お姉ちゃんを好きになるのは当然だと思うよ!

水原里予

第1話 250回目の……①

「つ、付き合ってください!」


 段々と暖かい風が吹き、桜が咲き始め、景色が明るくなると同時に別れを象徴する不思議な三月上頃。卒業式は終わり、入試も終わったある日のこと。

 私は顔を赤くほてらせ、目は瞑り、声を震わせ、言葉を詰まりながらも告白ができた。


「んー、それは出来ないかなー。ごめんなさい」


「なら、裸を見せて! あわよくば一発ヤらせて!」


「もっと無理だよー!」


 土曜日のお昼ご飯後の1時くらい、リビングのソファーの上で私はお姉ちゃんを膝枕しながら告白をした。


 中学三年生の私は一つ年上で高校一年生の姉のはるが大好きだ。

 大好きというのは典型的なライクではなく、ラブの方である。

 一人の女性として、一人の人間として、姉に恋をしている。

 この恋は異端だろう。してはいけない恋であろう。それでも、私は姉が好きだ。大好きで大好きでたまらない。

 今も心臓はバクバク鼓動を鳴らしているし、姉のことをまともに見れない。

 誰になんと言われようと、私はこの恋を実らせるために日々奮闘中なのである。

 

 奮闘した結果、他の人なら学校の体育館裏や景色のいい場所など雰囲気がある場所を選んで告白するだろうが、私は家のリビングというムードもクソもないタイミングで告白をし、あわよくばヤろうとことになった。

 親に何か言われないかって? 問題ナッシング! 親は家を離れることが多い仕事だから年一度会えるか会えないかなの。

 私も考えなしに提案したわけではない、理由はある。

 何度も言うが、相手は実の姉である。同性であり、肉親である。

 現実的に見て、カップルになり、結婚する可能性は0に近いのだ。射止めるハートの的が小さいのなら……矢の数を増やせばいい!

 アプローチをしまくって、告白をしまくって、己の本能に忠実になれば良いのだと! それでお姉ちゃんのハートを射抜ければヤらるし、結婚できるし私の勝ちである!

 勝ったぜ!

 今回も失敗したが、次はその天使なキュアキュアハートを射抜いてみせる……!


「ぶぅー、お姉ちゃんのケチ。付き合ってくれていいじゃん。一発ヤらせてくれてもいいじゃん。減るもんじゃないし」


「2つとも減る減らないの問題じゃないよー?」


 くっ……さらに押してもダメか。

 ならば……っ!


「……お姉ちゃん。お姉ちゃんは今どんな状態かご存知かな?」


「ん? 秋ちゃんに膝枕してもらってるねー」


 そう、身長153cmの私が、身長145cmのお姉ちゃんを膝枕してる状態です。

 その状態でまず、少し上半身を倒しお腹周りを腕で固定します。

 そうすると────。


「そう! こうすることによって動けない状態になるのです! なので、今から私はお姉ちゃん襲います! それはもう、あーんなことや、こーんなことを! ふひひひひひぃぃ……では、手を合わせてください。いただき────「やー!!!」ぐはぁぁぁ!」


「痛たぁーい!」


 お姉ちゃんの気持ち良さそうな唇に甘いキッスをしようとしたら、お姉ちゃんが勢いよく上半身を起こし、私の顎とお姉ちゃんのおでこが直撃し、ゴンっと音がした。

 ……なんで、起き上がるついでに反撃してきたお姉ちゃんまで痛がってるの……おでこも当たるとけっこう痛いけどさ。


「……秋ちゃん」


「……はい」


「痛いー……」


 お姉ちゃんは起き上がった上半身をこちらに向け、赤くなったおでこをおさなえながら涙目で訴えてきた。

 ……うん、可愛い。可愛すぎる。私の顎の痛みはお姉ちゃんの可愛さで吹き飛びました。


「じゃ、じゃなくて。お姉ちゃん大丈夫?」


「うんー……。秋ちゃんはー?」


「わ、私は大丈夫だよ」


「そっかー、ならよかったー」


 さては、このお姉ちゃん天使だな? 天使だね! 天使だよ。

 わざわざ私の方を向き、顎を撫でながら心配してくれた。

 もう、付き合ってほしい。願わくばヤらせてほしい。

 でも────。


「お姉ちゃん」


「んー、なにー?」


「今日、初めてお姉ちゃんを襲った時に物理的な反撃をくらったけど、急にどうしたの? 心境の変化でもあった? ま、まさか……私のことをぶん殴りたいほど嫌いに……?」


「ち、違うよー。この前、友達に秋ちゃんのことを話して、対処法として『ぶん殴るのが王道!』って言われたけど、秋ちゃんをぶん殴るなんてお姉ちゃんできないし、おでこなら痛くないかなーって」


 なーんだ。やっぱりそうだよねー。天使のお姉ちゃんが私を嫌いになるなんてありえないよ!

 しかし、そのお姉ちゃんの友達はもしも会う時があったら抹殺する。


「そ、それに……」


「それに?」


「お姉ちゃん、秋ちゃんを嫌いになることなんてないよ。一人だと生きていけないし」


 お姉ちゃんは顔を赤らめて、少し照れ臭そうに目線を外して私に言ってきた。

 ……え? これはもう告白ではないか? 違う? 違いますか?

 告白なら、私の回答は一つ────。


「大好きです。結婚してください」


「それは無理だよー! ごめんなさいー」


 246回目の渾身の告白が断られてしまった。


「ぶぅー! お姉ちゃんの分からず屋! 早くお姉ちゃんと付き合って、デートとかしたいのに……」


「んー、それならいいよー?」


「え?」


 私がボソッと頬を膨らませながら言うと、お姉ちゃんが『いい』と答えてくれた。

 あまりの出来事に自分でも聞き間違えではないかと変な反応をしてしまったよ……。


「い、いいの?」


「うんー」


「でも、デートって付き合ったカップルや夫婦しか許されないことなんじゃ……」


「そうかなー、デートくらいは別に問題ないかなー? 姉妹が普通に遊びに行くようなものでしょ? そのくらいなら全然いいよー」


 私はデートはお付き合いをしてからするものだと思っていた。でも、確かにお姉ちゃんの言う通りだ。姉妹で遊びに行くと言うところは肯定しないが、問題はない。と、いうより問題がない。

 こんなことなら、ずっと前からデートの誘いをすればよかった……ぐずん。

 ……でも、嬉しい。こんなにも幸せでいいのかなってくらい嬉しい。そして、初のデートって思うと緊張する。


「……お姉ちゃん!」


 きっと私はものすごく顔を赤らめて、笑っているだろう。

 嬉しさか、緊張か、私は胸が苦しいくらいにキュンキュンとして、ときめいています。


「お姉ちゃん、大好きぃぃぃ!」


「知ってるよー」


 私はお姉ちゃんに抱きつき、247回目の告白をした。

 ……お姉ちゃんの身体、柔らかいなぁ。そのままぷにぷにの身体をぺろぺろしたい。そして、ヤりたいよぉ。

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