルに冒険者Dランクにしてもらった。
そして、鑑定スキルという巻物も貰ったのですぐに使用した。
ゴブリン討伐か‥ゲームでは大体、序盤にレベルあげに使うような敵だよね。
先ず、これからやって行くか。
「クイン、このゴブリン討伐受けようか?」
「ふむ、ゴブリンなんぞ敵にもならんがな」
「まあ、そう言うなって、大体ゲームでは最初に討伐する敵なんだからさ、順序よくいこうよ」
「ふむ、げーむ?なんじゃそれは‥甘い食いもんか?ふっふ」
「‥‥‥」
まあ、いいや‥これを受けよう、その依頼を剥がして受付へ持って行く。
「すみません、猫耳お姉さん、これ受けます」
「は~い、あ、先程のベンザ会長のお知り合いの方ですにゃ、あ、これ‥昨日、5人のパーティが受けて行かなかったっけ‥剥がし忘れていたのかにゃ?もし、討伐されていたらごめんにゃさい、でもまだ帰って来てにゃいみたいだから、死んだのかもしれにゃいしね」
なんか、さらっと物騒な事言ったよこの人‥
「じゃあ‥それで」
「承ったにゃ!あ、それと‥討伐の証に右耳を持って来て欲しいにゃ」
「右耳ね‥左耳じゃだめなの?」
「どちらでもいいにゃけど、両方持ってこられると何匹いたのかわからなくなるにゃ、だから片方の耳でお願いしたいのにゃ」
とりあえず、ゴブリン討伐を受けたので、その場所へ行くことにした。
◇
「この辺りかな?」
「ふむ、もっと森の向こうの方じゃな、ふっふ」
クインは索敵能力を持っているみたいで、楽にその場所まで行けそうだ。
「む‥アラタ、3つ何か来るぞ!ふー」
ガサガサと奥の森が動く。
すると、女の子が飛び出して来た。
と思ったら、すぐに後を追って、ゴブリンが2匹追って来ていた。
「きゃ‥た、助けて!」
クインがすぐに飛び上がり、無属性の魔法で2匹のゴブリンの首を撥ね飛ばした。
「君、大丈夫?」
新は、すぐにその女の子に駆け寄った。
「あ‥お願いです!私の友達とパーティがゴブリンに!」
「ふむ、アラタ急ぐぞ。血の匂いがする、ふっふー」
すぐに血の匂いがする方向へ向かう俺達。
その女の子も俺達について来た。
「ふむ、あそこじゃな‥」
森の影からその場所を覗くと、10匹ほどのゴブリンがいた。
「マイティ‥早く‥助けて‥」
3人の冒険者をボコボコにしているゴブリン達と、そのマイティという友達だろうか?
2匹のゴブリンに抑えられた女の子の冒険者が装備を剥がされ、1匹のゴブリンが腰を振っていた。
すぐに、俺達は斬りかかった、クインはそこにいたかと思ったらすでに、瞬間移動し女の子を襲っていた3匹のゴブリンを真っ二つにしていた。
クインに気をとられていた、2匹のゴブリンを俺は鉄の剣で首を思いっきり斬り飛ばして行った。
クインは、すぐに他のゴブリンもあっさり殺していた。
俺は、初めて生物に刃物で斬りつけたが、力があるせいか揚げ豆腐を切るような感覚だった。
「マイティ!しっかりして!マイティ」
その犯されていた女の子は、クインが殺した、ゴブリンの返り血を浴びたまま放心状態だった。
他の男の冒険者はすでに息絶えていて、顔すら誰かもわからないほど潰されていた。
とりあえず、俺は、その辺の布をその子に被せて使い魔のナイトメア、ゲンムを召喚した。
逃げて来た子とその放心状態の子をゲンムに乗せて、ゴブリンの右耳を削ぎ落しその辺におちていた麻袋に入れて持って行くことにした。
帰る道中。
「あの‥助けてくれて有難うございました‥」
「うん、いや‥その子、大丈夫かな?」
「大丈夫だと思います‥あの‥私はレベッカと言います」
「ああ、俺は
レベッカは、ここまでの経緯を帰る道中に説明してくれた。
このゴブリンに犯されてた女の子は、名前はマイティ、知り合って2年で冒険者を始めた頃からの付き合いだったみたいだ。
クランを組まずに、即席でパーティを組むことはよくあることで、今回も冒険者ギルドで5人パーティを即席で組んでこのゴブリン討伐に向かったが、結果的に不意を突かれてこうなったらしい。
さっきの男3人はDランク冒険者だったみたいだが、この女の子二人はEランクでマイティは剣士、この子レベッカは、神聖魔法を使う回復系魔法使いだったようだ。
そして、クインがゴブリンについて教えてくれた。
小鬼の魔物ゴブリンは、1匹だと弱い魔物だが、複数いると結構危険になるらしい。頭は悪くない、狡猾で、すぐに学習する。
先に気付かれるとそこそこ強い冒険者でも、ああなることもあるらしい。
男は確実に殺され、女は死ぬまでゴブリンの子を産まされるのだと言う。
ゴブリンは、メスの産出が極端に少なく、人間などの亜人達を襲って仲間を増やすのが基本らしい。
だから女は殺さない、そして、妊娠し生まれるまでの期間は2か月もあれば生まれるらしい、しかも生まれるのは殆ど、ゴブリンだ。
上級冒険者は、報酬が高い魔物の討伐に行くので、ゴブリンは結構ほったらかしになっていたりして、低級冒険者が被害にあっていることも多いらしいのだ。
そう話をしている間に、ホルンの町についたのだった。
「ホルンに着いたけど、レベッカ達はどうするの?」
「私達は‥その辺の民家でラーマ小屋でも交渉して寝泊まりします‥」
「え?宿とらないの?」
「いえ‥えっと‥あまりお金持ってなくて‥」
それはよくない‥あんな状態で野宿するの?
俺はまだ、親父が残してくれたこの世界の金貨は18枚はあるから大丈夫だ。
「じゃあ、俺の泊っている宿においでよ」
「いえ、そういうわけには‥」
「お金の心配ならしなくていいよ?、俺持ってるから」
「‥‥‥」
俺は、そのまま宿まで二人を連れて行き、ゲンムからマイティを降ろした。
ゲンムを異次元に戻し、レベッカとマイティを支えて宿に入る。
「あら?アラタさん?その子達は‥」
ミーナさんは、すぐに事態を理解して、2階の部屋を用意してくれた。
部屋に二人を案内したミーナさんは、1階で待っていた俺に話しかけてきた。
「何かあったのね」
「ああ‥はい」
「結構、宿の仕事してるとね、いろんな人が来るのよ‥大事な人を失った人とか、魔物の被害者とかね」
ミーナさんは、俯いてそう言った。
「ミーナさん、あの子達の宿代は俺が払いますので、暫く置いてやってください」
「わかったわ」
俺は、冒険者ギルドに報告をしに行くことにした。
冒険者ギルドの受付にゴブリンの耳を差し出す。
「あら、早かったにゃ?先に行ってた冒険者は‥死んでましたかにゃ?」
「ああ‥男達は死んでましたが、女性達は一応救出しました」
「そうですかにゃ‥でも、あまり人に加担すると救出に気をとられてそのまま‥って方達もいらっしゃいますので、自分の事を第一に行動した方が良いにゃ‥」
「わかりました」
後ろからゴソゴソとしてこちらを振り返った猫耳姉さん。
「これが、今回の報酬ですにゃ。右耳が12枚で、ゴブリン一体につき銀貨1枚なので達成ボーナスと合わせて、銀貨17枚になるにゃ」
その報酬を受け取った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます