浪漫なロマン

貴代 雲丹

第1話  日常

 最近、よく夢をみる。起きたら忘れてしまうほどの、なんてことない夢を。


「おーい、もう8時過ぎちゃうよー!そろそろ起きないと学校遅刻しちゃうよー!」


朝から甲高い声が耳に響く。


「うわ!もうこんな時間か、急いで準備しないと。」


布団はめくりあげられ、整えられるヒマのないほどの急ぎようである。渚がリビングに降りると、


「おはよう、お兄ちゃん。急がないと遅れちゃうよ?」


「おはよう、修。ごめん、昨日夜更かししちゃったんだ。」


笑いながらそう答えた。


 僕と妹は、年は2つ離れていて、いまは同じ高校に通っている。妹は修という男っぽい名前なのに反して、見た目はそこら辺の高校生よりも可愛らしく、おとなしめの性格だ。対して僕は、女っぽい名前で、友達もほとんどいない。


「じゃあもう学校いくね。いってきまーす。」


「行ってらっしゃーい。」


僕は妹を見送って準備をしていたが、今日はどうも学校へ行く気にならなかった。


「今日は、学校休もうかな。」


なんだか誰に対してでもなく申し訳ない気持ちなった。


「学校に電話して休むって言わなきゃ。」


学校へ電話をかける。


「もしもし、3年の月見里やまなし渚ですけど、今日はちょっと体調が悪いので休みます。」


「分かった、休んできっちり治してね。あ、明日は時間割が変則的になるからよろしく。じゃあ、また明日。」


僕はこの会話に違和感を覚えた。と、同時に違和感の正体に気づいた。

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浪漫なロマン 貴代 雲丹 @takayou

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