無双ハーフエルフの転生修行物語

s e v e n

序章 転生への道

プロローグ1 君に決めた!

 卒業論文提出まで、あと2週間とちょっとというところまできた。


 とある学校の建築学生たちは卒業研究や卒業設計に追われていた。ある者は論文が書き終わらないと焦り、ある者は計測結果が理論値と異なる!と憤慨し、ある者は模型を作る時間が無いと嘆く。


 クラス全体が浮き足立ち、殺気立つ中、亀梨 祐太かめなし ゆうたはのほほんとして友人たちを見守っていた。


 前々からやっといてよかったな~と余裕感溢れる笑みでみんなの作業風景を眺めているのだ。


「亀ちゃん!本論見せてぇ!」


「ねえねえ亀ちゃん、これどーやんの?」


「あれれ?亀ちゃん、暇なら手伝えるよね?」


「亀梨君、模型材料とってほしいな…」


「ごめん亀ちゃん、ちょっと助けて…!」


 そんないっぺんに言われても困るよ、と苦笑しながらもみんなの要望に応えていく。


 祐太は自分の研究を毎日夜遅くまで学校に残り、コツコツ進めていたのだ。


「亀ちゃん、もう終わってて良いよね…」


「まぁ、みんなより本気出すの早かったからかな…」


 あはは、と微笑しながら、手伝いを頑張った。










 祐太は、努力人間である。


 幼少の頃から体が弱く、何をやってもダメダメですぐ諦める祐太を見た両親は、毎日のように同じことを言い聞かせて育てていった。


「―――祐太、お前は生きて行くには努力するしかないんだぞ。」


 祐太はその言葉に洗脳されたように何事にも努力を重ねていった。


 努力によりようやく一般人と同等になった能力は、更なる努力で追い抜けるであろうと祐太は思っていた。


 しかし、そのようなことはなかった。努力をするだけでは元々ポテンシャルで負けている祐太は、ハイスペックな人に追いつけるのがやっとであったのだ。


 祐太は絶望した。みんながちょっとやればできることを僕は何倍も努力しないとできないのかと。死ぬほど頑張らないといけないことを他人は涼しい顔をしてこなすのかと。


 しかし、ショックを受けたと同時に、祐太は決意した。


 こんな理不尽になんか負けない!と。なんとか食いついて、努力し続けてやる!と。


 だからこそ、卒研も努力して終わらせていたのである。







 みんなの卒業研究の手伝いを終えると、もう21時前になっていた。


「やば!こうた!もう帰ろ!」


 祐太は焦りながら片付けを始める。次の電車を逃すとその次は50分後という絶望的な時間になってしまうからである。


「かめ、遅すぎ。もう準備終わってるわ。」


「マジか!ごめん急ぐ!」


 入学してからずっと仲の良い友人の大澤 倖太おおさわ こうたと一緒に駅まで自転車を漕ぐ。


 5年間で見慣れた街は、もうそろそろお別れ。こうして友人であるこうたと無駄話をしながら帰ることもなくなるのだと考えると、寂しくなる。


 でもまだ3週間くらいあるし!と思うと少し心が紛れるように感じた。


「じゃ、また明日ね!」


「おう、じゃあな!」


 相変わらず男前な返しだなぁと思いつつ、手を振って別れた。


 電車はあと7分、まだ間に合うや、と早歩きをやめ、ゆっくり歩き駅のホームを目指し、電車に乗り込んだ。


 目的の駅まで30分。最近毎日この時間の電車に乗り、電車でやることはルーティン化している。


 15分ネット小説を読み、15分寝る。これを毎日繰り返している。




 ―――しかし、この日は違った。電車に揺られ、寝ていたときにゴオオオ…と地響きのような音が聞こえ、パッと起きた。


 なんだ?線路の不具合かな?と思いつつも、まぁいっか、ともう一度目を瞑り、寝ることにした。


 …そのときは突然やってきた。


 山の中を走っていた電車の上に、巨大な岩が落ちてきたのであった。


 ビクッと起き上がった瞬間、祐太は押し潰されていた。


「なにが起こった…これは…死ぬな…あはは…」


 短い人生だったな…

 もっと生きたかった。


 夜遅くに帰らなかったらな…


 才能に恵まれたかったな…


 高身長イケメンになりたかったな…

 男らしくなくてモテない人生だったよ…いや、だったぜ…ふっ!―――笑えないや。


 あぁ…痛みが感じなくなってきた…

 もう死ぬんかね…


 建築士になって新しいもの創り上げるの楽しみだったのに…


 あぁ…願わくば――――――――――

 来世は努力が報われる人生でありますように…


 窮屈な世界じゃありませんように…

















「よし!君に決めた!」




 え?なんかきこえ――――――――――


 祐太の意識は途切れた。

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